第二章③ 紫ゴブリン
私にファンタジーは無理!
と思ってたけど、なんか最近楽しくなってきました。
読者様もお楽しみいただけたら幸いです。
第二章③ 紫ゴブリン
ゴブリンの集合がいるという、鬱蒼とした森に到着したアラミス。
確かに……多い。
すでに、十体は斬った。まだ森に入って間もないと言うのに。
「キシャー!」
(やれやれまたか……)
即斬するアラミス。そこには何の躊躇いもなかった。
そんな自分が……怖かった。
(これ、本当に俺なのか。つい一ヶ月前はコンビニで「いらっしゃいませー!」とか言ってたんだぞ?)
だが、思いとは裏腹に体は勝手に動く。
「ケシャ!」
血飛沫を浴びる。刀身はすでに血塗られていた。
(ゴブリンに自我は……多分ないな。なんか本能で襲いかかってくる感じだ。)
(夏場に突然部屋に迷い込んだ血を吸う蚊トンボみたいなもんか。)
森の奥へ行けば行くほど、血の道は長くなる。
(社会構造……これもなさそうだ。集団で襲ってくるというより、単発で見つけ次第殺しに来てる感じだ。)
少しだけ安心する。しかし、すでに自分が世界の異物となっているという自覚だけがみょうに付き纏った。
森の奥に少しひらけた場所があった。
そして……。
ソレはそこにいた。
額に紫の魔石。間違いなく、ギルドのフロントが言っていたやつだろう。
そして興味深いのは、その周りには数匹のゴブリンが束になっていた。
(今までとなんか違う。いきなり襲ってこない?なぜ?)
紫ゴブリンと目が合った……ような気がした。
そして、なぜか戦いたくなかった。
紫ゴブリンの視線が血塗れの剣へ向かう。
一瞬だけ、何もない空間がアラミスと紫ゴブリンの間に置かれた。
だが、その空間は即座に粉砕された。
紫ゴブリンのそばにいた、普通のゴブリンが突然襲いかかってくる。
そして当たり前のように切り捨てるアラミス。
(何か、何かが引っ掛かる。だが……やるしかないか。)
(まずは周りにいる弱ゴブリンを始末。その後、紫ゴブリンを叩く。)
取り巻きのゴブリンを始末しようと構えた瞬間……紫ゴブリンが前へ出てきた。
「……前へでた?」
「こいつら指揮系統が統一されている……のか?」
だが、その言葉は虚しく響くだけだった。
紫ゴブリンの後ろにいたゴブリンが前へ出てきて、襲いかかってきた。
斬る。それだけだった。
突然、紫ゴブリンが突撃してきた。
(今までのやつより、明らかに速い。)
(だが、この程度なら!)
紫ゴブリンは斧を振り上げたと思ったら、即座に引っ込めた。
「なっ!フェイント!?」
「学習した個体?いや、これが魔石の力なのか?」
無論、返事はなかった。
「くそっ、やるしかないのか!」
紫ゴブリンの斧は重かった。この世界で始めて感じる感覚かもしれない。
(少なくとも、あの気の毒な盗賊連中より強いな。)
だが、ウェンディに「ちょっとだけ」強くされた基本スペックは伊達じゃなかった。
軽く受け流す。そして、刺突。
血塗れで倒れそうになったが、なぜか他のゴブリンの前に立ちはだかっているような、そんな気がした。
(……俺は、アラミスだ。アラミスなんだよ。)
トドメを刺した。そして周囲のゴブリンも一掃した。
クエストは達成。そして紫ゴブリンの討伐付き。
しかし、アラミスの心は……虚しかった。
続く




