第七章②女神・ウェンディ、そして……
第七章②女神・ウェンディ、そして……
アラミスが客間で何かを考えていたとある日。
レティウスとリゼットが当然のごとく来訪してきた。
「アラミスさん、あなたに、戦略会議に参加してもらいたいのですが……お願いできませんか。」
咄嗟に茶々を入れるリゼット。
「仮面のお兄さん、あなたに、戦略会議に参加してもらいたのだけれども、リゼットちゃんのお願いきいてくれる?」
そして軽くウィンクした。
「戦略会議?俺が?何のために?」
「いえ、一応、魔王軍幹部にも顔を覚えてもらいたいと思いまして。」
「仮面をつけてて、それを顔と呼べるのか?」
「まぁ、そこはある種の識別記号みたいなものなので。」
「ねぇ?何でリゼちゃん無視するの?」
「まぁ、仮面の人間がウロウロしていても、魔王サイドも困惑するか。あのグレンヴァルとかいうのは、そうでもなさそうだったが。」
「あれは特別ですね。」
「雰囲気だけで周りを威圧できますから。」
「あれ?リゼちゃん放置?」
「わかった、ただ、基本的には静観させてもらうが、いいか?」
「はい、それで構いません。私の方から説明しますので。」
魔王軍戦略室。
レティウス、リゼットに続いて入ってくる仮面の男。
「!?」
最初に反応したのは案の定、強硬派代表のオルドだった。
「その仮面、人間ではありますまいな?」
「ええ、人間ですよ。それが何か問題でも?」
「魔王様、何をお考えか!我らは争っているのですよ!」
「争っているのはあなたと一部の暴走した魔族でしょう。」
「それに私は、人類に宣戦布告した覚えはありません。」
「で、ですが……。」
「人類に殺された我らが同胞が浮かばれませぬ。」
「私たちが殺した人類も浮かばないでしょうね。」
「オルド、これは単なる人類と魔族の争いじゃないのよ?」
「あなただって、何が一番の問題か、わかっているのではなくて?」
「……神々、承知しております、承知しているからこそ神々につく人類は危険なのです。」
「現状の人類が危険になるとは思えません。内乱でボロボロでしょう。」
「そ、それはそうですが……なぜ、その者を選んだのです?」
「不自由そうだったから。」
「は?」
レティウスとオルドの間に静寂という空間が生成された。
その空間を壊したのは、レティウスの爆弾発言だった。
「彼は人類代表として、我々に協力してもらうことになりました。」
「おい待て!魔族サイドにつくのは了承したが、代表になったつもりはないぞ。俺はそんな責任……。」
「もう言っちゃいましたから……。しかも公然で。」
「くっ、卑怯だぞ。」
「事実として、あなたの実力は人類全体を支えるほどのものなのですよ。ならば、代表と肩書きを付けてもいいでしょう。」
「それに、その方が強硬派の連中も黙りますし。」
「結局そこか。」
「はい、これでも魔王ですから、私の発言がどれほど責任を持っているかは自覚している……つもりです。」
「今、その自覚が本当なのか、俺の中で揺らいでいるんだが?」
戦略会議は始まったが、アラミスは何かを考えているようで終始静かだった。
オルドたちの議論はしばらく続いていた。
人類が魔族に本当に味方するか、軍備、補給等々。
暇を持て余したリゼットがアラミスに近づく。
「あんた、いつも何考えるの?」
「……。」
「あれ、リゼちゃんまた放置されちゃう?」
戦略会議はアラミスが思っていたより、簡素に終わった。元の客間に戻るアラミス。
中には……亜麻色の髪に、碧色の瞳をした女性が立っていた。どこかで見たことがある気がしたが、どうしても思い出せなかった。なんかすごく大事な人だった気がするんだが。
「あら、篠田さん、いえ、ここではアラミスさんが適切ね、奇遇ですね。」
「その声、ウェンディか?」
「え、そこから確認するんですか?」
「一応、私、それなりに見た目には自信あったんだけどなぁ。そんなに印象薄かったです?」
「いや、おっさんあるあるだ。この人誰だっけ症候群。」
「何ですか、それ、初めて聞きましたよ。」
クスリと笑うウェンディ。確かに美人かもしれない。妙に映える光景なのは確かだ。
「で、何で文化圏ババアがいるんだ?」
「それ、ひどくないですか?」
「まぁいいです。もうアラミスさんには人間的な期待はしていません。」
「私がいる理由は簡単ですよ。」
「女神、辞任しました。」
「……は?」
「今日から魔王側です。」
続く




