第七章①魔王城都市・ヴェルン
第七章①魔王城都市・ヴェルン
アラミスと、レティウス、リゼットらは魔界へ入り、魔王城都市・ヴェルンに到着した。
「ようこそ、魔界へ。」
「と言っても、人間だからといって襲われることなんありませんよ。」
「ほぅ。人間と魔族は争ってる聞いてるんだが?」
「それは一部は正しいですが、かなり語弊がありますね。」
「魔族で争っているのは、強硬派の連中と人類に私怨のあるものなど、ごく一部ですから。」
「最も……それを止められない私にも責がありますが……。」
アラミスは一回、顎に手をやり、何かを考えているようだった。
「人間側の認識とズレてる気がするな。人間としては、魔族が滅ぼしにきてるぐらいの勢いだったな。」
「だから魔石人間なんて生まれたわけだが。」
レティウスは一旦伏目になる。
「それは……悲しいズレですね。」
静かにしていたリゼットが突然口を挟む。
「神々のせいかもしれないよ!というか、そっちの方が自然なんだよね。」
「ユリウスならありうるわね……。」
「そんなにか……ユリウスとかいうやつは。」
「ええ……あれの思想は、危険です。」
「安全な思想なんてあるのかね。」
「え?」
リゼットは思わず口に出てしまう。そしてレティは静かに続ける。
「……確かに。」
「だから私は、思想よりも、人を見たいのです。」
リゼットは納得していないようだった。
「そんなの、誰もわからないよ。」
ヴェルンはアラミスが予想していた以上に栄えていた。子供と思しき魔族は走り回り、出店の前で何を買うか悩んでいる女性、店先で声掛けをしている店員。
「なんだこれ、人類の王都より活気に満ちてるじゃないか。」
「魔族だから、もっと荒涼としたものを想像してましたか?」
「私たちはバケモノでもなんでもないですよ、ただ単に生活しているだけです。」
「魔族が荒々しいとかいうのは、ステレオタイプですよ。」
「それは今、ここに来て俺が一番実感している。」
「私は、憎しみ合っていたとしても、人類とは共存できると信じてます。」
「……だといいがな。」
(キャシーがいたら、絶対、秒で消えてるだろうな。)
(シュバルはなんか模擬戦ふっかけてそうだ。)
(ザービはそんなみんなを止めるだろうな。)
(……バーレス。)
(あんたは、どうしたかったかな……。)
「さ、王城へ案内します。アラミスさん、あなたを正式に客人として認定します。」
「……神々と戦争になった場合は……。」
「それは最終手段です。考えはあります。ですが、今はそれを口にする前にやることがあると信じてます。」
「……そうだな。」
客間に通されるアラミス。
静かにしていると、そっと扉が開かれ、全身甲冑の魔族と思しきものが入ってきた。
「我はグレンヴァル。魔王様の剣にして絶対の忠誠を誓うものだ。」
「貴様か、人類から魔王様が勧誘してきたという人間は。」
「……グレンヴァル、聞き覚えがあるな。確か……魔族最強の将軍と聞いているが。何のようだ?」
「貴様の実力を測りにきた。が、もう十分だ。」
「貴様、我より強いな。わかるのだ、身のこなしを見ているだけで。」
「尤も、実際に矛を交えてみないとわからないがな。」
そう言ってグレンヴァルは、客間を後にしかける。
しかけたが、レティウスとリゼットが見えた。
「や、魔王様。」
「グレンヴァル、あなたなんでいるのかしら?」
「あ、いえ、この人間の実力を見定めようと思いまして……。」
「グレンヴァル、まだ本格的な戦争になっていません。」
「はい……。」
「よって、アラミスさんが戦場に出ることは、少なくても今のうちはないのですよ。」
「はい……。」
「あんた余計なことしすぎなのよ。レティへの忠誠は認めるけどさ、面倒ごとを起こすのはやめてよね。」
「まさかグレンヴァル相手にリゼちゃん流交渉術(物理)が炸裂するかもしれないなんて、酷い話だわよ。」
「その……リゼット様の『リゼちゃん流交渉術』とはどのような魔法なのです?」
「は?」
「いえ、何かの術式なのでしょう?」
「だめだ、グレンヴァル、天然すぎる。」
「おい、お前らはコントをやりに、わざわざ俺のところに来たのか?」
レティウスが慌てて正す。ただ、方向がぶれていた。
「あ、いえ、これは……部下の適切な指導ですよ。」
「ほぅ、リゼちゃん流交渉術(物理)は『適切』な指導なのか?俺には体罰にしか思えんが。」
「全く……この仮面めんどくさすぎるわ。」
「それも我も思っておりました。」
「そう?私は案外こういう人の方が、物事をちゃんと考えていると思うけど?」
「レティ、仮面のやつに惚れ込みすぎ。」
レティウスは一拍置いて話を始める。
「アラミスさん、本来なら、今後の方針について話し合うべきなのですが……。」
「ちょっと私とリゼはまだ行くところがあります。」
「今しばらく、一時の平和を享受してください。」
「平和、か。」
レティウスらはそう言って、アラミスの客間を後にした。
「平和という割には、何を焦っている?レティウス。」
続く
グレンヴァルは天然最強将軍。
久瀬としては、どこかで「リゼちゃん流交渉術(物理)」を使いたいんだけどな……。
よく考えると、魔法なのか物理攻撃なのかよくわからんなw




