第六章⑤たった3日、長い3日
第六章⑤たった3日、長い3日
一日目。
アラミスはいつもの安宿で考えていた。
仮面をつけたまま。
「思想、か。」
「少し整理が必要だな。」
そう言ってアラミスは古臭い紙を取り出して、何かを書き始める。
「まず、魔王サイド。これはあのレティとかいう魔王によると、人類の滅亡も魔族の滅亡も望んでいない。」
「これを人類と魔族の共存と置く。」
紙に魔王サイド:共存と書く。
「一方、神々サイド。これは……話を聞いた限り、合理主義と……選民思想?しかもかなり極端な感じだったが。」
「まぁ、これを原理主義的合理主義と置こう。」
紙に神々サイド:原理主義的合理主義とと書く。
「で、俺たち人類は?」
「……。」
言葉を探す、脳をフル回転させる、だけど……。
答えが出ない。
「そりゃあ……現国王が何を考えてるなんてわからんよな。」
「スラム街……。俺の提案とは全く違った形で消えたな。レナード、あいつ、結果だけを見れば正しかった?」
「いや……。」
「スラムの人たちにも、中身はどうあれ人生があった。一人一人の人生を無視していいなんて、そんな傲慢、許されないよな。」
紙に人類サイド:玉石混交と書く。ついでにレナード:×と書く。
「結果だけを見るなら、神々サイドの言い分も確かに筋は通る。通るんだが、何かが俺の中で引っかかる。」
「ウェンディ……あいつも、同じなのか。」
「でももしそうなら、なんで俺をギルド側に導いた?」
「神々サイドの思想なら、王国にまわしそうだが。」
「優れたものが率いる、秩序ある世界、か。」
「理想としてはわかるんだ。だが……。他の者たちは?その人たちの人生、どうなる?」
その後も、習ってもいない哲学などの知識も総動員して考えた。
結果は出なかった。
2日目。
目を覚ますと、仮面をつけたままだった。
仮面に手をやるアラミス。
「俺はもう篠田じゃなくて、アラミスなのかもしれないな。」
少し儚げに独りごちた。
(篠田さん、いえ、アラミスさんかしら?)
(……ウェンディ……。)
(あんたら、何を考えているんだ?)
(……。)
(私にもわかりません……。)
(ただ言えることは……神々全員がユリウスに賛同しているわけではない、ということでしょうか。)
(私も、ユリウスは……その……苦手です。)
(そうか……。)
(なぁ……。)
(神々がいなくなったら、世界はどうなるんだ?)
(……。秩序がなくなり、混沌が支配する世界になります。)
(ほぅ……。今の世界に秩序があるとでもいいたげだな。)
(それは……!いえ、私たちの能力不足です。)
(それと秩序には絶対神の思想が滲みます。)
(私が言えるのはここまでです。)
(ところで、魔王とはどういった関係なんですか?)
(は?)
(いえ、ちょっと対面回数の割には親しげでしたので。)
(お前……異世界転移させて魔王とラブコメさせたかったのか?)
(あまりにも深刻な顔してそうだったので、茶化しただけですよ。)
(それは……卑怯だな。)
(神々とはそういうものですよ。)
(そうか……。で、あんたは今の、いや、この世界の今をどう思ってるんだ?)
(……。よくは思ってません。神々と魔族は戦争になる可能性は高いです。人類は多分、神々につくと思います。)
(俺は魔族につくかもしれないがな。)
(それは卑怯です。)
(アラミスとはそういう奴だよ。)
(くっ……論理強者め……。)
(俺から見るとだが……あんたは今の秩序を好いていないようだがね。あんたも魔王につきそうな勢いだが?)
(それは立場上できません。私は女神ですから。)
(……辛いな。)
(もう、慣れました。)
(慣れ、か。怖いな。)
(あ、そろそろ私の精神力が……通信、切りますね。)
(あ、おい!まだ聞きたいことg……。)
「やれやれ、相変わらず突然現れて、突然消えるな。」
「一方通行、か。」
アラミスはその日も、宿に籠ったまま出てこなかった。
それでも、結論は出なかった。
3日目
ギルドの一角。そこにはアラミスだけがひっそりと、水をちびちびやっていた。
そしてフードの二人組が現れ、当たり前のようにアラミスの席のそばに座る。
「結論は出ましたか?」
「……まだだな。」
「これはリゼちゃん流交渉術(物理)が火を吹く時か!」
「リゼ、静かにしてなさい。」
「はい……。」
「アラミスさん、あなたは自分が思っているより強いのですよ。それは我々魔族ですら注目するほどです。神々がミスミスこの人材を切るとも思えません。」
「ですが、これを言ったら魔王失格の烙印を押されるかもしれませんが、あなたはあなたが自由な生き方をしていいと思いますよ。」
「そうしてきたつもりだがね。」
肩をすくめる。冗談を言うなよといった体裁だ。
「なぁ……。この世界、どう思う?」
「……。冷たいですね。」
「なるほど。それがあんたの考えか。」
「ちょっと待って!リゼちゃんでもわからない、今のレティの謎会話から何がわかったの?」
「この世界の構造。」
「この世界の歪み。」
「そして、ユリウスが秩序に執着する理由。」
「……。」
「それを圧縮すると、レティ風に言えば、冷たい、だろ。」
「……。そう、ですね。」
「わかった。」
「少なくともユリウスとかいう奴の思想は共有できない。」
「だから、結果的にあんたらにつくさ。」
リゼはきょとんとしていた。
「え、意外。」
「人間だから神側につくと思った。」
「神側にも一理あるにはあるんだが、気に食わない。」
「それだけだ。」
そしてアラミスとフードの2人はギルドを後にした。
続く




