第六章④魔王とアラミス
第六章④レティとアラミス
「お久しぶりですね、アラミスさん。」
「あんたは確か……レティ、だったか。」
「それともう一人のちっこい方は……なんだったか。」
「ちょっと!レティは覚えていて、リゼちゃんを忘れるとか酷くない?女性差別よ!」
「それは差別ではないな。単にレティの方が真面目でリゼちゃんとかいうやつがふざけすぎた結果だ。」
「レティ、ちょっとこいつに魔力弾ぶちかましていい?」
「やめなさい。」
「あなたでは敵わないわ。」
「え、この仮面のやつってそんなに強い?」
「強いわ。一目でわからないあなたはまだまだね。」
「ほえー。」
「で、何しにきたんだ?」
「あなたの腕を見込んで頼があります。」
「待て、それは拒否権はあるのか?」
「え、ええ……一応は。ただ、あなたは断らない。いえ、絶対に興味を持つ。そう思ったからここに来たのよ。」
「随分な観察眼だな。まぁ……要するにめんどくさいのがフードかぶってやってきたわけか。」
一瞬フードに手をやるレティ。フード越しでも視線が泳いでいるのは見えた。
「フード、外した方がいいかしら?」
「別に。」
「俺だって仮面つけてるしな。人にとやかく言う立場じゃないさ。」
レティは何かの魔法を唱える。その詠唱が終わると、突然ギルドの喧騒は静寂に変わった。
「これは……魔法で空間を遮断?いや、空間を切り取った?」
「これで私たちの声は周囲に漏れません。本音を話せます。」
「ふふっ。これ、維持するの結構魔力使うんですよ。」
「あんたのために特別にリゼちゃんも付き合ってるんだからね。」
「あんたのため?違うな、あんたらのためだろ?」
思わず目を見開くリゼ。
「こわっ!そこまで踏み込む?」
「俺に困る話題なら、わざわざ魔力消費してまで、空間を切り取る必要はないからな。」
「あんた、よくわかんない奴だけど、ちゃんと考えてるのね。」
コホンとわざとらしい咳払いする。
「私はレティウス。現魔王です。……一応。」
「へぇ。それで?」
「え、ここ普通は剣を抜かれる場面なんだけどなぁ。」
「少なくとも今のあんたは、悪い魔王様には思えないんだよな。それにそいつら、野蛮すぎるだろ。まずは話し合いだろ?」
「うーむ、リゼちゃん統計の外れ値が出てきたな。」
「リゼ、余計な話は後にしましょう。」
「単刀直入にいいます、魔石をレナードが手にしたのは神々の手引きです。」
「おそらく、人類を魔石で無理やり強化して、我々と戦争させようとしたのでしょう。」
「魔族と神々は昔から犬猿の仲ですから。」
「……おい、と言うことはレナードも単に踊らされただけ。死んでいったもの、大切なものを失ったのも、全部……。」
続けようとした言葉はレティに遮られた。唐突だった。
「全部かはわかりません。ただ、この内乱の一端を握っているのは神々です。まさか再び魔石で人間を強化するなんて……。」
(ウェンディがこの前、謎通信してきたのこれが関係しているのか?)
(確定はできないが、その可能性は高そうだな。)
「それで?頼みというのはなんだ?一緒に神々と戦えってか?」
「はい。」
「……面倒ごとは御免なんだが、放っておくのも気持ち悪いね。」
「保留は……できるか?」
「猶予はあまりありませんが、一応できます。私たちは無理強いをしにきたのではありません。」
「仮にあなたが断っても、我々魔族と神々の戦争は遅かれ早かれ始まるでしょう。」
「なんであんたら争ってるんだ?」
「へ?」
静かにしていたリゼが思わず間の抜けた答えをしてしまった。
レティは少し言い淀む。
「……思想、ね。」
「神々の絶対神はユリウスというのですが、彼は……私の考えと噛み合いません。悲しいほどに。」
「私は人類も魔族も神々もそれなりに共存していければ、それでいいと思っています。」
「でもユリウスは……。彼は、自分の思想で世界を秩序で染めようと考えています。そして、彼の考えは……。」
レティの声が僅かに震える。
「彼の考えは『優秀なものが上に立てば良い。』『愚者や弱者は単に従っていれば良い』『慈善は世界を腐らせる』こう言った類です。」
「……。」
「俺にはわからないな。」
「3日、考える時間が欲しい。それぐらいなら待てるか?」
「ええ、その程度なら。」
空間は再び接続される。ギルドの喧騒が戻ってきた。さっきより妙にうるさく感じた。
「3日後、あなたからいいお返事をいただけると嬉しいのですが。」
「断ったらリゼちゃんの交渉術が火を吹くからね!」
「こら!」
「はい、すみません、調子に乗りました。」
リゼは少しだけ反省した……ふりをした。
「では、失礼。」
ポツリとアラミスだけが取り残された。
続く
ここまで書いてなんですが、というか察しのいい読者様は感じていると思いますが、
作者久瀬は、リゼちゃん派閥疑惑がありますw




