第三章⑥ 襲撃、そして……
第三章⑥ 襲撃、そして……
突然、寝室にバーレスが勢いよく雪崩れ込む。
「おい、アラミス!起きてるか!」
目を覚まし、咄嗟に仮面をつける。
「あ、ああ、まぁ、寝ていたが。」
「近くの村で夜襲があった、たった今、伝令がきた。」
「かなりでかい規模の盗賊団でな……。俺たちが動くことになった。」
「すまねぇが来てくれないか。」
(また……盗賊、か。)
「今から行って、間に合うのか?」
「いくしかねぇだろ。」
「……そうだな。」
オーフェリの城門前には、すでに緋水は集まっていた。
「急ぐわよ。猶予はないわ。私がバフをかけて、高速移動させるから、なんとかなる……はず。」
ザービが何かを唱えると、急に体が軽くなった気がした。
そして走り出して気がついた。ものすごく速い。
「間に合うといいんだがな……。」
「おいシュバル、今は未来予測はいいんだ。村を救う。それだけ考えろ。」
「……妥当だ。」
「あたしの魔法で低空飛行もかけるわ。そのほうが早いでしょ。」
ふわっと地面から足が浮く。なんか不思議な感覚だが、確かにさらに速くなった。
ものすごい勢いだった。自分が風になったような、そんな違和感だった。
村についた。
だが……。半壊しているのは明らかだった。
頭のイカれた連中の声、逃げ惑う人たち、そして家は焼かれ、村人たちは殺される。
まさに村は阿鼻叫喚だった。
暗闇の中、皮肉にも焼かれている家が光源となっていた。
「とっとと片付けるぞ!」
そういって、皆散っていく。
バーレスは巨大な斧で、盗賊の群れを一掃する。
シュバルは確実に一刀のもと、盗賊を両断する。
キャシーは魔法で周囲の敵を壊滅させていく。
ザービは重症の人から一人ずつ丁寧に治療していく。
皆、明らかに洗練された動きだった。しかし、それでも……。
アラミスは……一人だけ動きが明らかに違っていた。
動きがテレポートしているのではないかと思うほど、鮮やかすぎるほど素早く……。
賊を切り殺していた。
盗賊団を壊滅させた頃には、朝日が昇り始めていた。
地面は鮮血で溢れていた。
バーレスの斧も、シュバルの剣も、そしてアラミスの剣も血塗れだった。
キャシーもザービも明らかに疲れた顔だった。
その事実だけが、この件の凄惨さを物語っているようだった。
「間に合わなかった……。」
アラミスが剣から血の雫を垂らしながら呟いた。
「私たちはできることはやったわ。」
「騎士団どもは何やってるのかねー。盗賊、野放しじゃねぇか。」
バーレスは少しムッとしているような言葉遣いだった。
「でも、全く無駄ではなかった。救える人は救えた。そうあたしは信じたい。」
アラミスは元盗賊の死体を見て呟く。
「ここもそう。世界からあぶれた連中が集まって、平穏を壊す。」
「でもこいつら、本当にあぶれたかったのか……。」
バーレスが早口で捲し立てる。
「おい、アラミス、そいつは考えすぎだ。」
「事実としてやっちまってるやつを放置するわけにはいかねぇだろ。」
バーレスが疲れたように呟いた。
「お前、その考え方だと、いつか壊れちまうぞ。」
「それはそうだが……。この世界、なんでこんなに歪なんだ。」
「……お前の理想はわかる。だが、理想が現実に投影されることはまずない。」
「お前は……優しすぎるかもしれないな。」
シュバルのその言葉だけが、妙にアラミスの心に残った。
「大体、あんたいつも考えすぎなのよ。」
「悪い奴は叩きのめす、昔の偉い人は『悪人に人権はない』といったものよ。」
「待て、流石にそれは言い過ぎだろ、誰だ、そんなこと言ったのは。俺は知らないぞ。」
(いや待て、昔見たアニメで……。)
慌てて筋肉ダルマが立ちはだかる。
「それはそれで、やべー奴だろ。」
「アラミスさん、結果的には救えた人もいるのよ。今はそこだけを考えましょう。」
「そ、そうだな……。」
こうして助けた村人と共に、トボトボとオーフェリに帰還した。
アラミスが都度都度、定義やら世界やらと呟いていた。何か言いたかったが、スルーしかできなかった。
続く




