第三章④ 困惑
いくら夜勤型の生活とは言えですね、
深夜十二時から色々活動→午前10時ごろ執筆→11時半ごろまで執筆。
これ、久瀬の前頭前野エネルギー消費量半端ないですw
第三章④ 困惑
「……召喚、かしら。いやでも……。」
周囲を見渡すザービ。そこには狭い壁しかなかった。
「術者が近くにいるはず。でもこの地形なら絶対わかるはずなんだけどな。」
「不可視化とかありえねーのか?」
「ないわね。私みたいに魔道ユニットぐらいならともかく、人間そのものを不可視にするなんて芸当、聞いたこともないわ。」
「私にすらできないもの。」
「そうか……。」
バーレスは分厚い手を顎にやる。
「なぁアラミスさんよ。あんたの違和感感知みたいなやつで、なんかなかったのか?」
当時の状況を思い出そうとする。が、なぜかうまくいかない。
「わ、わからない。というより、なんか記憶がぼやけてる。」
「記憶がぼやける?あの訳のわからねー動きの反動でもあるのかね。」
「おい、あの動き。意図的にやったのか?」
青髪が突然、鋭い視線をアラミスに向ける。仮面だけが無表情だった。
「そうだな……。気づいたら、終わってた。それだけだ。」
「そんな話、聞いたこともないな。」
「なんかのスキルなの……か。いや、それでも説明できるような動きじゃなかったな。」
「おい、話が脱線してるぞ。」
「あ、ああ……。悪い。今はオーガロードの件だったな。」
「このダンジョン、危険すぎるかもかしれない。」
「私たちでも、気を抜いたら半壊、いえ、全滅もありうる。」
緋水の間に緊張が走る。皆、重い面持ちだった。
アラミスを除いて。
「なぁ、キャシーが言ってた、『魔力の波動がおかしい』とかいうのって、日常的にあるものなのか?」
「それは魔力場とか魔力空間とかそういったものなのか?」
「それとももっと別の……。」
「あー、うるさいわね!まず魔力の波動はその通りよ、魔力にも場が存在するの。」
「で、あたしが感じたのは、魔法の出力がおかしかった。」
「弱く出そうとすると強かったり、強く出そうとしても弱かったり。」
「要するに、不安定。」
「俺はダンジョンについて全くのど素人だがな……多分ここ、空間が捻じれてるぞ。」
「理由はわからないが、なんというか、違和感の塊なんだよ。ここ。」
ザービが腕を構えながら言葉を発する。
「その説が正しいなら……このダンジョン、人為的に作られた可能性があるわ。」
「合理的すぎるのよ。あまりにも。」
「普通のダンジョンのトラップなんて、そんな作り込まれてないわ。」
「前衛は前へ出ていて、後衛の魔法は不安定。そこに後方から突然、オーガロード。」
「偶然にしてはできすぎているわ。」
「一本道ってのも気持ちわりーな。これだと俺たち前衛は、後衛の護衛をする必要性がねーから、前を進まざるをえねぇ。」
「そこを後ろからドンってひでえ話だ。」
「ちょっと提案なんだけど……。」
ザービが申し訳なさそうに続ける。
「この件、一旦持ち帰って、ギルマスに報告。今後、どうするかはギルマスの判断を仰ぐ。」
「つまり、撤収か。」
「あたしはまだ進んでもいい気がするけどね。」
「いや、正直、このダンジョンはザービがいう通り、普通じゃない。撤退することは、逃げではない。」
そして視線は当然のごとく、アラミスへ注がれる。
「オメーはどう思うよ?」
「……俺はダンジョン自体初めてでよくわからない。」
「だが、ここが気色悪いのは確かだ。俺の直感だと、進みたくない。」
「論理的じゃない、合理的じゃない、ただ気持ち悪い。それだけがここにある。」
(それに……俺は何に『なった』んだ。無意識に超高速戦闘してモンスター殺してるとか、もう普通じゃない。これは……なんだ?スキル?体質?違う。俺は何かに『なってしまった』のかもしれない。)
(これは女神の祝福なんかんじゃない、呪いだ。)
(もう、俺は俺に戻れない。)
「撤退しましょう。」
ザービは意を決したように呟いた。
そして、誰も異論は挟まなかった。
*
報告書 書き手:緋水リーダー・ザービ
SSSダンジョン第一層に以下の異常を検知。
・入り口に即死トラップ
・空間の歪みによる転移トラップ
・魔力場の異常
・一本道にも関わらず後方からモンスターの襲来
なお、アラミスにおいては
・空間の歪みを数学で解除
・記憶のない異常高速戦闘
など一般的な冒険者とは思えない挙動あり。
希望が通るのであれば、緋水にて管理したい。
以上
*
ギルマスの報告書を読む手が次第に強くなる。
「すまないが、ザービ君を呼んでもらえないかな?」
「かしこまりました。」
連れこまれたザービをギルマスを正視する。
「あのダンジョンは一時的に、ギルドが管理。封鎖します。」
「アラミスさんの緋水への参加も、私から促しておきます。」
「ただし!」
「なんですか、この『空間の歪みを数学で解除』『記憶のない異常高速戦闘』とは。」
「私もわけがわかりません。」
「ザービ君。」
「君、疲れてるね。」
「……かもしれません。」
「また厄介な話が浮上したものですね。でも、どうにかするしかありません。」
「王国は信用できませんから。」
軽く肩をすくめるギルマス。
ザービは一礼して、その場を後にした。
「アラミスさん、ですか。これは人材発掘なのでしょうかね。それとも……。」
女神の間と呼ばれる空間があると、とある古文書に載っていたのをふと思い出した。ただのおとぎ話だが。
「まさかね。」
ギルマスは視線を窓の外へやった。
続く




