第三章② 青髪とアラミス(改題の可能性あり)
ちょっと長く成りました。
まぁ許容範囲内ですよね。
ところで、最初は青髪とアラミスメインで行こうと思ったのですが、キャシーが暴走して止められませんでした。全てキャシーのせい。
第三章② 青髪とアラミス
*
「はぁー!私が文化圏ババアってちょっと酷くないですか。篠田さん!」
「私だって、あなたが踏破してそうなアニメ、ラノベ研究に勤しんでたんですからね。」
「それを文化圏ババアはあまりにも理不尽です!」
「……って、私女神なんだから、人類スケールで年齢を測ることなんてできなかったわね。」
「うん、私、ちょっと疲れてる。そういうことにしよう。」
「あれよ!グラフの軸を対数スケールに変換するようなものよ!」
コンパクトな鏡を取り出して自分の顔の皺を調べる。
「まだ……現役だもん。」
その声は誰にも届かなかった。届いてもどうでもいい声だった。
*
起床。
篠田はアラミスの仮面をつける。
安宿にしてはよく眠れた、と思う。
思えば、ここ最近は野宿続きで、サバイバル特訓強制コースを強いられていた。
朝支度も適当に済ませる。
「冒険者ギルド、行くしかないよな。」
「朝の冒険者ギルドって……あれか、旅館の朝の大浴場みたいに固定メンバーが陣取ってるんだろうか。」
冒険者ギルドの重い扉を開く。案の定……空いていた。唯一大浴場との違いは、そこらへんに酔っ払いどもの残骸が寝込んでるぐらいか。
「おはようございます、アラミス様。朝、早いんですね。」
「夜遅い方が良かったか?」
「あ、いえ、そういう意味では。」
「いや、実際どうなんだ。冒険者ギルドというんは24時間営業なのか?それとも0時上がりなのか?」
「まぁ、この酔っ払いの残骸を見る限り、24時間説が濃厚だがね。」
「左様にございます。当店は24時間営業となっております。」
「……残業は多い感じか。笑顔に疲れが見える。」
「あなたはどこまで……、あ、いえ、企業秘密です♩」
なんだろうこの既視感。この世界では、何か秘密事をするときに機嫌よくトーンを上げる習わしなのか。そんな知識、ウェンディから与えられた知識にないんだが。
「あの、その、実はアラミス様と合同で他のPTから依頼が来ております。」
「合同で?それはめんどくさそうだな……。拒否権は?」
「一応、ございますが……。そのPTが緋水でして。緋水が合同を頼んでくるなんて超レアなんですよ。」
「ですからお受けしないのはあまりにもったいないかと。」
「すまないが、ここに来て日が浅い。緋水とやらについて詳しい説明と、クエストの確認。それに労災の……。」
「はい、緋水についてご説明しますね♩」
「緋水はオーフェリ最強の冒険者PTと呼ばれる方々ですね。個人で動くこともあれば、緋水ワンユニットで動くこともあります。」
「簡単にメンバーの方をご紹介します。まずはリーダー格のザービ様。元神官なので回復魔法・バフ・デバフ解除に優れたお方です。ただ、ちょっと冷たい印象を持つかもしれませんね。実際はそんなことないと思うのですが。」
「なるほど、その、冷たい冷たくないは主観か?主観には再現性がないが、参考意見としてはもらっておこう。しかし、冷たいの定義が曖昧だ。もう少し厳密に定義して欲しいんだが?」
(この人、言ってることは分かりそうで掴めないんだよなぁ。腕は超優秀なんだろうけど、中身が意味不明なのよね。基本無視して、話だけしてしまおう。うん、それが私にとってちょうどいい。)
「……次にバーレス様。豪快な方ですね。よくビールをがぶ飲みしてますが、酔い潰れているところを見たことがありません。主に力仕事・体力関連の役割を担うことが多いそうです。」
「理性ある酔っ払いといったとこか。興味深いな。アルコールには個人差で耐性があr」
「次に、キャシー様ですね。本人曰く『超絶魔法使い』『人類を超越した魔道探究者』とか名乗っています。ですが、それは虚言ではなく、実際にすごい魔法使いなのは確かですよ。……ちょっと癖がありますが。」
「確認したいんだが、そのちょっとの基準はどこに置いた?」
「で、最後にシュバル様。基本的には静かな方、だと思います。ただ、強い剣士やら相手を見つけると興味を持つようで、たまに模擬戦して……相手をぶっ倒してますね。負けたところなんて、見たことも聞いたこともありません。」
「以上が、緋水のメンバーになります。何かご質問ありますか?」
「ああ、そのシュバルというやつは戦闘狂なのか?なんのためにその力を振るう?」
「はい、ございませんね。後ほど緋水の方もいらっしゃると思いますので、それまでお待ちください。」
「ギルマスからのサービスで、お茶3杯までなら無料でご提供します。」
「……おい、俺の質問全部華麗にスルーされてるんだが?」
「はい、経験上、アラミス様と問答を始めると3時間はゆうに超えてしまいますので。」
「まだ会って一日しか経ってないのに、素晴らしい観察眼だな。」
「それで……そのゆうに越えるという3時間という数字の根拠は?」
「いえ、もう無理です。私の脳が『この人、危険』シグナルを出し続けてます。」
「俺は単に前提の確認と、定義の確認と、構造の最適化と……。」
「ささ、こちらでお待ちください。それではごゆっくりどうぞ♩」
通された席で無料のお茶を飲んで一服。
(合同PTって、連携とかどうなるんだろうな。)
(そもそも俺、何ができるんだ?ただのBランクだぞ?しかも研修1日終えた段階で。)
(そんな奴がSSとかなんとかの超ベテランPTと連携して戦えるのか?)
……。
(ダメだな、99.9%爆死する未来しか見えない。)
ギルドの扉が「バンっ!」と無理矢理開けられる。
そこには赤髪のツインテールの女性がいた。
いや、女の子に近いか。この女性に対する観察眼、もう少し修正したいよな。保護欲がにわかに漂うが、本人はそういうの嫌うタイプだろう。ツンデレ?反抗期?ティーンエイジャーなの?
「あー!あの時のクソフラッシュ野郎!」
アラミスはお茶をゆっくり飲む。なるほど、どうやらこの子はかつて誰かにフラッシュ喰らって、面倒な目にあったらしいね。まぁ、俺もこの間使ってみたけど、あれは発光量が強すぎる。燦々とした太陽の下より強いからな。
「ちょっと!無視しないでよね。私を無視するなんて一億年と8000万年早いわよ!」
「ん?もしかして、その『クソフラッシュ野郎』って俺のことか?」
「そうよ、あんた意図的にやったでしょ!えっと名前、名前……仮面の変態?」
「まぁ間違ってはいないな。仮面はつけてるし、変態は基準と定義によるが、おそらく当てはまる。」
「なら、これからあんたは変態仮面で決定ね!名前なんてどうでもいいし。」
「……確かにな。」
「あら、反論しないのね?普通、俺は〜だとか言うところじゃない。」
「そもそも知らない人からいきなり、『クソフラッシュ野郎』と呼んできた挙句自己紹介しないやつに、
名乗る義理はないだろ。」
「え、この可憐で美しく、人類超越魔法使いのこと知らないの?」
「長いな。」
「そして、知らん。」
「信じられない。どんだけモグリなの?」
「あ……人類超越魔法使いとか痛い名前名乗ってるってことは、あんたキャシーとかいう地雷女か。」
「そうよ!私こそ人類の頂点に立つ最高の魔法使いにして地雷……ん?地雷女?」
「表現ひど!あんた、絶対女の子にモテないでしょ!」
「俺もあんたが男に言い寄られるタイプには見えないね。つまり、同類だな。」
「変態仮面と同類扱いされるのは癪だけど……。その強さ、そこだけは認めるわ。」
「あんた間違いなく強い。私の不可視化の魔法を見破るなんて、よほどの魔法使いじゃないとできる芸当じゃない。」
「でも、変態仮面は確定ね。」
「……俺の性癖までその魔法とやらで探知したのか?」
「バカ!そういう意味じゃないわよ!」
注文されてきた超特濃果実ジュースが運ばれる。早速、ゴクリ。
「あなたたちねぇ、さっきから話の内容が酷いわよ。」
落ち着いた、しかし、どこか冷たい音が響いた。
「あ、ザービ。いつからいたの?」
「そうね……忘れたわ。あなたたちの無駄に情報密度の高い話題で、最初がどこか吹き飛んだわ。」
「私はザービ。一応緋水のリーダーってことになっているわ。初めまして、アラミスさん。」
「あなたのご活躍は我々の間でも噂になっております。Fランクで紫魔石を倒すなんて、大偉業ですからね。しかもソロという噂までついてる。」
「完全に規格外。」
そこには鋭い視線があった。
(このザービとかいう女、ヤバいやつだな。言葉面は綺麗だが、一つ一つ探りを入れてきてる感じがする。)
(こういうのが一番、手強いんだよな。さっきの自称人類超越魔法使いの方が楽なんだが。)
(心理戦……か。全くめんどくさい。)
「まぁ、昔とった杵柄ってやつですかね。」
(明らかに嘘だが。さて、どう出るかな。)
「なるほど……。ちょっと聞いてもいいかな?」
「その仮面、もしかして誰かに狙われてるから?」
「……境界だ。」
「え、教会?あなた異端審問者にでも追われてるの?」
「うん?」
「え?」
「待て待て待て、位相がズレてる。これはただの……そうだな、単に仕事モードとプライベートの切り替えだ。」
「チャーチじゃない、バインダーだ。」
「ああ、なるほど。あのイカれた異端審問官に目をつけられてると思ったら、ちょっと気の毒に思ったわ。」
成り行きを見守っていたキャシーが特濃を置く。
「え、あんたアラミスっていうの?」
「今、そこ?」
「なんであんた、私の不可視の魔法ユニット見破れるのよ。」
「不可視?魔法ユニット?なんのことだ?」
「え?」
「……もしかして、あの俺の空間に入り込んでくる気色悪いやつ、お前の魔法ユニットとかいうやつのせいか。」
「何よ『俺の空間』って。」
「空間とは次元があるわけだが、まぁ、一般的に人間は4次元、いや、俺に言わせれば3.5次元かな。」
「まぁそんな空間を人間は認識しているわけだが、空間の定義に当てはめると……。」
「おいおい、朝っぱらからめんどくせー話してんなー」
そこには……筋肉ダルマがいた。
「……あんたは?」
「俺はバーレスっつーんだ。肉体労働担当だ。」
「そうか……俺はアラミス。そこの人類超越魔法使いさんがいうには変態仮面らしいが。」
「ちょっと、なんで私の名前聞かないのよ?」
「名前は識別子だ。そしてお前には人類超越魔法使いという識別子がついた。必要十分だ。」
「あんた、何言ってるか、訳わからないわ。」
「アラミスさんはね、あなたのことはキャシーじゃなくて、人類超越魔法使いと呼べば十分だ、って言ったのよ。」
氷の量が明らかに多い、冷水を静かに飲むザービ。
「あんたキャシーっていうのか。ちゃんとした名前、あったんだな。」
「で、俺はどうすればいい人類超越魔法使いさんとキャシー、どっちがいい?」
「それでいうなら私は、変態仮面とアラミス、どっちがいい?」
「別にどっちでもいいが?」
「え、そこは普通、『変態はちょっと……』とかならない?あんた頭おかしいの?」
「そこは否定しない。俺は昔から頭がおかしかったからな。今も続いてるだけだ。」
キャシーはわずかに伏し目がちになる。
「じゃあ、あんたはアラミス!私はキャシー!異論は認めないわ!」
「はいはい、りょーかい。」
「もともと思ってたんだけどよ、このPTなんで成り立ってるんだ?」
「そこにアラミスみたいなのが加わって大丈夫なのかよ。」
「問題ないわ。私が解釈するもの。それも管理も。」
「え、俺って管理対象なの?」
「自覚なかった?」
「キャシーとあなたは私が管理・運用するわ。」
「あー大体、あんたの性格わかってきたわ。」
「ちょっと!なんであたしまで管理対象なのよ!」
「いや、それはもうだいぶ前から管理してたわよ?」
「大概は大目に見てあげてたけど、アラミスさんの参入で危険度を少し上げないとね。」
「信じられない!人を管理するなんて!」
「いや、組織を適切に運用する上では、ある程度の管理は必要じゃないか。」
「……なぁ、ギルドで組織とか管理とか言ってる時点で、このPT詰んでねぇーか。」
バーレスは運ばれたての冷水をいっぱいやる。
「アラミスさんよ、あんた、今回うちと合同で呼ばれたの、理由わかってないだろ?」
「ん、ああ……ずっと不思議に思ってた。」
「適正試験だ。」
「え?」
「……あんたが仮面の英雄か。」
そこには静かに青髪の剣士が佇んでいた。
(こいつ、いつの間に?)
「あ、ああ、英雄かどうかは知らんが、みんな勝手にそう呼んでるのは知ってる。」
「アラミスだ。そういうあんたは?」
「……シュバル。」
「そうか。」
「それで……?」
「それで、とは?」
「紫魔石、ソロでやったのか?」
「一応は。」
「なるほどな。」
「お前、俺と戦えるか?」
「早い早い早い!」
キャシーが特濃をこぼしそうに成りながら割って入る。
「お前、普段冷静なくせに、そういうところだよな。」
「当然、却下ね。まずは任務の話をしましょう。」
ずっとやり取りを眺めていた朝風呂組はふと。
「おいおい、緋水、まためんどーな奴加わってるじゃねぇか。」
続く




