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対霧独立防衛空戦隊 ARMA  ~宇宙とかくソラの舞~  作者: たこ爺
最後は心に

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第26話 真剣勝負といこう

※ちとながいけど、いいよねbyたこ爺


 


 ピクシー分隊並びにムリヤン分隊が駐機し、トレボーによるアナウンスが入ることで、ようやく歓声がやんだ。

 ムリヤン分隊の機体はたっぷりの赤い塗料が塗りたくられており、この後の整備士たちの苦労を慮れば、まああまり直視出来たものじゃない。


 次の戦闘が始まりそちらに皆の視線が集まる中、ムリヤンとエサソンの機体に何やら小型の人型ロボットのような機体が群がってきている。二頭身ほどだからだろうか?よちよち歩きに見える。


「おい、アルプ。ムリヤンの機体に張り付いているあれ、何かわかるか?」

『……ん?リーパーが知らなくて俺が知ってるのなんてほとんどないと思うが……あーありゃ騎士どもだな。グリフォン対応型も出てたのか』

「なんだそりゃ」


 騎士、騎士といえば何千年か前の騎乗兵のことだろうが……現代で言うなら特殊降下海兵たちか?いや、しかし彼らがあんなに小さな体なわけないしな……


『SERまあ、部隊支援ロボのこったな。あんなナリして機体の整備、清掃、塗装なんかまでやってくれてたはずだぜ?ほら、みてみろよ』


 改めて外を見てみると先ほどまで小学生にも満たないほどの大きさしかなかったアルプの言う『騎士』が背中などの各所から器具を展張させており、成人男性平均から四倍ほど大きくなっていた。


 そして、展張した無数の器具を用いて機体をこすっていく。アームで見えなかった機体が再び姿を現したとき、既にそこには漆黒の輝きを取り戻した美しい狗鷲の姿があった。


「……すごいな」

『ああ、まさか狗鷲対応の騎士が出張ってくるとはな。第13中隊からでも派遣されてきたんかねぇ。確かまだあそこぐらいじゃないか。狗鷲のみで編成されてたのは』


 ふーん。授業である程度分かってはいたが、思っていたより備品関係の量産が追いついてないらしい。


『そこまで!両者戦闘を中止し駐機場への移動を開始してください』


 騎士らのことについて話しているうちにどうやら第二戦が終わってしまっていたらしい。

 今回もピクシー戦闘時と同様短期決戦で決まったようだ。


『勝者、サラマンダー分隊!』

 

 再びTCS内に歓声が響き渡る。見逃してしまった勝負にあまり盛り上がれないが、形式上の拍手くらいはする。

 綺麗に磨かれていく機体を眺めることに得られる昂りを込めながら私は残りの試合も観戦していく。


 もしかしたらこの先戦うかもしれない。


 ……いや、やはりそんな気はしない。この次、そして決勝において戦う相手は決まっている。

 私はそのつもりで分析や学習というより一つのイベントを楽しむ学生としてこれを見ることにした。

 まあ、いまはその方がいいだろう。


 そして、約束の時はすぐにやってくる。


『トーナメント第5戦、リーパー、アルプ分隊及びピクシー、セルキー分隊はIUD上の指定位置へ移動してください』


 一時間ほどの待機時間を越えてようやく駐機場から愛機を舞い上がらせる。無数に並ぶ機体の中から突出してみる景色というのは中々壮観だ。

 ただ、そう見入っている暇もない。TCS内にあの声が響いて来る。


『リーパー、今日はどんな手を使ってくるつもりですか?』


 約二週間前、ピクシーたちとは初めて知り合い小隊を組んで訓練をしてきた。模擬戦闘訓練が始まってからも長らく小隊内でやりあったものだ。

 つまり、もっとも互いを知り合う中であり、既にほとんどの手の内は明かされているも同然。どこで隙ができやすく、逆に何が得意なのか、いやというほどわかり合っているつもりだ。普段はそんなピクシーたちと一泡吹かせようと様々な小手わざを使って来た。

 先のように小惑星の裏に隠れたり、二人の意識が私に集中している間にアルプの横やりを入れてみたり、とにかくいろいろ。

 

「なに、簡単なことだ」


 しかし今日まで来ればもはや早々に通じるものではあるまい。

 だからこそ、その全てを組み合わせ全力を賭して戦うのだ。出し惜しみはしない。


「真剣勝負といこう」


 ただ、それだけだ。

 

『いいでしょう!やってやります』

『第5回戦、リーパー分隊vsピクシー分隊……始め!』



 

 合図と同時に目一杯スロットルを奥へと押し込んだ。


 座席に背中が押し付けられ、近場の小惑星が目まぐるしく流れてゆく。

 数十秒の加速の後、進行方向正面に煌めく影を視認する。

 ピクシー分隊に間違いない。

 減速はしない。ただ、発砲もしない。互いに当たらないことはわかっているから、無駄弾は使わないのだ。


「頼んだぞ、アルプ」

『誰だと思ってんだ。任せろ』

「リーパーエンゲージ」

『アルプ、エンゲージ』


 機体同士が至近距離で交叉する。互いに機体の背をさらし、キャノピー越しに同期の割に無駄に若々しい顔が見える。

 

 ……いい目だ。


 動画で撮影していれば1フレームにも収まっていないだろう高速域の通過ではあったが、ピクシーの顔は脳裏にはっきりと刻まれていた。

 

 機体の後端がすれ違ったことを確認した瞬間、そのまま操縦桿を思いっきり引く。

 アルプとも背中を見せ合っていた我々は再び交差し、互いに離れるように急速旋回する。

 同一方向に旋回し僚機間の距離を詰めないのは双方が一気に補足されないようにするためだ。また、ピクシーたちも同じような旋回機動を行っており、互いに僚機同士が1vs1のドックファイトを展開する運びとなっている。

 

 問題はどちらが先に旋回を完了し射線内に捉えられるかといったところ。


 ……どうやら、反応速度はこちらが上だったらしい。

 僅かではあるが、確実にピクシー機がこちらに背面をさらした状態で旋回してきている。

 しかし、交差の瞬間に射撃チャンスは殆ど無いだろう。

 実際ピクシーも気づいたのか斜線に捉えられないように軌道をわずかに変え始めている。

 この旋回では決着をつけられない。2度、3度と反転するうちにミスの多かったほうが背後をさらすことになるだろう。

 同性能、同格機体同士のこの勝負、結果を決めるのは操縦桿を切り返す速度だ。


 2度目の交差、機体を傾けたまま上下に翼が触れそうになりながら即座に機体を反転させ、再び旋回に入る。

 所謂シザースという機動だ。

 わずかにピクシーのほうが前。


 3度目、4度目、5度目……幾度となく旋回を繰り返し他の小惑星の近くを通り過ぎることも増えた。

 ここまで機動し続けて小惑星にぶち当たっていないのは奇跡に近い。


 そして、6度目の交差をし、両機の距離が開く。


「……しまった!」


 両機の間、ピクシーが旋回している方向に小さな小惑星が1つ。

 ギリギリの旋回戦の中で小惑星が間に挟まるということはよりそのギリギリを旋回したほうがその引力を利用して素早く旋回できるということ。

 そして小惑星はピクシーよりに位置している。

 まずい、かなりまずい。

 事実、まだこちらが旋回を終了していないにも関わらずすでにピクシーの機首はこちらを捉えようとしている。


『もらった!』

 

 いや、まだチャンスはある!


 あえて旋回をやめ、逆へと操縦桿を切ることにより、ピクシーを後ろへつかせる。

 

『もう諦めちゃったんですか!』

「……まさか」


 前方スラスターのスロットルを開け、一気に減速をかける。

 素早く旋回できたということはそれだけ速度が乗っているということ。

 こちらが先に減速をかければそれだけ相対速度が上がり射撃チャンスも少なくなるというわけだ。

 機動後の隙は大きくなるが、先に減速をかけた以上前に出るのはピクシー、君だ。


『くっ……』

 

 案の定、減速が間に合わずにピクシーが前へ出る。

 

「貰った」

『まだまだぁ!』


 突如ピクシーが機首を動かし、上方向へ旋回しようとするように見える(・・・)。そう、大尉殿がやったアレだ。

 できることには驚きだが、そう何度も引っかからない。


 機首だけ動かしたことにより、私に対して背中を大きくさらしたピクシー。

 あとは、トリガーを引くだけだった。


『そこまで!両者戦闘を中止し駐機場への移動を開始してください』


 IUDにVictoryという文字が表示され、小さなファンファーレが脳内に鳴り響く。

 眼前には純白の狗鷲が翼を竦めたように飛んでいた。

 

『参りました。やっぱ小隊長は強いですね』

「まあ、案外いいとこまではやられたけどな」


 遠くからは漆黒の狗鷲とピクシーと同じく純白の狗鷲が飛んでくる。


『なんだよ、リーパー。もう片付けちまったのか。英雄よろしく颯爽と登場しようと思ってたのによ』

「ま、悪魔に英雄は無理だったってこったな」


 四機で数日ぶりに編隊を組み駐機場まで凱旋する。

 TCS内には歓声が響き渡っており、当然悪い気はしない。

 まだまだこの先にも続くのに、優勝したような気になってしまうな。


『勝者、リーパー分隊!』

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