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対霧独立防衛空戦隊 ARMA  ~宇宙とかくソラの舞~  作者: たこ爺
最後は心に

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第21話 合戦準備

 大尉殿の世話になりになりまくったあの日から一週間。

 模擬戦と戦術訓練を繰り返し、身体に叩き込んだ。

 訓練が終わったならトレボーに頼み込んで小隊内だけで他の同期達のいない宙域にいき技を磨いた。


 ただ、他のやつらも何もしてこなかったわけじゃない。

 その日が近づくにつれて、皆基地の中にいる時間が減っていった。


 ピクシーとセルキーもいつの間にか腕が上がってきていたのか、被撃墜されることこそなかったものの、模擬戦で撃墜までにかかる時間は一秒、また一秒と伸びていった。


 そして時折大尉殿に再戦を申し込んだが、毎度機体を白く染めることになった。

 そして当然、その度に漆黒を取り戻すまで愛機を丁寧に磨き上げた。


 そして今日、最後の訓練。

 この訓練が終わった後、トーナメント戦本番までソラへ戻らない。

 今日は明日に備え、万全を期して早々に眠りにつく。

 おそらく皆、そのつもりだろう。


 さて、最後の講義はなんだろうな。

 あの普段ひょうひょうとした、真面目で面倒見のいい大尉殿が最後に何を話すか。なかなか楽しみだ。


「こちらリーパー、リーパー及びアルプの発進許可願います」

『了解、リーパー、アルプ cleared for take of 』

「リーパー、cleared for take of 」

『アルプ、cleared for take of 』

 

 体が座席に押さえつけられ、少し狭くなる視界の中でソラが広がる。


『サンキュートレボー』

『Good luck』


 集合場所まで編隊飛行するのも、慣れたものだ。

 スモークでも炊きながら飛んでみたいものだ。我ながら美しい軌跡が描けるだろう。



『みんな、揃ったみたいやな』


 私を先頭に、編隊を形成する同期達、その正面少し上方には少し我々を見下ろすような角度で大尉殿の愛機、巨神(ヘラクレス)が位置している。


『実はな、もう君らに教えるようなことあんまないねん。んにゃ、正確に言うと空戦技能や戦術技能的な面で教えることはもうないと思うとる……ただ、君らは一人前やない。半人前以下の新人や。ほいなら、何が足りないか……』


 大尉殿のただでさえ細い眼尻と口角が数倍つりあがっているのがキャノピー越しにありありと浮かぶ。

 こういうときに、まともな訓練だった試しはない。


『……実戦や。君らには実戦がたらん。あたりまえやけどな。そこで、実戦に近い訓練用意したんや。それに今日はありがたいことにゲストへお越しいただいた。紹介するわ』

 

 そう、先ほどから大尉殿は触れていなかったが、ヘラクレスの隣にいつもとは見慣れぬ大型の機体が鎮座していた。

 AS06 冥狗(ガルム)、開戦前から運用されていた対艦攻撃を主任務とする汎用攻撃機。

 霧のAG型よりも鈍重であるがゆえに多くの被撃墜者を生んだ半面、一人の英雄によって一定の知名度を有している幻の機体。

 この目で見るのは初めてだ。いったい誰が……


『諸君、久しいな。戦隊長のルーデルだ』


 ……ルーデル、上級大将?


『さて、普段顔を見せない私がこうして貴様らを見に来たのには相応の理由がある。貴様らがARMAに相応しい者達になったかどうかを見極めるためだ。今日と明日以降の3日間で私がふさわしくないと判断したものは、即刻部隊転属願いを書いてもらうから覚悟しろ』

 

 無線越しに伝わる威圧感、ここに来たとき脅されたあの記憶が甦る。

 

『というわけで、今日は閣下に来てもろた。明日以降のトーナメント戦でも来はるみたいやから、みんな気、引き締めて行きや』


 正直、改めて引き締めなおす必要はない。今ので勝手に引き締まった。

 その後、大尉殿から再度あった今回の訓練についての説明。

 今回、標的は不明。数も不明。分かっていることといえば、訓練前に基地内の隊員がしていた初月がまた参加しているという噂と敵機役のレベルが実践と同等かそれ以上という予測のみ。


 兵装は、ECQAAMが2セル、QASMが4発の計20発。

 機銃と8.8cm砲の弾薬は満載だが、不安は残る。


 そんな状態で小隊ごとに小惑星帯内へ突入し、トレボーの管制の下次々と現れる攻撃対象を撃破するという内容だ。


 以前にも訓練で三度ほどやった内容だが、毎回敵の編成は違った。

 おそらく今回も違うのだろう。


 それに加えて、閣下の登場が、不安に拍車をかける。

 実をいうと先ほど話した冥狗を操ったただ一人の英雄とは、閣下のことなのだ。

 ARMAの前身であるUNIDA第六代戦隊長であり初代ARMA戦隊長でもある。地球にて最初で最大の危機だった霧の第一次攻勢において、絶対防衛圏から敵を跳ね返した英雄。

 

 エーリッヒ・ルーデル上級大将


 その名を知らずに、偉業を知らずに、ARMAに入る者はいないといわれる。


 それほどの人物が今、目の前で、我々の舞を見極めようとしている……

 そう考えるだけで、両手で操縦桿を握らないと機体ごと震えだしそうなのだ。


 だが。


『そいじゃあ、リーパー小隊から。いくで』


 だがしかし、やるしかない。

 これまで通り、一つ一つこなすだけだ。


 大尉殿と閣下が正面から離れ、我々リーパー小隊はスタート地点へと前進する。

 キャノピーの前には灰色の小惑星たちが立ち塞がっていた。


『よーい、始め!』

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