第13話 FCS ONLINE
※注意 本作では通常、固定火器による射撃はGANSですが、88mm超電磁砲は口径、用途ともに機関砲とは違うため別途射撃呼称FOX4を設けております。
皆が、初めて鼠色の星空を飛んではや5日。いつまでも飛行訓練ばかりはやってられない。
「今日からは、射撃訓練をやるで」
ブリーフィングで告げていた、太尉殿の声が頭の中に反響してくる。
そう、忘れそうになるが、グリフォンは観光船でも競争機でもない。軍用の戦闘機なのだ。
当然、武装使えなくしてその役目は果たせない。
30ミリガトリング。
8.8センチ超電磁砲。
|8連装99式高機動空対空誘導弾格納セル《ECQAAM》。
|97式大型空対艦誘導弾《HASM》。
|99式高機動空対艦誘導弾《QASM》。
グリフォンに現在装備可能な武装たち。我々はこれらすべてを使い分けられるようにならなければならない。
そのために我々は基地から少し離れ、開けた小惑星帯の中にいた。
実弾射撃宙域と呼ばれているこの宙域は衝撃を吸収しやすい材質の小惑星が多くあり、この宙域にあるものに対してなら発砲しても比較的その後の処理に困らない。
我々ARMAは海軍と違い実弾を好んで使う。光学兵器に比べ、火力が高く、威力減衰もないに等しいからだ。
多少訓練場所が限られる程度、些細なものだ。
『まずは、固定武装から行くで。たぶんやけど、こいつら、特に30ミリはグリフォンに乗る中でいっちゃん使うことが少ないもんやと思う。でも、だからこそ。最後これが扱えるかで、生きるか、死ぬか、分かれると思ったがええで。目標は正面の小惑星に建設してある標的。最初は静止状態で30ミリから。そいならまず、リーパー……やってみよか』
大尉殿の合図にしたがって、機体を標的の前に移動させる。
『ああ、そうそう。みんなには言い忘れとったけどリーパー機には最初だけ実弾込めといた。その威力、しっかり目に焼き付けとき
そう、私の機体内に今装填されているのは模擬弾ではなく実弾。
大尉殿やキースの機体に当てればもちろん墜ちる。
「火器管制システム、オンライン、武器安全装置解除目標前方距離2000標的ロック……よし、発射」
自身の合図に従ってそっと、トリガーを引く。
直後、左前足付近から機巧音が機体を直に伝わってくる。
ガリガリっという音がコンマ数秒続いたと思った直後。
Brrrrrrrr
30ミリ砲弾の薬莢内に詰まった炸薬が炸裂し7つの砲身から途切れることなく砲弾が吐き出される。
砲弾は優秀な火器管制システムが示す道の通り突き進み、標的へと弾着した。
標的から白煙が吹き出し、全長数百mの小惑星に描かれた黒点を中心として黄、赤、青、黒、白と広がる洋弓の的が一瞬で埋もれていく。
それを確認しつつ射撃を停止し、機体の状態を確認する。
毎秒数kgにもなる砲弾を投射していたグリフォンだが、コックピットに揺れが伝わることはあっても、機体が動くことはない。
射撃と同時に対応するスラスターが自動で噴射され反動を打ち消していたのだ。
それがなければ、今頃私は後ろに控える同期たちへ突っ込んでいたことだろう。
噴煙が落ち着くと、そこには標的は無数のクレーターが形成されており黄色の部分が認識困難になっていた。
『よっしゃ、それなら次はアハト・アハト試してみよか。右、左、斉射で頼むで』
「了解。武器選択変更、右側8.8センチ超電磁砲。目標同じく正面距離2000標的……FOX4」
うっ。
ガゴン
トリガーを引くと同時に右から閃光が走る。直後、右後方からなにか外れたと錯覚するような音が耳を劈く。
慌てて目を開き、現状を確認しようとしたとき。眼前には先程とは比べ物にならないほど、巨大な噴煙が標的から立ち上っていた。
煙が晴れたとき、私の目に想像以上の惨状が映る。
わかってはいた。
初速は理論上30ミリガトリングより早く毎秒4000m以上、弾頭質量も10kgを軽く超える。
そんなものが弾着すれば……赤だったであろう範囲を超え、青にかかる範囲が巨大なクレーターと化していた。
TCS内にも静寂が走る。普段なら口笛でも吹きそうなキースもだんまりらしい。
『……流石に何度見てもすごいわ。次左、撃とか』
「了解……FOX4」
流石に、毎度目を瞑るわけには行かない。
少しだけ、左目を薄目にして光を軽減する。
結局弾道は追尾できないものの小惑星に穴が穿たれる瞬間は、確認できた。
全く、なんて威力してやがる。
穴はまた一段と深くなり、噴煙の色も惑星中心に迫りつつあるのか更に白っぽい色に変わった。
『リーパー、心の準備はええか?』
正直、まだ目も慣れてないし、心拍数も許容値ギリギリだ。しかし……
「ありがとうございます。大丈夫です大尉殿」
『わかった。次、目標同じく全門射撃、斉射』
「了解、fire」
眼球が焦げるのではないかという発砲炎を目に焼き付けながら今度こそ弾道を追う。
機体は姿勢制御で騒がしい。
一瞬だけとはいえ反動を感じてしまったほどだ。
先ほど2発の砲弾が通ったであろうFCSの示す弾道予想を挟むように、2発の砲弾が飛んでゆく。
そして、閃光で目を閉じることすらできないほどの僅かな間で弾着予想時間は零を指す。
直後、またも視界が白煙で塞がれ、標的に双子の大穴が穿たれた。
照準点から機体の幅分ズレて着弾した双子は青の末端ギリギリまで吹き飛ばし、舞い降りた噴煙は双子の穿った荒々しい大穴に化粧を施している。
標的に装甲帯がないとはいえ、霧のフリゲート程度がアハト・アハトを喰らえばやけどする程度では済まないことは明らか。
さらに言えばここが小惑星帯で、干渉する質量物が多いからこそFCSが必要だが、なにもない宇宙空間なら目視圏内程度、予測弾道なしでも命中させられるだろう。
『……ふーっ。なんとかうまくいったみたいやな。そいなら、みんなもやっていこか。各分隊に指定の小惑星を1つ割り当ててあるからそこになくなるまで弾叩き込んでや。模擬弾だからって味方にぶち当てたら懲罰もんやから注意するように』
『『『了解』』』
『あーそうそう。リーパーもアハト・アハトに関しちゃ2門とも3発目以降は模擬弾やから残りは好きに使ってええで』
つまり、残り六発は模擬弾か。
「了解しました。ありがとうございます」
『リーパー、どっちがより早く移動しながら正確に射撃できるか勝負しねぇか?』
「アルプ、とりあえず片門二発は使っとけ。じゃないと私が不利すぎる」
『へーいよ。もちろんその後は?』
「……今日の晩飯は豪華にいかせてもらう」
『なるほどな。俺が撃ってる間に財布持ってきとけよ』
「その必要はない」
白鼠色の星空に稲妻の閃光が無数に煌めく。
巨神が見守る中、星は流れ、狗鷲たちは友と自由に狩りに励んだ。
そして巨神がついに暇からこぼす。
『あーそういえば、次の訓練終わりに実技大会のトーナメント表がいつもの廊下に掲示されるから。覚えときー』




