第14話 墜ちるのは……
※復習 ノーム=アンナ
ホビット=ノア
「Missile Missile ビィビィビィビィ」
不快な警告音が脳内に鳴り響く。
『クッソ、何だこのミサイル!ぜんっぜんはなれねぇ!クソっ!』
『チッ、こちとら限界まで機動してるんだ。早く離れろってんだよ』
『ん……無理。明日がんばろー』
味方の断末魔がTCS内に響き渡る。
誰も、やつから離れられない。かく言う私もだ。
小惑星を盾にし回避を試みるが、やつは小惑星を超えた先で待ち構えてやがる。
くっ……
【墜落】の文字がIUDに表示される直前、私の機体を捉える無機質な目が鏡越しにこちらを覗いていた。
「トレボーこちらリーパー、着陸許可願います」
『こちらトレボー、リーパー|着陸を許可します《Cleared to land》。幽霊さんはあなたで最後のお帰りですね。お疲れ様です』
「Cleared to land 了解、ありがとうございます、そちらも管制お疲れ様です」
敗北という名の重りを背負って帰還する私の機体は、心做しかいつもより降下速度が早い。
しかし、許容範囲内。そのままの勢いで滑走路付近へと近づくと、ギアが滑走路まで数メートルのところで引き付けられた。
着地は、地面とキスをするように。
どこかで聞いたそんな言葉に習い、少しだけスラスター吹かせて滑走路へと着陸した。
無事、慣性制御の範囲内へと入ったようだ。
着地と同時に機体が減速し、誘導灯の指示に従って機体を昇降機の近くへと移動させる。
慎重に駐機させディスプレイ内に表示された機体昇降の文字をタップすれば、機体はゆっくりと下降し始め鼠色の星空はただの闇へと変貌する。
いくつかのハッチを超え、格納庫に到達し、電源とエンジンをシャットダウンしたなら、彼女の今日の仕事は終わり。グリフォンはゆっくりと羽を休ませられる。
まあ……私もそうとはいかないんだが。
機体を降り、TCSも外し、扉を開ける。
扉を一枚開けたなら……ほら、予想通り。
「シュン、遅い。もうみんな行っちまったじゃねえか」
キースが不満げな顔で待ち構えている。
こういう時はあえて堂々と行ったほうがいい。
たぶん。
「しょうがないだろ。全く、あれはしつこいことこの上ないな」
「……まさか、勝てたのか?」
「ESQAAMのことだろ?」
当然、
「負けた」
「なんだよ」
「しょうがないだろ。小惑星を盾にしても追いかけてくるのをどう避けるんだ」
我ら同期達を全滅させたやつの名は『ESQAAM』またの名を99式高機動空対空誘導弾。
本来はグリフォンの背中から敵を目がけて射られる蒼穹の矢なのだが……『ミサイルの性能は撃つより撃たれたがわかるやろ』という大尉殿の一声によってこちらへ飛んできた。
私はなぜか大尉殿の指示で最後に回され、結果として最後に幽霊へと仲間入り。
同時に元々予定されていた実技試験のトーナメント表閲覧レースに大幅なハンデをもらっておりキース君はご立腹というわけだ。
「別にゆっくり行ってもいいだろう。我々は一応優勝候補だろうからな」
「シュン……」
よし、これでキースの機嫌は……
「ばっかそう言う問題じゃねぇよ。俺が待ちきれねぇんだとっとと行くぞ」
どうやら悪化したらしい。
キースは飛行服を着たままの私を引っ張り、例の廊下へと連れていった。
例の廊下につくと案の定、ホログラムが掲示してあると思われる場所には円形状の人だかりができており、団子のようになっていた。
当然、我々が通りかかると道が開き……
ん?
「おい、隼。ずいぶん遅い登場じゃないか。折角昂った気分が台無しだよ」
なるほど、アンナ少尉か。仁王立ちする彼女の後ろにはノア少尉もいつものように隠れている。
「あーその、そこどいちゃくれねえか。俺たちゃ後ろのそれを見たいんだが」
「……キース、うっさい」
「んだとチビ酒」
こいつらいつの間に仲良く……
キースとノアが言い合い、それにつられて私がアンナ少尉たちの下にたどり着くまで保っていた静かなざわめきは、今や少し遠くのやつの言ってることがわからないレベルにまで大きくなっていた。
そんな中でアンナ少尉の声が人団子を貫く。
「……兎に角!見せる前に、ちと聞いてほしい事があんだよ」
「……なんだ?」
「私は、いや。私らはあんたらに勝つ。私なりの腕でね」
「なるほど、俺らに宣戦布告ってわけか?」
「……そう。少なくともキース、女の敵、おまえは、墜とす」
「それに、宣戦布告なんてやわなもんじゃない。決闘状だよ。相手にならないって断ったらただじゃおかないよ」
「別に、好きにすればいいじゃないか。私にはアンナ少尉たちとの対戦を断る権利もなければ理由もない。正々堂々、立ち向かってくればいい」
まあ、一回戦で当たって真面目に戦ってくれとか、そういう意味だろう。
「言質はとったよ」
そう言うとアンナ少尉はトーナメント表の前からどいた。
トーナメント表に書かれた分隊数は12。一回戦の後、一回戦で勝った分隊とのシード戦があり、準決勝、決勝と続く典型的なトーナメントがあった。
ピラミッド状のトーナメント、その底辺に書いている名前は全てTACネーム。
ホビット、そしてノームの名前は右端シード枠。
そして、我々。アルプとリーパーの名が書いてあったのは左端のシード枠。
即ち……
「私らと決勝で当たるまで負けるんじゃないよ」
なるほど、確かにこれは言質を取られるわけだ。




