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34 苦戦(蓮弥視点)




 「スズ!」

 「〈神の制裁〉!」


 押し迫る怪物達の群れを、スズがなんとか倒していく。


 既に、柊さんが神に会いに行ってから一ヶ月が過ぎていた。

 その間に起こったことは、全世界の約8割のダンジョン攻略、ルイナの風神取得。

 そして、時間切れ。


 昨日から、向こうの世界から敵が現れ出していた。

 しかし、今の所なんとか防ぐことができている。

 理由は二つ。

 一つが、別世界の愛結が敵の出現を誘導して、全て1箇所に集めているから。

 場所は東京ドーム。

 周辺の避難はあらかじめ終わっていて、スズやルイナが交代でなんとか押し止めているような感じ。

 東京ドームである理由は、一度穴が開いて壁が薄くなっているから。

 一ヶ月前の獣の出現も、倒せる可能性が高い僕らのいる東京ドームに別世界の愛結が誘導した結果らしい。


 もう一つが、既に怪物達が弱っている状態だから。

 別世界の僕が削っているのと、かなりのダンジョンを攻略したことで壁を開けるのに苦労しているかららしい。


 しかし、それでもかなり厳しいものがある。

 時間が経つにつれてこちらは消耗するし、相手の数も増えている。

 別世界の僕も、数が多過ぎて捌き切れないんだろう。

 神の制裁や神の息吹で倒しきれない敵も多くなってきている。


 「MPは!?」

 「後4回!」


 瀕死になった二足歩行の怪物に、トドメを刺す。

 あと、七……。


 「きゃっ!」

 「っ」


 悲鳴が聞こえ振り向くと、三体の獣がスズに飛びかかっているところだった。

 更に、次の集団が現れてきている。


 「〈交換〉〈交換〉」


 スズを位置交換で逃がす。


 ……このままだと、まずい。

 ひとまずルイナを呼んで、一掃してもらう。

 しかし、ルイナのMPもほとんど残っていない。

 僕も血色ノ華の使い過ぎでほとんど残っていないし、灰さん達も似たようなものだ。


 「〈神の息吹〉! っ、かはっ」


 辺りに突風が巻き起こるとともに、ルイナが膝から崩れ落ちる。

 見れば、口から血を吐いていた。


 ……無理させ過ぎたか。

 スズを見ても、既に限界がきている。

 MP的にもそうだが、精神的にも肉体的にもかなり疲れている。

 目の下には濃いクマが浮かんでいて、肩で息をしている状態。


 「っ! 〈交換〉」


 灰さんを瓦礫と交換し、敵の攻撃を回避させる。

 ……僕も疲れているようで、反応が遅れた。


 「ごめん」

 「僕こそ。〈交換〉」


 ルイナを離れたところに移動させる。

 明らかに、動ける状態じゃない。

 次の集団に、勝てるか?

 ギリギリ、スズが無理をすれば、くらいか。


 そう結論付け、亀裂を見やる。


 「……流石に、無理かな」


 出てきたのは、東洋の龍のような怪物。

 蛇のような体で、全長は4m程だが、ルイナが言うには、壁を通るために小さくなっているらしい。

 何故わかるかというと、昨日の最初に一体だけ現れたのだ。

 その時は、かなりぼろぼろだったのにも関わらず、ルイナが大怪我を、僕とスズが殺されかけた。


 しかし、目の前のこいつはほぼ無傷。

 更に、周囲にも50を超える怪物達。


 「逃げるしかないけど……」


 逃げるのも、ままならなそうだ。

 せめて、皆だけでも逃したいけど。




 ——え?


 警戒しつつ、周囲を見て思考を巡らせていると、突如怪物達がひしゃげる。

 一体残らず、全て。


 僕以外も、全員困惑している。

 ……誰かが何かをしたわけじゃないのか?


 そして次に、徐々に広がっていた亀裂が塞がった。


 残ったのは、血に塗れた瓦礫や怪物達の死体、僕らだけ。


 一瞬で、全てが終わった。



 ——静寂。



 「まに、あった!」


 その静寂を破ったのは、身体中ボロボロで。


 一ヶ月もの間、消息不明で。


 僕らがその一ヶ月間待っていた。





 血だらけの、柊さんだった。





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