31 獣
——破魂。
身体能力では勝てないことが分かったし、動きを阻害するために精神を殴る。
獣は地の底から響くような低い鳴き声を出しながら、身を捩って苦しんでいた。
硬い。
でも、雷撃波よりは効いてるかな。
「〈血色ノ華〉」
戦場となったドーム内に、血色の華が咲き乱れた。
鮮やかに彩られていく戦場を俯瞰しつつ、その華に近付かないよう、人の意識を誘導する。
具体的な誘導は任せているけど、意識的なものはサポート出来るし。
なるべく冷静に、落ち着いて行動できるように。
「〈暗黒弾〉〈交換〉〈交換〉」
「〈雷撃〉! わっ!」
蓮弥君が撹乱しつつ、鈴ちゃんが一撃を入れる。
思った以上に刀が入ったのか、獣の血肉が辺りに飛び散った。
地面や鈴ちゃんの服に付着し、ついた部分が溶ける。
「っ! 鈴ちゃん投げ捨てて!」
咄嗟に指示を投げ、鈴ちゃんが体液に触れないように上着を投げる。
「〈交換〉」
投げ捨てた事を確認してから、蓮弥君が一旦鈴ちゃんを避難させた。
肌とかには触れてないし、今の所問題は見られないけど……。
毒……ってよりは、酸とかそっちな気がする。
鈴ちゃんの安否を確認しつつ、獣から視線を外すわけにもいかない。
……後、避難できてない人は半分くらいか。
……これだと、近接戦闘は本当に避けなきゃダメだね。
距離を取りつつ、私が全力で足止めするしかない。
蓮弥君の負担も大きいけど、頑張ってもらうしかないかな。
「〈交換〉、〈交換〉」
攻撃を食らった事で、様子見をしている場合ではないと判断したのか、獣の動きが活発になってきた。
体液を飛び散らせながらの飛びかかりや、猛スピードでの突進、噛みつき。
でも、前足を斬られたことが影響しているのか、それとも体が腐敗していることが影響しているのか。
動きが単調で、偶に体勢を崩している。
今は蓮弥君が獣の気を引いてくれてるからこっちに被害はないけど、いつまでもつか……。
「〈空白〉」
空白なんかの精神攻撃魔法も織り交ぜて、蓮弥君を援護する。
……うーん、魔法系は効果薄いな……。
効果がないことはないけど、有効的とは言えないかもしれない。
とは言っても、近接戦闘をするわけにもいかない。
あと、少し……。
「柊さんっ!」
「っ!?」
突如、空からもう一体の獣が落ちてきた。
そいつは、明らかに私を狙っている。
避けきれない。
「〈忠義〉!」
私の体が持ち上げられ、半透明の膜に覆われる。
「お兄ちゃん!?」
私がいた場所には、お兄ちゃんの姿が。
……でも、これなら。
「〈交換〉!」
目の前からお兄ちゃんが消えて、代わりに三角コーンが落ちてくる。
獣は客席を巻き込みながら、床に着地。
土埃が舞って、姿が見えなくなる。
そのタイミングで、全員の避難が終わった。
「鈴ちゃん! 全力でっ!」
「はいっ! 〈神の制裁〉!」
光が見える直前に目を瞑って回避。
……効いてる。
少し待ってから目を開くと、二体とも瀕死の状態だった。
感電したのか体が麻痺していて、ピクピクと動いている。
死に体の獣の穴という穴から漏れ出てくる体液は、血と混ざって泡立っている。
……かなり、気持ち悪いな。
……?
動けない獣たちを見て少し安心した瞬間、獣の体が膨張し始める。
「え、え?」
私達が判断に迷っている間に1.5倍程の大きさになったかと思うと、獣が弾け飛んだ。
そして、中から1m程の小さい獣が数十体現れる。
「……きも」
これかぁ。
精神が蠢いていた理由。
寄生されてた感じかな。
——でも。
「これなら、さっきの方が強いね」
獣達の精神を握り潰す。
一体一体は弱くなってるから、簡単に壊せる。
……にしても、こんなのがいっぱいくるの?
鈴ちゃんの神の制裁でも死んではなかったし、多分元々大怪我負ってたっぽいし。
……早いところ、なんとかしないとなぁ……。
「とりあえず、なんとかなったね」
「……急ごうか」
蓮弥君には同期で私がリダと話した内容が伝わってる。
だから、それはいいとして。
「……お兄ちゃん、助けてくれてありがとう。……でもこれ、どうやって外すの……?」
この半透明の膜、消えないんだけど……。
セーフ!
あとこれで三章終わりです。
時間的余裕がなく、かなり辛いですが毎日更新はなるべく続けていきたいと思いますよろしくお願いします。
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