30 異常事態
すみません短いです!
「空間を切れれば、神様に会えるの?」
聖剣と言うのは、蓮弥君が全寿命と引き換えに一分間だけ呼び出したあの剣。
そして、あの聖剣なんだけど、〈楽園〉〈勇気〉〈叡智〉〈希望〉の4つのコアスキル持ちが集まれば、実質ほぼノーコストで召喚出来る。
蓮弥君が呼んだ時は全部空席で、且つ無理矢理システムから持ってきたからああなったんだよね。
今は私が〈楽園〉と〈叡智〉を持っているし、アーサー君が〈希望〉を持ってる。
……勇気だけかな。問題は。
「空間を切れればと言うか、世界の壁を壊せるんだよね」
リダが言うには、世界の壁を壊せば神のいる仮称天界に繋がって、そこからまた別世界にもいけたりするらしい。
「じゃあ、あと勇気だけか」
「そうなるね」
「誰が一番取りやすいかとかわかる?」
わかれば早いんだけど。
「勇気は……確か、アーサー。次点でスズ」
「なるほど、ありがとう」
それなら結構早めに条件は揃えられるかもしれない。
海外のダンジョン攻略を進めてて、SPはあるだろうし。
「じゃあ、僕は侵略を妨害してくるから——」
話を切り上げて、リダが立ち上がった瞬間。
世界が揺れた。
地震とかではなくて、空間そのものが。
「っ!?」
リダの表情が驚愕に染まり、明らかに異常事態であることがわかる。
少し遅れて、地響きが鳴った。
「何があったの!?」
「ごめん、詳しく説明している暇がない。侵略者の先行部隊が来た。僕は穴を塞ぎにいってくるから、処理をお願い! こっちならシステム内攻撃も効くはずだ!」
早口でそう並べ立てると、返事を聞かずに消えた。
敵が現れたのは、蓮弥君と鈴ちゃんが戦ってたちょうど中央。
宙に禍々しい黒の球体が現れ、そこから何体か落ちてきている。
ドーム内は悲鳴をあげる人や、恐怖で動けなくなっている人、真っ先に逃げようと走り出す人などで、混沌を極めていた。
……早く合流。
いや、ここからサポートした方がいいか。
お兄ちゃんに避難誘導をお願いして、混乱し我先に逃げようとする人々の流れに逆らって前に出る。
「蓮弥君!」
既に敵を前に武器を構えている蓮弥君に声をかけ、同期を使ってもらう。
「〈同期〉」
毎回くる衝撃に頭を押さえつつ、敵を見る。
それは、体長10m程、四足歩行の獣のような黒い生物。
ただし、人間が床に張り付くような体勢に近い。
全身から煙を立ち上らせており、皮膚が焼け爛れている。
所々赤黒い血を流していて、上から見るとわからないが体の一部が腐敗しており、紫の体液が流れていた。
殺意に濡れた赤い瞳は、蓮弥君を睥睨している。
正直なところ、かなり不快感のある見た目。
気持ち悪い。
……もしかして、弱ってる?
「〈雷走〉! 〈雷撃波〉!」
鈴ちゃんが距離を取りつつ、先制攻撃を仕掛ける。
しかし、攻撃を受けても効いている様子が見受けられない。
……いや、少し体毛が焼けてる。
効いてないことはないけど、全く動じてない。
……精神が蠢いてる?
眼下の敵に対して精神干渉を試みると、思った数倍簡単に成功した。
やっぱり、かなり弱ってる。
ただ、本来綺麗にまとまっている精神が蠢いていて、かなり気持ち悪い。
「〈落雷〉!」
現状、周りの避難が終わってないから神の制裁は使えない。
鈴ちゃんは腐敗した部分を狙ったらしく、雷鳴を伴い光が獣の後頭部に直撃した。
「は、やっ!」
「〈交換〉!」
その瞬間、あの時のルイナを彷彿とさせるスピードで獣が突撃してきた。
蓮弥君のお陰でなんとか避けたけど、対応し切るのはかなり厳しそう。
今は相手が様子見しているからなんとかなっている感じ。
……これは、時間稼ぎに作戦変更した方がいいかな……。




