冒険者派遣依頼
魔法国家リンドブルム、首都リーヴァにあるリオン邸に戻り、イヴと多少のいざこざを過ごしたルベリオスは足早に冒険者ギルドに向かっていた。
未だに失った魔力が完全には戻らず、いつも以上に時間を掛けながら辿り着いた。
中に入った彼女は一直線に目的の人物に向かって声を掛けた。
「サーシャ!ダバンと話をさせて!」
呼ばれたルベリオスの妹であり、副ギルドマスターのサーシャが振り返ると驚きながら近付いてきた。
「姉さんッ!?どうしたのッ!?」
「いいから!早くして!」
「ハァ……分かったわよ、ちょっと待ってて」
普段と様子の違う姉に深追いせず二階へ上がり、ギルマスに声を掛ける。
サーシャはギルマスのスケジュールを把握しているので、予定が無いのを知っていたので部屋に入りすぐに事情を説明すると、ダバンはあっさり了承した。
素直過ぎて一瞬驚いたサーシャだったが、事態の重さを感じ取ったのか急いで退出してルベリオスを呼びに行った。
暫くしてルベリオスとサーシャが入ってきたので、3人での話し合いが始まる。
「先ず最初にお前が何をしてきたのかを説明しろ。さっきの光と何か関係があるんだろ?」
全員にサーシャからお茶が配られたタイミングで、ダバンがルベリオスを見ながら説明を求める。
彼女自身も概要説明はするつもりだったので、あの森での出来事などを大まかに説明した。
程なくして話が終わり、ダバンが緊張感を濁す為に紅茶を煽る。
サーシャのカップも空だったので、彼女が席を立ち全員におかわりの紅茶を注ぐ。
「それにしても思い切ったな。あそこが元エルフ族の地である事は知っていたが、取り返すのではなく消し飛ばそうとするとはな。さっきのあの光がそれって事か。ここまで衝撃波が届く程の魔道具、恐ろしいな。規模的にお前の故郷は消し飛んでるだろ」
「私としてもそれは最後の手段だったわ。討伐できるならしたかった、でもあそこまでの戦力がある魔物の群れを全て討伐するには、時間と人員も膨大に掛かるし、何より確実に討伐できるかもわからないからね」
「確かにな、キマイラだけでも厄介なのにグリフォン変異種にアラクネ種、クウェシスディセロス亜種に亜龍、喋るオーガ、オーク、ゴブリン……これだけでもこの冒険者達だけで対処は不可能だろうな」
「そうね、それにそれを全て束ねた戦闘力を優に超えるリオン君もいるからねぇ」
ダバンとルベリオスが脅威を擦り合わせしていて、リオンの話が出た所でサーシャも口を開いた。
「最悪の予想もしていたし、改めて姉さんから聞いた今でも信じられないけど、本当にリオンさんはキマイラなのねぇ。今でも人族としか思えないわね」
「そうねぇ。私も彼は魔力から匂い、見た目、すべて人族にしか思えないわね。まあ、そもそもの個体数が少ないのもあるけど、おそらくその中でもリオン君は特殊個体か変異個体だと思うわよ」
「それはそれで奴の素材が気になる所ではあるが………そろそろ本題に入るか。お前もただ説明するだけに来た訳じゃねえだろ?」
「そうね、話が早くて助かるわ。今私が求めるのは2つ」
ルベリオスが指を2本上げながら要求する。
1.リオンの生死確認する為の冒険者派遣
2.生きていた場合の討伐と死んでいた場合の素材回収
「早ければ早い方がいいわ。サーシャ、今シルバー以上の冒険者はどのくらいいる?」
「そうねぇ……長期依頼などで不在の冒険者を除いて今この街にいるのは………シルバー級が40人10組、ゴールド級が8人2組、ミスリル級が10人2組ね」
サーシャが少し考えただけでシルバー級以上の冒険者が出てくる事にダバンが引いていると、ルベリオスは少し俯き考え始める。
ダバンとサーシャも急かす事は無く、ルベリオスの考えを尊重する姿勢だった。
暫くすると考えがまとまったのか顔を上げる。
「ダバン、サーシャ、数時間後に出発できる様にできる限り全員に声を掛けてちょうだい」
「は?数時間後だと?それだと半分以下くらいしか集まらねえぞ?」
「そ、そうよ姉さん、早くても明日以降じゃないと無理よ!」
「分かってる!でもそれじゃ遅いのよ!今この話し合いすら勿体無いくらい今は時間が無いの!」
眉間に皺を寄せながら困惑する2人に、更に語気を強め訴えるルベリオス。
2人は顔を見合わせながら代表してダバンが問い掛ける。
「あの森に行くには早くて5日は掛かるぞ?1日ズレた所で誤差だろうが。何か策があるのか?」
「あるわ。方法に関しては、私の魔道具で転移させるから気にしなくていいわ。向こうの滞在時間も短期で済むから野営用品や食事等の準備は必要無い、アナタ達は私に付いてきてただ攻撃してくれればそれでいい」
ルベリオスが空間系の魔法を得意とするのは冒険者時代から有名だったので、彼女が転移できると言うならできるのだろうと判断した2人だったが、それでも気になった事ができたダバンが再度問い掛ける。
「お前はリオンが死んでねえと思ってるんじゃねえか?」
「………常に最悪を想定しているだけよ」
「俺等は冒険者だ。今回は指名依頼だが、それでも受ける受けないは自由だ。あとな、依頼料はどうする?仮に奴が生きていた場合、どれ程傷を負っていようが間違い無く全員死ぬぞ?そんな自殺行為にギルドマスターとして承認は出せねえが、何回でも言うが行くか行かないかは奴等の自由だ。そのくらいの難易度の依頼料をお前はどの程度出せる?」
「依頼料は前金で金貨50枚、依頼達成で金貨250枚かしらね。帰還用の魔道具は私が持っているから問題無いわ。どうかしら?当然素材回収で終わっても変わらないわ。これで大丈夫そう?」
ルベリオスの提示にダバンとサーシャは苦々しく思いながら考え込むが、時間を掛けたく無いルベリオスは更に詰め寄る。
「アナタ達が悩んでるのは結局冒険者達が生きて帰る保証が見えないからでしょ?さっきも言ったけど今回は短期決戦よ!!基本戦うのは私だけ、あとの冒険者達は全員私の魔法で隠すわ。彼等はタイミングに合わせて私が持たせた魔剣や魔道具、各々の魔法を放ってもらうだけでいいわ。あと今回はサーシャ、アナタにも来てもらうわ」
「私ッ!?まさか、アレやるの?」
「そうよ、策はいくつあってもいいと思ってる。それほど一筋縄じゃいかない存在なのよ、リオン君は」
作戦をざっくり伝えたルベリオスが最後にサーシャの参加を促し、彼女はその意図を即座に理解した。
ダバンは分かっていない様だったが、説明する事無く決断を迫る。
ダバンとしてもリオンの脅威は知っていたが、余りにも短時間での決断に二の足を踏んでいた。
悩んでいた彼の最後のひと押しは窓の外から打ち上げられた。
轟音を伴って地上から宙に向かって夜闇を歪ませる程の漆黒が射出され、数秒後メテオの如き閃光を纏った塊が複数落下してきた。
3人が驚愕の表情で空に視線が釘付けとなっていたが、これでリオンかそれに匹敵する存在の生存が確認された事でダバンがサーシャに声を掛ける。
「サーシャ、今すぐ出発できる冒険者をかき集めろ!ルベリオスは魔剣や魔道具の準備をしろ!」
「はいッ!」
「分かった。ありがとう」
2人が出て行った部屋で、ダバンは椅子に深く腰掛けると引き出しから取り出した酒を徐に煽った。
その後の動きは早く、結果サーシャが語った冒険者達のその殆どが参加する事になった。
参戦
シルバー級冒険者:40人10組
ゴールド級冒険者:4人1組
ミスリル級冒険者:10人2組
不参戦
ゴールド級冒険者:4人1組『チーム黒獅子』




