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キマイラ転生  作者: てつまめ
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巨大魔法陣

 当事者であるフォルティスにとっては、肉体的にも精神的にも衝撃的な出会いを果たした日から既に1週間が経っていた。

初日はかなり噛みつかれ、傲慢な態度を崩さなかったキマイラであるレオーネの息子、傲慢の大罪スキルを発現した魔人族Mixのフォルティスだったが、リオン達の愛ある指導のお陰もあって、日を重ねる毎にその傲慢さが落ちつ………くことはなく、むしろ今までは配下にも負ける事が無いフォルティスが今でもリオンは言うに及ばす、金銀幼女にすらボコボコにされた事によって更に意固地になり、悪態を吐くようになってしまった。



 父親のレオーネは「どうしてこうなった」と頭を抱えていたが、そんな退屈とは程遠い感情の乱高下に日々楽しそうに過ごしている様に見えた。

父と子の苦悩は違えど、原因はひとつに集約し、当然文句もそこに行き着く訳だが、その元凶の太々しさはさすがとしか言えないものだ。



「うるせえ!俺は甘やかすバカ親も甘ったれの乳くさいクソガキも嫌いだ」

「いやしかしだな兄さん、あんなのでも可愛い一人息子なのだ」

「俺には関係ねえし、そもそも文句は俺じゃなくあいつ等に言え」

「ぐっ!そ、それはそうなのだが……どちらも元は兄さんなのだろう?であれば兄さんに言うのも間違ってないだろう」



 糠に釘状態のリオンに言葉の無駄撃ちをしながらも視線は2人の幼女に移る。

現在も朝から鍛錬という名の何かが行われており、フォルティスは上下左右に吹っ飛んでいる。



「キャハハ〜ほらほら〜、もっとうまく避けないと死んじゃうよ〜」

「まったく〜甥っ子ちゃんは学ばないなぁ。右からこうげきされたら〜しゃがむかうしろに下がれば当たらないでしょ〜?」

「ぐ、がっ、がはッ!クソ、がぁ」

「もう〜!せっかくダメダメな甥っ子ちゃんのためにどっちからこうげきするか教えてあげてるのにぃ」

「ねえねえルプ〜、ここまで優しくしてもダメならさぁ、やっぱり甥っ子ちゃんはたたかいの才能ないんじゃない?どうせならわたし達の給仕係にするのがいいと思うんだよね〜」

「ん〜、確かにそれが一番幸せかもしれないね〜」

「ック、クソ、ド絶壁ども、がぁ、黙って聞いてりゃーーー」

「「みぎ〜!」」

「ぐびゃッ!」



 最早隠されてもいない地雷を思いっきり踏み込むフォルティスに金銀幼女の華麗な右フックが決まり吹き飛んでいく。

内壁全域にはリオンが障壁を展開しているので壊れる心配は無く、フォルティスはピンボールの様に壁から壁にぼんぼん当たっている。

初日からよく見る光景だが、打たれ慣れたのか今ではすぐに気絶する事なく苦悶の表情で跳ね回っている。

その様子にレオーネは呆れながらも必死に応援していた。

そんな鍛錬なのか暴力なのか分からない状況が暫く続き、何度目かのピンボールが発生して遂にフォルティスが気絶したタイミングで塔の扉が開いた。



「リオ〜ン、ごはんだよ〜」



 入ってきたイヴはここ何日かのルーティンとして昼食時にみんなを呼びに来ていた。

イヴ以外のメンバーは日によって来る日来ない日があるが、今日は珍しくフルメンバーが揃っていた。

塔の外に出ると既にパンとスープ、森で狩ったイノシシがこんがり焼かれていた。

テキパキと全員リオンが出したイスに座り、手を合わせ食事を開始する。

フォルティスは現在も気絶しているので容器の中に入れ、リオン謹製ポーションでひたひたに漬けておく。

軽く雑談などを交えながら食事を終わらせたリオンはルベリオスに話を振る。



「今日全員来た理由は何かあんのか?あっちの書物には大したもんが無かったのか?」

「ん〜、そうね〜。あちらの本はすべて読んだけれど、私の欲しい情報は無かったわね〜。あとここに来た理由だけれど、私もそうだけどさすがに学徒であるこの子達を長期間連れ回すわけにはいかないので、あと2、3日したら帰る事にするわ〜」



 ルベリオスの話を聞いてすっかり忘れていたが、リオンは確かにとあっさり納得。

言葉通り3日後まで滞在し、4日目の朝に帰宅する事に決定した。

その後各々自由時間となり、オピスとルプは気絶から目覚めたフォルティスを連れ去り鍛錬を再開した。

レオーネは息子に嫌な顔をされながらも近くで見学を続けた。

チーム黒獅子のイヴ、エリーゼ、フェルト、リヴァイスはツバサとテースタ、ロンによる特訓を開始した。

その際真っ先に逃げたリノアを捕まえ、ウピルと共に輪に加えてあげた。

とりあえず邪魔を消したリオンはルベリオスと2人で話をする。



「お前の依頼はここの奪還じゃなかったのか?」

「あら〜?リオンくん、覚えててくれたんだ〜」

「そりゃ依頼だからな」

「ふ〜ん。それじゃ聞くけど奪還は可能なのかしら〜?」

「奪還はしねえが、引っ越しならできんじゃねえか?魔法国家リンドブルム、ギリアム帝国、ルークスルドルフ王国、ルスペランサ法王国、この4国の中心に位置するどの国にも属さない不可侵の森があんだろ」

「まさか、死の森に行くつもり?」

「あぁ、そうすりゃ依頼は達成だろ?この森はお前等エルフが自由に使えよ」



 リオンが何でもない事の様に語るエルフ族最大目標に暫し黙考する。

その様子を笑いながら眺めているとやっと視線が合う。



「確認だけれど、討伐は可能なのかしら?」

「おいおい、クハハハハ。ずいぶん物騒じゃねえかよ。だがそうだな、可能不可能で言えば可能だな」

「じゃあーーー」

「だがやらねえよ。さすがの俺も身内を手に掛けるは避けてえ」



 ルベリオスの言葉を遮り、明確な拒絶を以て返した。

彼女自身もここまでの数日間、危害を加えられる事も無く過ごせた事で多少なりとも意思疎通が取れる存在、またリオンの血縁者を殺すのは罪悪感があるらしく大人しく身を引いた。



「それなら仕方ないわね〜。ここからお引越ししてもらえるだけでありがたいわ〜。王様に話を通すのは任せるわね〜」

「あぁ」



 話しを終えたルベリオスは踵を返すと塔の書物を読むために去っていった。

そんな後ろ姿を見送っていると声を掛けられる。



「いいの?」

「あ?何がだ?」

「ハァ……分かってるくせに聞き返すのは時間の無駄よ。彼女、何かするつもりよ?」

「クハハハハ、分かってるよそんなこと。アイツが何をするのかが興味がある。ワクワクするだろ?なぁ、ツバサ」



 背後から現れたツバサに、振り向いたリオンの目は言葉通りワクワクしており口角も幻術が解けそうな程裂けていてとても楽しそうに笑っていた。

その様子に呆れながらも同じ存在のツバサも内心ワクワクしていて、結局2人で笑い合った。



「ふふ、間違いないわね。でもアナタ嘘はよく無いわよ」

「嘘だァ?清廉潔白なキマイラつかまえて何言ってんだよ」

「はいはい。今世の親族皆殺しにした清廉潔白なキマイラさん」

「クハハ!あれは正しい行いってなもんだ」

「はいはい」



 呆れた顔をしたツバサはリオンの言葉を流しながら去って行った。



 その後3日間は特に面白い事は起きず、オピスとルプはフォルティスの鍛錬を生き生きとして、それに触発されたチーム黒獅子はツバサとロン、テースタが鍛錬を担当し、リノアとウピルはリオン本人が担当した。

リオンの所には頻繁に変異種グリフォンのロストルムと、アラクネのネアも参戦してきた。

最初は息が合わなかった人族と魔物も、最終日にはリオンにボコられ同盟でも結んだのか、リノアがロストルムにライドオンして空中戦を挑んできたり、ウピルがネアの指導で魔力を高密度の糸状にして必殺仕事人の如き働きをしたりと意気投合していた。

それでもリオンには敵わずボロ雑巾が4枚出来上がっていた。



 そんな最終日の夜には陛下であるレオーネの発案で宴が催された。

室内にすべて入りきらない事もあり野外でキャンプファイアーが数箇所設置され、煌々と輝く火に照らされながら歓待を受けた。



「リオン、我の息子ともども世話になった」

「構わねえよ。しかもあのバカ息子を鍛えたのは俺じゃねえ、あっちの幼女どもだ」



 指を差した先には巨大な肉の塊に喰らいつくオピスと大量の皿を積み上げていくルプがいた。

その様子にレオーネは呆れながらも楽しそうに笑っていた。

なぜなら彼女達の隣には、今までは塔の外に出られなかった息子が必死に2人に追いつこうと空の皿を積み上げていたからだ。



「いや、確かに肉体的、精神的にはオピスとルプが鍛えてくれたのは確かではあるが、フォルティスが外に出られる様になったのはリオン、貴殿のおかげだ。感謝する」

「クハハ、お前も律儀な奴だな。だが陛下が軽々しく一介の魔物に頭なんて下げるもんじゃねえよ。後ろの鳥が焦ってやがるぞ」



 リオンの言葉にレオーネが振り向くと、ロストルムが陛下を諌めるか否かをぐるぐる考え過ぎて妙な踊りをしていた。

しかしそれでもレオーネの意思は変わらなかったのか、首を横に振った。



「魔物の世界は弱肉強食だ。陛下などと呼ばれておるが、我など最早死にかけの魔物に過ぎぬよ。されどそれを抜きにしてもリオン、いや兄さんには心から感謝しておるのは事実だ」

「魔物がそこまで真っ直ぐでよく数千年生きてこられたな、クハハ!まあいい、俺も素直に受け取っておく」



 これでこの話は終わりだと切ったリオンに、レオーネは頷くも、「ひとつだけ」と最後に投げ掛けた。



「フォルティスの身体はもう大丈夫なのだろうか?」



 レオーネのその言葉にリオンの視線がフォルティスに向き、少しの観察をしてから視線を戻した。



「俺も完全な状態の大罪スキルは知らねえからな。どの刺激がトリガーになるかならないかは知らねえが、普通に生きて、戦う程度なら問題ねえよ」

「ッ!!そ、そうか!それなら良いのだ!!」



 リオンの返答を改めて聞いたレオーネは、近くにいるロストルムとネアの3匹で喜びを分かち合っていた。

遠くの白い牛が可哀想だが、気にしないでおこう。

ちなみにフォルティスに施したのはリオン謹製ポーションで息子漬を作っただけだ。

結果としてリオンの魔力のこもったポーションなので暴走しそうな大罪スキルを強引に抑え込んだ。



(まあ本当はここまでの年月、献身的に自身の魔力、いや魂を分け与えたからこそ、今落ち着いたんだけどな。愛情ってやつなのかね。知らねえが)



 珍しく空気を読んだリオンは、喜ぶ3匹を眺めながら酒を煽った。

深夜遅くまで続いた宴では、そこら中に転がる泥酔した魔物達がいた。

その中のチーム黒獅子とリノア、ウピルを運搬して寝室に運んだリオンは1匹、キマイラの姿に戻ると、軋む足元に注意しながら塔の屋根に上がり、空を見上げる。

暫くボーッと佇んでいるとルプから念話が飛ぶ。



(今日なの〜?)

「あぁ、そうだな」

(やっぱりこっちの選択にしたんだね〜。賭けはルプの勝ちかぁ)

(えっへん)

「いやオピス、普通に考えりゃ分かるだろ。ちなみに今日の宴も実はレオーネっつうよりアイツの提案みてえだぜ?」

(あらあら、うふふ。だいぶ狡猾になっちゃって、可愛い)

「どうするつもりだろうなぁ、楽しいなぁ、ワクワクするなぁ、待ち切れねえよ、クハハハハ!」

(こら、あまり殺気立つとバレて行動起こさなくなっちゃうわよ?)

「クハハ!それはねえよ。なぜなら、もう今日しかねえんだからな!」



 ワクワクと待ちながら暫く雑談を繰り返しているとリオン達が反応する。



「来た!(((((あ)))))」



 空が落ちてきたかの様な魔力の重圧が全身を襲い、そのまま膨大な魔力が地を伝い、一帯に染み込んでいく。

幹の様に広がった魔力脈が範囲位置まで広がったのか、魔力脈が明滅を始めた。

数秒後、塔を中心に数kmに渡って巨大魔法陣が浮き上がった。

ビリビリと濃密な聖属性の魔力を全身に感じながら、リオンは進化してから邪魔だからと普段は隠している靄を全身から発生させながら、全員を起こす為に魔力を込めた咆哮を放った。



「ガルルル!ガアアァァァァァァァァァァ!!!!」


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