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俺様の名前は『フォルティス』。
偉大なキマイラの父と初代勇者の血を引く母の子だ。
生まれながらに他者とは格が違い、武術や魔術を次々と覚えていき今では父の配下連中に負ける事は無くなった。
そんな最強の俺様だが少し前から塔の中に隔離されている。
最初こそ反抗し塔の内側から破壊してやろうと躍起になっていたが、この塔の結界を死んだ母が施したと知らされ破壊はやめた。
破壊はやめたが俺様を縛り付ける事は許されないので他の方法を模索し始めた。
この塔は元々エルフ達の図書館だった様で、各部屋には部門や種類ごとに数多の本が所蔵されていた。
天才な俺様はその書物を片っ端から読み耽り今では長命種である父よりも豊富な知識を持っている。
そんな父もある時から突如として昔ほどの威厳や強さを感じない、だらけきった存在になってしまっている。
理由は知らないが、なんとも嘆かわしい。
もはや最近では父として接する事が恥だと思う様になり尊敬の念も無く、ぞんざいに扱っている。
くだらなくも退屈で平凡な日々が続いたある日、この森の外側から懐かしく力強い気配が近付いてきているのを察知した。
「昔の父上の様な重厚で濃密な気配だ。くくく、誰だか知らないが、ここまで辿り着けたならば俺様の配下にしてやってもいいぞ!」
まだ見ぬ強者に、傲慢な態度を閉ざされた塔で披露しながら数日待っていると、突如塔の結界が解除された。
最上階の部屋で本を読み耽っていたフォルティスが呟く。
「ん?今日は鍛錬の日ではないが……ん?この気配!!くくく、遂にやってきたか!!」
暫く待っていると、煩わしい声が塔の中に響き渡りヒステリック気味に反応したフォルティスが扉を蹴破り地上まで落下した。
「ザコが俺様に指図すんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」
父へ罵倒しながらも強者の気配を探し、黒髪で野獣の如き雰囲気を放つ男に先手必勝として大剣を振り切った。
確かな手応えの歓喜と、自らの強さ故簡単に終わってしまったという落胆という気持ちを携えながらフォルティスの意識が途切れる。
最後汚い声が耳に残ったフォルティスは、それが自らの声であると知って悪態を吐くのはまた別のお話。
「ハッ!!!こ、ここは……」
「やっと起きたかバカ息子よ」
戦闘中に意識を飛ばされたからか、意識が回復してから行動するまでが早かったフォルティスだが、状況把握はまだできておらず困惑していたが、背後から嫌な声が掛けられた。
気配と声と内容で誰かは分かっていたフォルティスは苦々しい顔をしながら振り向いた。
「アンタか……なんか用か?」
そこにはフォルティスの父親ではキマイラのレオーネが呆れた顔で佇んでいた。
普段ならそこから一悶着あるが、今日に限ってはフォルティスは父親以外の情報量が多く、大柄な態度で更に言葉を繋げる。
「お前は何者だ?俺様が誰だが分かってるのか?なぜ頭を垂れない」
「クハハハハ!おい、レオーネ、『傲慢』も関係してんだろうが、お前がコイツをここまで甘やかした結果、できたのはコレか?」
「それを言われてしまうと返す言葉も無いな。しかし結果は結果、それは不変故、今回兄さんに力を借りるのだ、許せ」
「確かにな、お前も言う様になったじゃねえか、クハハ」
フォルティスの言葉を無視した父レオーネと無礼な野獣みたいな男。
苛つくフォルティスだが両者の言葉で引っ掛かった言葉を反芻した。
「兄さん、だと?」
ボソリと呟いたその言葉にレオーネが視線を向けると首を縦に振り説明した。
「そうだ。この人、キマイラは我の兄のリオンだ。お前に合わせたのは単に顔合わせと、お前を鍛えてもらうために来てもらったのだ」
「鍛える?貴様が俺様をか?貴様程度の存在に俺様を鍛える事ができると?気配はまあまあだが貴様からは強者としての存在力を感じねえな」
フォルティスの言葉にリオンが首を傾げてしまったが、ここで横にいたイヴが裾を引っ張り意識を向ける。
そしてここで初めてフォルティスがリオンとレオーネ以外に意識を向け認識した。
イヴを見てフォルティスは固まった。
「リオンリオン」
「ん?なんだ?」
「たぶんあの子、リオンに気絶させられた事が記憶に残ってないよ」
「は?なんでだよ」
「そこまでは知らないけど、頭を強く打ったから?かなぁ」
「おい!お前!そこの魔人族の女!!お前、名は何という!?」
リオンとの楽しい会話を無理矢理中断された不機嫌なイヴは声の主、フォルティスに冷たい視線を送りぶっきらぼうに応える。
「……イヴです」
「イヴ……イヴか、美しい名だ」
「はあ……それは、ありがとうございます」
興味の無い会話にイヴがぞんざいに扱い、リオンとの会話に戻ろうとしたら大声で再度呼ばれ、ビクリと驚き訝し気な視線を向ける。
「イヴ!!」
「はい?」
「我が妻になれ!!」
いつの間にか立ち上がり手を差し伸べてくるフォルティスに、表情はそれぞれだが無事全員を凍りつかせる事に成功したフォルティスは『はい』以外の言葉を想定していない、見事なドヤ顔でイヴを見ている。
そんな当人は、たっぷり数秒固まり、どうやってフォルティスの言葉を否定しようか考えていた。
しかしその数秒に先手を打ったのは、これまたいつの間にか用意していたテーブルとイスに腰掛け優雅なティータイムを過ごしていた存在達だった。
「やったねイヴちゃん、顔は〜良いかどうかはよくわかんないけど王子様ゲットだね〜キャハハ。おめでとう〜」
「あらオピス、美醜は関係無いわよ。あんな熱烈な愛情表現が出来るんだもの、合格ね。イヴをよろしく頼むわね」
「キャハハ〜、ツバサは分かってないなぁ。顔はだいじでしょ〜」
「おっ?ルプわかってるね〜。ワムちゃんはどう思う?」
「キシャ?キシキシキシャ」
「え?そうなの〜?ワムちゃんのおめがねには敵わなかったかぁ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!なんでそっちで勝手に決めるのッ!?フォルティスさん、私はもうリオンのものだし他の誰かの元に行く事はありませんからね!ごめんなさい」
盛り上がってきたティータイムを強引に中断させたイヴがそのままの流れでフォルティスのプロポーズも断る。
フォルティスは一瞬何を言われているのか理解できておらずアホ顔を晒していたが、拒否されたと理解すると何故かリオンを睨み付けた。
「リオンと言ったな。貴様は必ず俺様が殺す!覚悟しろよ!」
「クハハ、できねえ事を大声で喚くなカスが。それは傲慢じゃなく恥だと知れ」
「殺す!!」
殺気が膨らみ大剣を構えたフォルティスがリオンを横一文字に振り抜く。
大剣にしては速度も十分で、凡百の冒険者なら上半身と下半身が亡き別れる程の威力だった。
しかし今回は相手が悪く、先程の焼き増しの如き流れで、いつの間にか背後にいたリオンがフォルティスの頭を掴むとそのまま地面に叩き付けた。
「ハッ!!!こ、ここは……」
「はいはーい。フォルティスちゃん、ここからはわたし達が甥っ子ちゃんを一人前のおとこにして〜イヴちゃんをゲットしてもらいま〜す」
「やっぱりおとこの子なら一度は最強をめざすもんだよね〜」
「……なんだ貴様等。色気も無い子どもに構ってやるほど俺様は暇じゃない、去れ!ぐべッ!」
「あっ、また気絶しやがった。おい!オピス、ルプ!話が進まねえじゃねえか!」
「わたし悪くないもん。レディに対して無礼な甥っ子ちゃんが悪い」
「ルプにどーかーん。わたし達の修行はそういうところも鍛えてあげるの〜」
「あぁ、分かった分かった。次は開始するまで手出すなよ」
「ハッ!!!こ、ここは……」
毎回頭に衝撃を受け気絶するフォルティスは死に戻りの如き再現力で同じセリフを繰り返す。
話が進まないと怒られたオピス達は静かにティータイム続行。
イヴは発見を面倒臭がりリオンの背中におんぶされている。
漸く説明できるとレオーネはフォルティスに改めてリオンの紹介、ここに来た目的をした。
当然反発したフォルティスだが、リオンが力の一端を見せた事で少し考えると渋々了承した。
しかし説明はそこで終わりでは無く、今回鍛錬担当はリオンでは無くオピスとルプの2人だと紹介したら先程同様の反応が返ってきたので、リオンはフォルティスに光の障壁を張り、2人の攻撃を防いだ。
障壁にヒビが入った事でリオンは面白そうに観察し、フォルティスは引き攣った顔で了承した。
人選はどうあれ、フォルティス自身何かを感じていたのか鍛錬は真面目に頑張っていた。
しかし教官がオピスとルプなので基本脳筋思考となり、行う鍛錬は魔法無しの無限組手だった。
人型の時もあれば幻術で普段の銀蛇、金狼になる事もあった。
そんな無限地獄も数日続くと飽きてくる教官のオピスとルプ。
その打開策として脳筋思考の2人が考案したのが物理攻撃無しの魔法無限組手だった。
呆れたリオンだったが、本人達が絞り出した案が功を奏したのか、唯一面白かったのが、おそらくリオン達個人に紐付く固有魔法をオピスとルプが発動できたこと。
進化してから大罪スキルが抜けたと感覚的に理解もしていたが、発動条件に名が必要である可能性が濃厚。
「ん〜、第八階梯魔法グラトニー」
「第三階梯魔法インヴィディア」
オピスのグラトニーはドス黒い目の無い2m級のパックマンが8体出現し、何でも喰った。
文字通り何でも喰った。
無機物、有機物はもちろんの事、魔力なんかも喰ってる。
喰ったモノはパックマンのエネルギーとなってパックマンの存在時間が延長する。
存在時間は1時間。
喰う質と量によりけりだが、2kgくらいの野うさぎ1匹5秒プラスくらいだった。
ちなみにゴブリン食べさせようとしたらレオーネに怒られたので断念。
今度はバレずにやるとしよう。
強さはそこまで強くなく、イヴなら簡単に殺せる。
色々検証するためにフォルティスをロンとツバサ、テースタに託した。
その結果、発動文言は意外と適当でいい。
『第◯階梯魔法』で発動させる場合は、空欄の数字を変えればその数に合わせたパックマンがでる。
限界は300体、範囲制限がありオピスの周囲50mだったのでギチギチのパックマン達が共食いを始めてしまった。
大罪名だけで発動する事も可能だった。
その際はパックマンが10体固定で出現した。
最後に無詠唱の発動も一応可能だが1m級が3体固定。
これは練度の問題だと思い終了。
ルプに関しては1m級の眼玉が10個でた。
重瞳の様に瞳孔に色とりどりのガラス玉を入れた様に多彩色に溢れた美しいお目々だった。
ただ能力はえげつなく、対象者にありとあらゆる状態異常を付与した。
フォルティスを実験台にしたら、またレオーネに怒られそうだったので、再度野うさぎさんの協力のもと実験を行ったら、最後にはショック死してしまった。
どうやら某FFの『死の宣告』の様な遅延即死魔法が付与されていたらしい。
さすがに頭にカウントダウンが入っていないので詳細は不明だ。
今度誰かに掛けてギルドのジョブ部屋で見ようと誓ったリオンはひと通り終わった検証実験のまとめを満足そうに眺めると2人をフォルティスの元に戻した。
胡座をかいてニヤニヤしているとイヴが上に乗ってきた。
「リオン、楽しそう。良い事でもあった?」
「あぁ、知らねえ事を知る喜びを噛み締めていた所だ」
「あはは、なにそれ。リオン、研究者みたいだね」
「クハハ!それも面白そうじゃねえか」
フォルティスのボコボコになった姿を眺めながら楽しそうに会話をするリオンとイヴはとても仲良く、そんな2人をボコボコのフォルティスが恨めしそうに睨んでいた。




