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キマイラ転生  作者: てつまめ
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神界

 何も無い。ただただ白い空間。

前後左右見渡しても壁面が見えない程の空間の中心に存在がひとつ。

その存在はこの空間にも負けない程、すべてが純白の女性。

視線を上げ、虚空を無表情で見ている彼女は創世神ガイア。

リオンやイヴなどの神以外の存在を前に顕現する際、ガイアは全生物が親しみを抱きやすい表情、口調、態度を表面に覆う事が可能だ。

リオン達にはなぜか邪険に扱われるがそれはイレギュラー、外れ値としての存在で興味深い。

しかしそれは別としても、現在この場所は神界と呼ばれる神々の領域。

地上での遊ぶ理由も無いこの空間では、取り繕う必要が無いガイア。

そんなガイアが徐に視界全てにディスプレイを出現させる。

そこには人々の日常や非合法な行い、秘め事、魔物の営みに至るまで遍く映し出されていた。

無表情で全方位の過去現在を把握し、数年の起こり得る未来を精査していくと、ガイアはあるひとつのディスプレイを拡大した。

変わらず無表情ながらその映し出された仲睦まじく話している兄弟にリソースを多めに割り振り音声もONする。

暫く無表情で眺めていたガイアが次の瞬間ピクリと反応して顔を下げた。

バッと顔を上げたガイアは無表情ではなく、ニヤニヤと悪巧みを画策している悪ガキの様な顔をしていた。

「あはは」と笑い声を溢しながらディスプレイに話し掛ける。



「リオン発見!ふふふ、また面白い進化しちゃってもう〜。おやおや〜?普段留守番のイヴちゃんは今回は一緒かぁ、あはは、良かったねぇ。さてさて、今度はどうやって驚かそうかなぁ?あぁ、でもでも〜次こそアテナ辺りがマジギレしてきそうだな〜。まったく堅苦しい神だよねぇ、といってもアレスみたいなおバカちゃんを真似されてもうざいけどね〜」



 表情をコロコロ変えながらディスプレイに話し掛けるガイアだったが、ふとリオンが話し掛ける隣の人物に神の目を向けるとピタリと動きを止めた。



「ん?あれ?この子キマイラじゃない?この世界にリオン以外に居たんだね〜。最近生まれた子かな?ん?おや?この子……」



 単純にリオン以外のキマイラの存在に驚いた様子のガイアだったが、次第に眉間に皺を寄せながら過去を見通していく。

時間にして数秒にも満たない時間旅行からの回帰したガイアは思案顔で歩き始めた。

腕組みしたまま重力とは?くらいの自由度で縦横無尽に歩き回りながら考え込む。

誰が聞く訳でもないが、ガイアはヒトがする様に独り言ちる。



「リオンの魂がぐちゃぐちゃに歪んでるけど、隣のレオーネだっけ、この子の過去を見たけど間違いなくリオンの弟だねぇ。初代勇者とパパキマイラの戦い以降僕がこんな存在を見逃したのかなぁ?んー……いや、この子はだいぶ昔から力を配下に譲渡してるから力の大きさも今のリオンからすれば抜け殻と表現するのも納得だな〜。だから見逃しちゃったのかなぁ?んー……」



 逆さでスタスタと歩き、何かが見えたのかぴょんと床に降り立つと再度ディスプレイを見た。



「それだけだと説明できないけど〜、おっ?ここかなぁ?なんか凄い封印が施されてるなぁ。あれ?この封印見覚えあるなぁ、まあそれより今はこの中に答えが〜……お?ほほぉ、なるほどなるほど、だからリオンには発現しなかったのかぁ」



 何かに納得したガイアが口を開こうとした瞬間、頭上の空間が甲高い音を立てながら割れた。

侵入者に対してガイアは視線を向けずにため息だけ溢すと振り返り、話し掛けた。



「君は部屋の入り方をいつ覚えてくれのかな?ノックって知ってる?シヴァくんじゃないんだからさぁ」

「ハハハハハ!何言ってんだよガイア、お前が毎回うるさいから仕方なくノックして入ってきてやっただろうが!」

「はぁ、やれやれ。あれがノックだったとは、君は相変わらず粗野で野蛮だね、アレス。それで?僕に何か用かな?」

「ハハハハハ!粗野で結構!野蛮で結構!俺は祭り事の神だからな!派手に存在する事が俺の全てだ!」

「こらこら、戦を祭り事と表現するのはやめなよ〜。まあ、いいや。それで?」



 いつものやり取りなのか創世神ガイアは早々に話を終わらせたい気持ちを全面に出す。

戦神アレスはカラッとした性格なのか大雑把なのか、ガイアの態度に特に不快感を出す事なく笑いながら話を進める。



「ハハハハハ!お前に会いに来たのは忠告をしに来た!」

「忠告だって?僕に?」

「そうだ!お前は度々リオンの周辺に過度な干渉をしているからな!創世神でも限度がある、更に今も何か企んでいただろう?」

「……最近は我慢してるよ」

「戯け!もっと我慢しろ!創世神といえどあまり地上に干渉する様なら俺等も黙ってられねえからな?」



 戦神アレスが声に圧を乗せ空間を震わせる。

人族なら圧殺される程の威力でも創世神ガイアともなればどこ吹く風で往なす。

しかし忠告は本気なのでガイアは軽い調子で両手を上げ、手をぷらぷらして降参を示す。



「分かったよ〜。僕としても十分種は撒いたからね。これ以上は当人達がどうするかだよねぇ」

「うむ!わかりゃいいんだよ!ハハハハハ!」

「だけどね、もしリオンが世界を壊すというのであれば、さすがに僕は全力で世界に介入するからね」



 ガイアの返答に笑いながら頷くアレスだが、最後に釘を刺すガイア。

創世神ガイアとして放つ言葉にアレスはニヤリと顔を歪めながら同意した。



「あぁ、それでいい。だがなガイア、そうはならねえと俺は思ってるけどな。ハハハハハ!さて、俺はそろそろ帰る!ではなガイア!引きこもりも程々にしろよ!他の神々とも積極的に交流でもしろよ」

「あはは、余計なお世話だよ。さっさと帰れ帰れ」



 アレスのお節介にべーっと舌を出して追い払おうとするガイア。

その態度にアレスがひと笑いすると入ってきた割れた空間に飛び移って帰っていった。

再度ため息を吐くガイア。

アレスが入ってきた空間を直そうと視線を向けるとひょこっとアレスが顔を出した。



「そうそう言い忘れていた!」

「はぁ、なんだい?」

「お前、あまり被り過ぎると己を見失うぞ!」



 言いたい事だけ言うと返事を聞かずにアレスが今度こそ去って行った。

しかし返事を待ってもらっても今のガイアには返す事はできなかっただろう。

無言でアレスが割った空間を直すと部屋中のディスプレイも一瞬で消した。

静寂が戻った白い部屋の中、中央には無表情の純白の存在、創世神ガイアが俯いていた。


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