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キマイラ転生  作者: てつまめ
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到着

 青い空、白い雲、太陽っぽい恒星がキラキラ輝き世界を明るく照らしている。

澄んだ空気を吸い込んだ事でとても気分が良い。

しかし足元がうるせえな。



(まあ息してねえし肺があるかも知らねえから気分もクソもねえけどなぁ、クハハハハ)

(こら〜!飛行機は喋ったらダメー!)

(ダメだよリオン〜。役に徹しないと〜)

(誰が飛行機だ、誰が。そんな配役は納得してねえ)

(こほん、えぇ〜本日はキマイラ航空407便にご搭乗いただき、ありがとうございました〜)

(こほん。お降りの際はお手荷物、リオン謹製コンテナボックスのお荷物をお忘れになりませんよう、お気をつけくださいませ〜)

(なにそれ、最近ハマってんのか?だが、お前等の言う通りそろそろ着くな。それにしても、だいぶ離れた所を飛んでんのに微妙に魔道具の影響受けるなんてなぁ)

(そうねぇ。おそらく塔を中心に円柱状に範囲設定してるのでしょうけど、何だか怪しいわねぇ。微妙な影響下でも半日ちょっと掛かったかしらねぇ。ハァ〜朝日が眩しいわ〜気持ち良いわねぇ)

(おひょひょ、浄化の光じゃわい。アンデットなら昇天しそうじゃの)

(勝手に召されてろ爺。降りるぞ)



 直角に降下を始め、箱入り人類達の悲鳴がリオンの方へ流れてくると、ふと何かを思い出したのか笑いながら念話を送った。



(なんかよう、記憶がもう朧げだが何回目かの俺が軍に居た時こんな降下してたよな?)

(さあ、知らないわよ。気のせいじゃない?)

(リオンの記憶力はダメダメだからね〜)

(キャハハ、言えてる〜)

(ふん、大方テレビの情報を自分の出来事として錯覚しておるだけじゃろ)



 日頃の行いの結果を再確認したリオンは、そんな言葉達すら無視して過去の記憶を手繰り寄せていると唐突に頭に電球が出た気がした。



(あっ!思い出した!HALO降下だ!コレ、それと似てね?自由落下)



 思い出したリオンがテンション高めの念話を送るのに対してツバサ達が冷めた視線を向けてきている。見えないけど。



(まあ自由落下ではあるけど、HALO降下ではないわね)

(やれやれ、リオンはロンと同じくバカじゃからのぉ)

(はぁ?どこがちげえんだよ)

(それが分からんのがバカの証拠じゃて。オピス、ルプ、このバカに代わりに教えてやるのじゃ)



 地面まであと1kmくらいの所まで迫り、数秒後には激突というタイミングで脳内にオピスとルプの言葉が重なり響いた。

リオンはその言葉を聞き、なるほど、とクハハと笑いながら人類入りの箱を上空へ投げると周囲の喧騒を掻き消す程の轟音と衝撃波を撒き散らしながら着地した。

土煙で周囲にモザイクを掛けると改めてリオンが納得する。




((ただ落ちてるだけ〜))





(確かにオピスとルプの言う通りだったな、クハハ!確かにコレはHALO降下じゃねえ、ただの落下だな。一瞬紐なしバンジーかもとか思ったが、それもちげえからな。クハハ!ただの落下か、ウケる)

(キャハハ、おっちょこちょいなんだから〜)

(クンクン、あれれ〜なんかあちこちから美味しそうな香りがする〜。歓迎パーティかなぁ?)

(埃っぽいわね!もう!もっとちゃんと降りなさいよ。この鬱陶しい煙晴らすわよ)

(ひょひょひょ、それよりリオンよ。そろそろ落ちてくるぞい)

(ん?あぁ)



 ツバサが土煙を吹き飛ばし、晴れた視界の上からは先程投げた箱が落ちてきていたのでリオンが難なく魔法でキャッチすると、ポイッとぞんざいに投げ捨てた。

イヴ達リオン一行は多少の差異はあれど全員箱から出てきたが、その他の吸血鬼族達は全員気絶していた。

そしてリオンの隣には未だ意識を失っているロストルム。

相手サイドでこの状況を説明できる奴はいない。

つまり、そういう事だ。



 ガシャンガシャンガシャンガシャンと物騒な金属音が擦れる音が慌ただしく動き、無事リオン達は包囲された。

リオンが降り立った場所は城壁の門を超えた先の広場みたいな所だった。

地球風に言えばロータリーだな。

剣や槍、棍棒を持つゴブリンやコボルト、オークやオーガなどなど多種多様な魔物が本能ではなくしっかりと統率されている。

リオンが周囲を見渡すとビクリと怯えながらも陣形を崩さない魔物達。

チラリと後方も確認すると前衛と同種のマギア系が魔力を練っていた。

普段見る魔物とは明らかに違う。

人族と比較し、遜色ないくらいには軍隊化されている。

イヴ達も通常の魔物との差異を感じたのか、侮らずに警戒しながら戦闘準備を整えている。

速攻リオンのモフモフボディに隠れたリノアとは違うなと感心していると、前方の群れが左右に割れ一際堅牢そうな全身鎧を身に纏ったオーガが出てきた。



「キサマ等ハ、ナニモノだ?」

「えッ!?オーガが、喋ったッ!?」



 イヴの驚いた声にリオンが訝しげに一瞥して他の連中にも視線を向けると、声は上げていないものの誰もが驚愕の表情をしていた。

いまいちピンときていないリオンが素直にイヴへ問い掛ける。



「おいイヴ、コイツが喋ったからってそれがどうしたんだよ。人型なんだから喋る事もあんだろ」

「いやいやいやリオン、人型だとしても精々喜怒哀楽の感情を出すくらいだよ。エンシェントドラゴンやフェンリルじゃあるまいし、オーガが言葉を、しかも人族が使用している共通語を話すなんて今まで聞いた事もないよ」

「へぇ〜そうなのか」



 自分然り棚上げしても、スノーオーガも喋ってたしなぁと前例を少し前に体験しているリオンはイヴの熱弁も響く事なく冷めた返事をした。

それと同時にイヴの表情に眉根を寄せながら思考が加速する。

そんなやり取りに、見た目隊長オーガが地面を蹴り砕き視線を向けさせた。



「答エロ!!キサマ等ハナニモノだ!!シカモソノオ方ハ、ロストルム様……コノ卑怯者メ!!」



 今は色々忙しいから誰か答えるかなとリオンが見渡すも、イヴ達は全員リオンをガン見していた。

面倒臭くなってきたリオンだが、それもあと少しで終わるので適当にあしらってみた。



「囀るな下っ端が!!さっさとそこ退け。テメェに構ってる程俺は暇じゃねえんだよカスが」

「うわっ、口悪ぅ〜」

「静かにするんじゃリノアよ。ご主人様の事じゃ、何か考えがあってのことじゃろうてな」

「いやいや絶対無いでしょ。もう〜ウピルはリオンを信じ過ぎだってばぁ。あれは絶対面倒臭くなっただけだって」

(ふっ、リノアよ。成長したな)



 背後でコソコソ話する2人にリオンイヤーをピクリと反応させつつ、見た目隊長オーガを更に煽っていると遂に堪忍袋の緒が切れてしまった。

魔力が吹き出し、威圧感が高まる見た目隊長オーガにリオン以外が反応する。

当の本人はと言うと、視線は見た目隊長オーガに向けられているが意識は後方、この塔の出入口に向けられていた。

ここに着地した段階からリオンはこの場所に高速で近寄る存在を感知しており、あと数十秒程で到着するその存在にワクワクしていた。



「来たな」

「ハ?何ヲ言ッテイル!!」

「双方動くでない!!」



 ワクワクリオンが視線を後方へ向けると、包囲が左右に割れ、中心からアラクネがこちらへ歩いてきていた。

蜘蛛部分は脚が黒に所々黄色のラインが入っており、腹部が表は緑主体の黄色ライン入り、裏は茶色。

頭は茶色だ。

何となく女郎蜘蛛っぽい。

人型部分は全体的に肌色っぽいが、リオンアイだと肌色っぽいのは皮膚ではなく全て毛であると分かる。

髪は茶、目は正面2つ、左右に3つの合計8個ある。

蜘蛛部分も同様なので合計16個の視界がどうなっているのか気になるところではある。

そんなアラクネがリオンの前まで来ると人型部分が腰を折って一礼した。



「お迎えが間に合わず申し訳ない。そして部下達が無礼な態度を取ってしまった」

「クハハハハ、構わねえよ。コイツ等もそれが仕事だ。それを責めるつもりはねぇ。むしろよく訓練されてる」

「そう言ってもらえると助かる。お前等、この方達は陛下のお客人だ!!くれぐれも粗相のない様にしろ!!」

『はっ!!!!』

「よし!では各自持ち場に戻れ!」

『はっ!!!!』



 アラクネの鶴の一声で包囲は解散、全員持ち場に戻っていった。

静かになった広場を見渡して改めてアラクネがリオンに向き直る。



「さて、改めて。私はアラクネのネアだ、よろしく」

「あぁ、俺はキマイラのリオンだ」

「リオン?」

「あ?どうした、俺の名前が気になるか?」

「あ、い、いいや、すまない」



 リオンの名前を聞いたアラクネ、ネアがあからさまに動揺しているが面倒臭く、深掘りするつもりがないリオンは適当に流したが、それにすら気付かないくらい動揺していたネアは話を変えるためキョロキョロと話題を探して探して、遂に発見した。



「ッところで!その、ロストルム殿は生きているのか?」

「ん?あぁ、コイツか?生きてるぞ。うるせえから気絶させて連れてきた」

「あのロストルム殿を殺さず無効化するとは……さすがリオン様ですね」

「様?まあいいか。それに別に大した事じゃねえよ。あぁそうだ、それとコイツに会う前に襲ってきたスノーオーガは始末した。アイツもお前の仲間だったのか?」

「そうだな。彼奴は最近陛下の麾下になった新参者だ。そして魔物の世界は弱肉強食が基本だ。死んだのなら弱いアイツが悪いな」

「まあ確かにそうだな。あの程度で挑みにきたのが凄えよな」



 リオンとネアの話が一段落した所で早速塔内部に案内してくれると言うので従うことにした。

その時に未だに気絶しているロストルムと吸血鬼族一行をネアの部下に返却した。

塔内部は殺風景で、掃除はしている様だが人族とは違い無駄な金ピカの装飾品だったり、当主や家族の絵画、骨董品、豪奢なカーペットは無い。

物は無いが者が多く、多種多様な魔物が各フロアを行き交っていて、そんなダンジョンみたいな空間を進み上へ上へと歩いていく。

そして10階に到着した。

そこは9階までとは造りが変化していて、ホテルの様に左右に扉で分かれていて、一行はそのまま最奥へ歩いていく。

そして最奥、そこには一際巨大な扉があった。

先頭に居たネアが振り返る。



「長旅で疲れているだろう。陛下への謁見までまだ時間が掛かるのでリオン様はこの部屋で休んでくれ」

「あぁ分かった。ありがとな。ちなみに塔の中は散歩してもかまわねえか?」

「ッ!?い、いえ、とんでもない。はい、もちろん、好きにしてくれて構わない。ただ、散歩はここより下の階のみで頼む。では私はこれで失礼する」

「あいよ」

「ねえねえリオン、他の部屋も使っていいの?」



 イヴの言葉にピクリと反応したネアが、出会って初めてリオン以外の同行者に視線を向けた。

しかもリオンに対する好感情ではなく、表情から悪感情だと分かる。



「この階ならどの部屋でも勝手に使え。ただし貴様等が塔内部をうろつく際は殺されても文句は言うなよ。それが嫌なら部屋で大人しくしてろ」

「え?あ、ありがとう、ございます……」

「ふん!」



 ネアはぷいっと身体を反転させるとそのまま階を後にした。

イヴはどう反応していいか分からず、くるりと爆笑中のリオン達を睨んだ。



「なんで笑ってるの!」

「クハハハハ!これが笑わずにいられるかよ。魔物に塩対応されて落ち込むんじゃねえよ」

(キャハハ!嫌われてやんの〜)

(イヴちゃん面白〜い。ネアちゃん、お腹空いてたのかなぁ?ご機嫌ななめ〜?)

(ふふふ、落ち込む事ないわよイヴ。どうせ魔物と人族は相容れない存在なんだもの)

(ぐひゃひゃひゃ、かわいそうにイヴちゃん。どれ、じいちゃんがあのクモを退治してきてやるぞい)

(ガハハハ!イヴはあのクモに人型部分があるから落ち込んだのか?バカな奴だ!)

(そもそも意思疎通ができるからって仲良くできると思ってるのがもうイタイよね、あはは)

「落ち込んでないもん!リオン達のバカ!もう知らない!」

「あらら、拗ねちまったな。お前等もこっから自由時間だ」



 拗ねたイヴが当然の様にリオン用に案内された部屋に入っていき、他の連中にも呼ばれるまで解散を伝えると各々行動予定を発言する。



「そうね〜。私は生徒達を連れてこの中を探検するわ〜」

「えぇ〜、師匠さっきのネアさんの話聞いてました〜?人族に殺意マシマシじゃないですかぁ。フェルトも嫌よねぇ〜?」

「ん?僕は別に構わないよ。学院長がいるなら余程の事が起きても何とかなるでしょ」

「おっ、フェルトくんからの信頼は厚いみたいだね〜。頑張らなくっちゃね。さてさて、リヴァイスくんはいいとして、リノアくん達はどうする〜?」



 さらっとリヴァイスの意見は無視されるが、悲しきかな本人も慣れているのか腕を組み頷いている。

そんな無視したルベリオスはリノア達にも聞くが、彼女達は当然拒否。



「絶対嫌!もう疲れたから寝たい!リオンの側が一番安全安心!」

「儂もご主人様から離れたくないのぉ。また刺されたらかなわん」

「ん〜、分かったわ〜。じゃあイヴさんを呼んで行こうか〜」

「呼ばれたら念話するからな。行ってこい」



 部屋からイヴを放り出し、ルベリオスにパスしてリオンは部屋に入った。

魔力探知を行い、特に問題ない事を確認したリオンは時間まで惰眠を貪る事にした。


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