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スノーオーガを処理したリオンはイヴ達の元に戻るとそこには戦闘は終わったにもかかわらず騒々しかった。
全員が視界に入ると何故かワムちゃんが押さえ付けられていた。
ピクリと反応したリオンは広範囲に殺気をばら撒いて声を掛ける。
「何してんだテメェ等、俺のワムちゃんから離れろ」
「リ、リオンッ!?こ、これは、ち、ちがうの!私は悪くない!」
「くぅぅ、リノアさんの言う通りだよ!これはこの人を守るため、って気絶しちゃった……」
「と、とりあえず、この威圧をやめて〜」
リオンの殺気による威圧下でも辛うじて発言できた3人、即座に保身に走るリノアと元凶を指差したイヴ、現状説明するため落ち着く様促すルベリオスだ。
各々の主張をとりあえず無視して他の奴等の状況も確認する。
ワムちゃんは早々に解放されリオンに巻き付き可愛らしく鳴いていてオピスが慰めている。
傷ひとつ負ってない事を確認して次へ。
エリーゼ、フェルト、リヴァイスはリオンの殺気による威圧で膝を付き苦しそうに意識を保っている。
ウピルは腹にデカめの装飾品、違った、剣がブッ刺さってる。
よく腹に剣を埋める奴だと感心しながら状態を見るも、意識はあり、出血も殆どない、重要器官の損傷もなし。
とりあえず放置。
最後の奴等に目を向ける。
全部で10人の暫定敵対者。
イヴが指差した唯一の女。
豪奢な真紅のドレスを着た檳榔子黒の髪、尖った耳、仰向けで気絶しているが腰ら辺から見える小さいコウモリの様な翼膜。
他の9人は男、全員執事服に尖った耳、腰の翼膜は見えないが関係者で同族だろうと判断。
そこで漸く歩き出したリオンはウピルに近寄り、腹から出てきた髑髏、テースタによりウピルの腹に刺さった剣は抜かれ、ポーションをぶっ掛けられ治癒された。
「コイツ等はお前と同じ吸血鬼族だろ?お前恨まれてんのか?笑える」
「ぐッ!!わ、笑えんよ……ゴホッ!だ、だが、ご、ご主人様、助かったわい。確かに同族に見えるが……儂はこんな奴等は知らぬよ。そもそも儂には幼い時の記憶が無いのじゃ。こうして元の姿になって漸く奴隷時代の記憶がぼんやり戻ってきたくらいじゃからなぁ。それでも他人の人生を俯瞰して体験しておる様な朧げなものじゃがな」
「なるほどな。ならコイツ等はお前が属性マシマシの幼女になった元凶っつうことだな」
「ふむ。まあ、そういう事じゃな。じゃが全員が関与していたかどうかは分からんがな。しかもそれももう終わった事じゃて」
「ん?どういう事だ?」
「最初はそこらの執事さん達が保護しようと話が進んでたんだけど、その女性が突然襲い掛かってきたんだよ。ワムちゃんはウピルさんを守るために行動したんだよ」
2人の会話に威圧から回復したイヴが合流し、顛末を語った。
まさかのワムちゃんの活躍があったのだと知り、オピスやツバサがワムちゃんを褒め称えている。
あとで自分も混ざって火が出るくらいヨシヨシするんだと決心したリオンは、とりあえず気絶した連中をひとまとめにして多少強引に意識が回復させた。
ごすごすと何度目かの衝撃が加わって漸く目を覚ました吸血鬼族一行はリオンの登場に再度驚愕しつつ、今度は気絶せずに大人しくこちらの話を聞いた。
「テメェ等はどこの誰でなんでここに来たのか説明しろ」
「キシャッ!キシキシッ!キシシシシ!!」
伏せをしながらリオンが意識を回復させた吸血鬼族一行を見下ろしながら詰問する。
そしてそんなリオンの首に巻き付きながらリオンの真似をするワムちゃんにリオン一派はほっこりする。
吸血鬼族一行は顔面蒼白になりながらも気丈に振る舞い、リオンから視線を逸らさずに受け応えする。
先ずは筆頭執事ポジっぽいロマンスグレーが口を開く。
「我々がこちらに伺ったのは、そちらにいらっしゃるウピルサヴァンシア・エトヴァス・エードレス様をお迎えにあがったのです」
「は?ウピル……サヴァンシア〜?アレはお前等と同じ吸血鬼族だよな?アレはなんだ?」
「「「「不敬だぞ貴様!!!」」」」
突然のフルネームサプライズにリオンと他一行が怪訝な顔をしながらウピルを見ると、本人も分かっていない様でキョトンとしている。
そんな行動が癇に障ったのか相手側の連れの若めの4人が激昂した。
リオンがその4人を視界に入れると間髪入れずにロマンスグレーが一喝して頭を下げた。
「黙りなさい!……部下が大変失礼いたしました」
「クハハ!気にすんな、若気の至りってやつだろ?」
「寛大な御言葉に感謝します」
「それで?アイツはお前等のなんだ?なんでここにいる」
「それではわたくし達のこと、それとウピルサヴァンシア様の事についてお話しさせていただきます」
それからロマンスグレーはウピルの出生から語り始めた。
ちなみに真紅ドレスの女は未だにウピルを睨んでた。
昔も今も吸血鬼族は人々から畏怖されており、その際たる理由は『殺したら呪われる』というもの。
そうした理由から各国の対策としては奴隷を使い、相打ち覚悟の特攻を有効打として実行していた。
その結果、時間も掛からず吸血鬼族の国が滅ぼされ、生き延びた者達は散り散りになった。
そんな中、ウピルと真紅ドレスの女、アドレアの姉妹は現存する吸血鬼族唯一の王族であり、そんな彼女達が避難したのがこの森であった。
既にエルフはおらず魔物が支配していたこの森だったが、意思疎通が可能な【陛下】と呼ばれるキマイラに助けられ、現在まで共存していると。
吸血鬼族の歴史が終わり、リオンがルベリオス達を見ると優雅なティータイムをしていた。
そこからすぐにロマンスグレーは話を続けた。
ウピルの話になり、元は双子で片子は【色落ち】と呼ばれるアルビノだったこと。
双生児の片子【色落ち】はもう1人の片子に全てを奪われ双生児とも長生きできないこと。
それは防ぐためウピルに禁呪を施し成長を止めたこと。
しかし忽然と姿を消してしまい、今もウピルを探していたと。
そんな中、陛下の魔法により映し出された像にウピルの姿を発見して今にあたるらしい。
大まかな説明が終わった事で色々な謎が明らかになったが、リオンは特に興味なさげにウピルに顔を向け結論を彼女に問うた。
「だってよ?お前はどうしたい?」
全員の視線がウピルに向かい、本人も少し何かを考えながら視線を巡らせる。
一周したところで再度リオンに視線を固定し口を開く。
「ふむ。何も変わらんぞ?儂はご主人様に救ってもらいご主人様のものになったのじゃ。死ぬも生きるもご主人様の意向に沿うぞ。まあ幼子の時に救ってくれたお主等には感謝しておるが、それはそれじゃ。それにお主等には既にそこの女王がおるじゃろ?しかも既に其奴には腹を刺されておるし、隙あらばまた刺されそうじゃしな。カカカ!」
あっけらかんと言うウピルに絶句する執事達とアドレア。
対してイヴ達はホッとした表情をしている。
その表情はリオンには理解できないが、ウピルが選択した事にぐちぐちと口を出す事はない。
9割近く面倒臭いという理由だが、話が終わったのなら残りの問題を片付けるだけのリオンは既にワクワク気分だ。
しかしそんなリオンのワクワクは1人の執事により数秒足止めされる。
「ウピルサヴァンシア様!!何故ですかッ!!我等は貴方様の導きが必要なのです!!!そのような獣の元では幸せにはなれません!!是非我々と共に参りましょう!!」
「死ね」
ロマンスグレーが遮る間もなく癇癪を起こし、喚き散らした執事が突如爆ぜた。
リオンを獣呼ばわりした執事に対して不機嫌になったイヴ達も彼が爆ぜた瞬間にリオンを凝視し、咎める視線や言葉が飛び交うが本人はどこ吹く風。
だがウピルを除いた吸血鬼族は仲間が爆ぜた事に動揺しつつもリオンに逃げる様に詰め寄る。
「いかん!早くお逃げ下さい!呪いが発動します!」
「ん?呪い?あれか?ほほう」
リオンが爆ぜた執事の場所を凝視する。
そこには黒い靄がふわふわと浮いていたが、狙いが定まったかの様にリオンに突進してきた。
興味深そうに観察するリオンを守り、邪魔な人壁が築き上げられていくが、イラッとしたリオンにより即座に左右に解散する。
ものの数秒で黒い靄がリオンに直撃、常時展開中の光の障壁をすり抜けスゥーッと体内に入っていった。
全員が驚愕する中、リオンは体内に意識を向けつつ脳内会議を始める。
(どうだ?)
(わたしは何も感じな〜い)
(オピスと一緒でわたしも感じな〜い)
(私も問題無いわね。むしろ極々微量に魔力回復効果があるのかしら?ちょっと気分が良いわね)
(ロンとブロブは……聞いても意味ねえな。テースタはどうだ?何か感じたか?)
(むぅ。今回死んだ奴が若くて呪いが弱過ぎてお主が即座に無効化してしまったわい。もう少し我慢せいバカ者が!)
(え?なんで俺が怒られんだよ)
(リオンは我慢できない困った子だもんね〜)
(そうそう。わたしがいないとなーんにもできないんだから〜)
(リオン、我慢できない子は嫌われるわよ)
途端に脳内ではリオンをバカにする会話が飛び交い、肝心のテースタの話が遮られる。
だがすぐに叱責はしない。
リオンは学んだ。
反応せず暫く勝手に話せば自然に落ち着くと。
周囲ではリオンを心配して群がる奴等も無視しながらリオンは脳内が静かになるのを待った。
すると学んだ通りに、各々飽きたのか満足したのか脳内が静かになったのでその隙を見逃さずリオンがテースタに声を掛ける。
(それで爺よ。結局この呪いの効果はなんだったんだ?)
(んあ?まだ居たんか)
(そりゃ俺の身体だからいんだろ。で?分かった範囲で教えろ)
(ふむ。こりゃなかなか面白い呪いじゃぞ?今回のは【即死】【猛毒】【麻痺】【混乱】【恐怖】【身体能力弱体化】【精神弱体化】【耐性能力弱体化】【呪化蓄積】くらいじゃな)
(へぇ、確かに面白えな。【呪化蓄積】っつう事は吸血鬼族を殺しまくれば俺も死んだ時呪いをばら撒く存在になるっつう事か?)
(まあそうなるのぉ。どの程度の威力かは死んだ時にしか分からんがの)
(そりゃそうだ。クハハ!いいなそれ。コイツ等に興味が湧いてきた。ちなみに俺以外がくらうとどうなる?)
(ふむぅ、そうじゃのぉ……。イヴちゃんとルベリオスちゃん以外は【即死】が効くかのぉ。ひょっとしたらリノアちゃんも耐えるかもしれんのぉ)
(こんなガキが死んでも中級冒険者くらいは呪い殺せんだなぁ。そら吸血鬼族は滅ぼされるわな。だがそれでも一体に対して発動する呪いは単体なのか?)
(そこまではワシも知らんわぃ。そこにおる奴等に聞けばいいじゃろうて)
(たしかに〜)
そんな事を話していると周囲がやたら騒がしい事に気付き、そういや無視していたとリオンが視線を目の前のイヴに向けた。
呪いの事は後でロマンスグレーに聞く事にして一旦頭の隅に保管。
「問題ねえよ」
「ほんとッ!?ほんとに!?……吸血鬼族の呪いは生まれた時から蓄積させる呪術で死に際に発動するものらしいから相当強力だって話なんだけど……」
「クハハハ!大した事ねえよ。そんな事より今は先に進もうぜ。コイツ等に道案内させてな」
「むむ、まあリオンだから大丈夫か。うん!行こう」
イヴは思考をぶん投げて捨てると、満面の笑みを浮かべながらリオンに抱き付く。
そんな様子にアドレア達は驚愕するが道案内と言われ、我先にとロマンスグレーが手を挙げた。
リオンが任せようとするが、それを遮る様に空から獣の声が響き渡る。
先程から中断が多い事に不満気なリオン含め、一斉に空を見上げる。
しかしそんな気分の中、一変してリオンが一際嬉しそうに口角を限界まで引き上げながら言葉を垂れ流す。
「感動の再会だな鳥野郎」
上空には上半身が金色、下半身が銀色のグリフォンがピィィと鳴きながら降下してきた。




