伝説の賢者マーリン~⑫
アルベルト達の装備も最終調整を終え、いよいよジョゼルの待つ迷宮への挑戦を開始しようとした処でマーリンからの待った!が掛かる
『装備の問題も解決したし戦い方も基礎の部分は十分じゃ。』
「なら問題ないじゃない」
『いいや。此処まで仕上げたのに魔法の基礎を学んでおらんと言うのは聊か納得がいかんのじゃ」
「でも、ジョゼルも待ってるし・・・」
『なに、大した時間は掛からん。と、いう訳で≪マーリンのドキドキ魔法教室、ポロリもあるよ≫の開催じゃ』
「ポロリって何よ!ポロリって!!」
何故か妙な勢いを持つマーリンの言葉に突っ込みを入れたエリザベス。とは言え魔法戦士でも魔法寄りの彼女にしてみれば伝説の賢者が教えてくれる魔法の基礎と言うのも、それはそれで興味があったりする
「まぁいいわ。青マッディ君にも教わったけど聞いてあげない事も無いわよ」
「ん・・・興味深々」
「はぁ~後でジョゼルに何言われるか・・・」
結局、目の前の婚約者には敵う訳が無いと諦めの境地のアルベルト。 しかし後でジョゼルにお小言を言われるのは目に見えている為、憂鬱な表情で渋々授業を受けるのであった
『先ずは魔法の基礎の基礎、【魔力操作】についてじゃ。』
「あら、そんなの皆持ってるわよ!?」
『ほっほっほ、そこが素人の考えじゃ。スキルを持っているのと使いこなしているのは別問題だと学んだはずじゃぞ?』
マーリンの言う基礎、スキル【魔力操作】に関しては三人ともとっくに持っており、エリザベスは馬鹿にしたように反論するのであった。 しかしマッドレンジャー達との修行でスキルとは使いこなす事が大事であり、その為に必要な知識や基礎体力も大事になっている事を学んだはずなのだが、近接戦闘と違って魔法の場合は実際に発動してしまう為、あまりその事に気付く者は少なかった
マーリンの言う通り、【魔力操作】のスキルを持っているだけの魔法と【魔力操作】使いこなしている魔法では威力と展開速度に差が出るのだが、此処にいる三人は元々魔法の適性が高かった為その事に気が付けないでいたのだった
『先ずは基本に帰って魔力の移動と循環から始める』
「え~今更?飽きる位繰り返してるわよ」
「まぁまぁ。取敢えず言われた通りやってみようよ」
始めは乗り気だったエリザベスだが元々こういう繰り返しの基礎訓練は苦手な方だ。 結局一番乗り気では無かったアルベルトが何とか宥めて三人共意識を体内の魔力に集中させていく
下腹部に有る丹田という処から心臓へ、そこから頭や四肢へと分割しながら、なるべく円滑に循環するように魔力を操っていく。 更には徐々にそれが洗練され力強くなるように魔力を操る
『うむ。流石にみな文句のつけようも無いの』
「当ったり前じゃない!」
「でも何か理由があるからやらせたんでしょ?」
『そうじゃな。では儂の魔力操作を見せるとするかの』
そう言ってフヨフヨ浮いたままマーリンが自身の身体に魔力を込めて循環させる。アルベルト達が徐々に循環する魔力を高めていったのに対しマーリンが行ったそれはいきなり最高レベルの魔力が流れ出す。しかもその速度が三人と比べると比較にならないほど早い
「なっ!何よそれ!なんでそんなに・・・」
『ほっほっほ。逆にも出来るぞ』
今度は非常に弱々しく、しかも殆ど止まっているのではないかと言った速度で魔力を循環させていく。
『更にじゃ!こんな事も可能じゃぞ!』
「ん・・・吃驚」
体内だけで循環させるのではなく、右手から放たれた魔力を左手で受け止めそのまま体内を循環させてみたりとマーリンは正しく己が意思のまま、自在に魔力を操ってみせた
「これが本当の【魔力操作】・・・」
「フ、フンっだ!それが出来たからって何だっていうのよ!!」
「いや、だから威力の向上と展開速度が上がるって言ってたじゃない・・・」
「・・・」
よっぽど悔しかったのか負け惜しみをいうエリザベスだったがアルベルトの冷静な突っ込みを受けて沈黙してしまう
「ん・・・教えて」
『善き哉善き哉。先ずは魔力とはなんなのかを理解する事じゃ。』
「魔力って・・・空気中に漂ってるコレの事じゃないの?」
『うむ、アルの言う事も間違ってはおらん。しかし儂が言いたいのはそう言う事では無いのじゃよ』
優れた魔法使いならば空気中に漂う魔力の流れを見る事が出来る。それを視認できるかどうかは然程問題では無いのだが、やはり視認できた方がイメージとして掴みやすい。その為優れた魔法使い達は魔力という物をある程度認識した上で魔法を行使している
しかしマーリンの言いたい事はそうでは無かった。アルベルトの言う魔力を認識するだけではマーリンの境地に辿り着くにはまだ足りないのだ
『例えばじゃ。炎を見てそれを魔法にしようとするには火を見た事が無い者が魔法として発動させるよりも効率はいいじゃろう。しかし火が燃える理由、どうしたら温度が上がるのかと言った事を知っている者が行使する魔法の方がより効率が良くなるのじゃよ』
「つまりは魔力そのものを理解しろって事?」
『そう言う事じゃ。魔力とは不思議な物でな、粒子であり流れでありエネルギーでもあるんじゃよ』
「つまり、どういう事だってばよ?」
「べ、べス!?」
まるで理解していないエリザベスの頬には不思議な三本髭がうっすらと浮かんでどこぞの忍者の様のになっていた。 それを見たアルベルトはマーリンの言葉そっちの気で驚く
「ん・・・魔素!?」
『おっ、流石は始祖の一族じゃな。』
「どういう事?」
『魔力とは魔素やマナと言った小さい粒の集合体じゃ。魔素やマナは流動的でその場に留まるという事をしない。そしてそれらが流れる事によって魔力と言う名の云わばエネルギーとして存在しておるのじゃ。その流れ方や波形によって属性と言ったものが付与されたりする訳じゃな』
「つまりは、・・・」
「いや、べスもう良いから!!・・・つまり魔力を循環させるのではなく魔素をイメージすればいいの?」
『そうじゃ。魔素を移動させるイメージを持つ事で自ら魔力を作り出すのじゃ』
マーリンの言う【魔力操作】とは体内や空気中の魔力を操るのではなく、更にその最小の単位である魔素やマナと呼ばれる物を動かす事で自らのイメージ通りの魔力を作り出し操る事を主眼としていた。 その結果、例えば火系の魔法であれば魔力を集める時点で火系統の属性を付与した魔力を使用でき魔法の展開速度や威力に差が出るのだ
「ん・・・こう?」
「綺麗な闇色だね、流石ヴィク上手だ。それじゃこれでどうだ」
「ん・・・綺麗な光」
「じゃ、じゃあ私の番ね・・・えい!」
「「・・・」」
『ほっほっほ。要練習じゃな』
ヴィクトリアは自身が得意とする闇の魔力をあっさりと作り出して見せアルベルトも負けじと光の魔力を作り出す。 しかしエリザベスが操った魔素は綺麗な魔力に成りきれず濁った妙に歪な流れの魔力にしかならない
本来魔法神に愛されているエリザベスが一番得意そうなのだが、魔法使いらしくない脳筋な彼女には難しかったようでマーリンにも練習の必要性を訴えられていた
「ムッキィ―!なんで上手くできないのよ!!」
「べス落ち着いて。ほら見てごらん!?」
「あ、判りやすい!そうなってたのね」
アルベルトが器用に魔素を操り球状の魔力を造りだし拡大版の魔素の流れを判り易く示す。 それを見たエリザベスはやっとイメージできたのか先程までの歪な流れの魔力では無く綺麗な流れにはなっている
「ってなんで濁ってるのよ!!」
「お、落ち着いてべス。じゃないと・・・」
「ボンッ!」
エリザベスが操っていた魔素が軽く暴走し小さな爆発を起こす。派手な音と煙の割には爆発の威力はそこまで無く、煙が晴れた先には唖然としたエリザベスが立っていた
『プッ!』
「な、何よ!!なんか文句ある!?」
「い、いや、プッ!な、何でも無いよ。大丈夫!!!」
「プッ・・・アフロ」
「ちょ!ヴィク、プッププ!駄目だよ」
三人が笑いを堪え切れずに吹き出しながら、しかし目線は引き付けられるようにその上方へと集中してしまうのは仕方がないだろう。 王族の証でもある白い肌と綺麗な金髪は所々煤が付いて黒ずんでおり、しかもこの世界ではめったに見られない金髪アフロ、しかし何故か王族としての気品だけは失わないその姿にどうしても三人は笑い堪える事が出来ない
「旦那様!!いつに成ったら・・・ってエリザベス、その頭はどうしたのじゃ?。ハッ!?もしやそれが今の流行の髪型なのか?だから旦那様は妾の元に来てくれんのか???」
「な、何よコレ!!!」
待ちきれなくて乱入してきたジョゼルが三人が必死に隠していた事を暴露してしまい手鏡で自身の髪型を見たエリザベスにも金髪アフロがバレてしまう
「もうやだ!そうやってみんなで笑ってたのね、許さないんだからこのバカベルト!!」
「わー!ぼ、僕が悪い訳じゃ・・・」
「五月蠅い!黙ってやられれば良いのよ!!!」
『おっ!今のは良い魔力操作だぞ』
「ん・・・怪我の功名」
「ちょ!二人ともべスを止めてよ!!!」
マーリンのドキドキ魔法教室はポロリこそなかったものの、アルベルトの犠牲をもって三人とも【魔力操作】の極意を身に着ける事に成功したのであった
次の回でジョゼルのダンジョンに挑戦!・・・するかも?
読んで頂いて有難う御座います




