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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第三章 少年編
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伝説の賢者マーリン~⑩

「どれも儂らの技術の粋を集めた自信作だ。好きな武器を選んでくれ」


「いや、好きな武器って言われても・・・」



 ドワーフ達との打ち合わせの会場に案内されたアルベルト達一行は自信満々に宣言するテンゲンとその会場の熱気に呆気にとられて言い澱む


 抑々、打ち合わせとしか聞いていないのに何故かこんな広い会場に案内された上にまるで展示会の様な会場の広さと、これでもか!って感じで並んでいる武器や防具の数に圧倒されてしまっているのだ



「あの、テンゲンさん。僕の武器だけでもこんな数・・・聞いてないんですけど!?」


「いや~なんかやってるうちに熱が入っちまってな。思わず造り過ぎた上に領主さん用の武器はやっぱり倍率が高くてな、まぁ少ないよりはいいだろ?」



 倍率と言う言葉に若干の引っ掛かりを覚えたアルベルトだが、おそらく酒絡みだろうと自分を納得させて領主用と書かれた看板の掲げられた台の上にある武器を眺める。 アルベルトの予想は当たっており彼に選ばれた武器を造った工房には全量の三割に当たる酒が分配される事になっている。 更にアルベルト本人に選ばれなかったとしても他のメンバーが気に入れば人数に応じた分配があるとあって人気が高かったのだ


 とは言え、領主用という事もあってドワーフ達の基準を満たした者だけが参加しており、品質はどれも折り紙つきであった



「う~ん悩むな・・・どれも間違いない品質だよ?」


「当たり前じゃ。儂等の中でも特別な腕を持っている者だけが参加を許されておるからな。後は・・・そうじゃな相性じゃよ。剣がお主を呼ぶ声に耳を傾けるが良い」



 テンゲンの言い様では剣がアルベルトを選ぶと言った感じであった。 確かにお伽話では剣を持つ資格を求める剣の話は良く出てくる。 台座から抜く事が可能かどうかで選別する聖剣や強力な呪いの効果を持ち自ら認めた相手以外は破滅する邪剣の話が有名だ


 しかもテンゲンの言葉には、アルベルト本人が剣に選ばれなければ、それまでと言ったニュアンスも含まれており彼の実力も同時に試されている事を示唆していた



「ん・・・これがいい」


「私はこれね。確かに呼ぶ声が聞こえたわよ」



 悩むアルベルトを他所にエリザベスとヴィクトリアはあっさりと武器を決めてしまう。 彼女たちも領主の妻になる女性という事でそれなりの分配が約束されており二割と言う高い分配率が保証されている。 しかし、アルベルト用の武器の次に高い分配率の割に参加者したドワーフ達は少なかったようだが、その分並んでいる武器達は造ったドワーフ達の性格が現れた面白いものが多かった。


 抑々剣と違って切れ味や使用者の癖などが出ない打撃武器に求められる性能は元々少ない。 しかも単純な技量としては劣るエリザベスが使用するとあって求められる性能は頑強さとバランス調整のみであり作品を造る面白みにやや欠けるのかポピュラーな武器の割には参加したドワーフの数は少なかった


 元々、ドワーフ達にとってメイスと言う打撃武器を作成する事にはあまり魅力が無いらしく需要に対してドワーフ製のメイスと言うのはこの世界にあまり多くない


 しかしだからこそ只管(ひたすら)に頑強さという事に持てる技術の粋を集めて愚直なほどの努力で一つの性能を極める事に執着した参加者たちの意気込みと言ったものが感じられる武器が多かった。


 そしてヴィクトリア用の超近接武器の場合はメイスとは逆の理由で参加者が少なかった、拳闘士(モンク)という戦い方をする者は極端に数が少ない為ドワーフ達でさえ初めて造ると言う者達が多く経験といったアドバンテージが無いので参加した者達が少なかった。 しかしだからこそ未知の物を作成する事に挑戦する気概に満ちた参加者たちの武器は個性的で斬新な物が多く魅力溢れる物が殆どであった


 実にアッサリと武器を選んだ二人だったが、彼女たちが言う通り武器に呼ばれたからこそ決められたのでありそれが無ければ決めるのに時間が掛かっていたであろう



「う~呼ばれると言う感覚はあるんだけど・・・」


「ならばそれに決めればよかろう?」


「うん・・・でも皆が声を掛けてきてるんだよね」


「なんじゃと!?う~むこの数全ての武器がお主を認めておるという事か・・・」



 普通はアルベルトの様に複数の武器が主を求めるという事は少ない。 抑々の話、武器との相性と言うのは何も優秀な武器に限った話では無い。 使用者の実力と武器の性能に有った場合には頻繁に起こる事である。 よくいう「妙に手にしっくり来る」とか「愛着が湧く」とかいった感想程度の話が実はそう言う事だったりする


 今回はドワーフ達が精根詰めて造った、正に作品と呼べる武器達でありその品質の高さ故に使用者を選ぶと言った感覚が強いが、基本はやはり相性と言える物なのだ。


 その優れた武器達がアルベルトに使って欲しいと嘆願している様を、ドワーフと言う武器職人達だからこその驚きと共に今迄線の細い若者だと見誤っていたという事をテンゲンは気付かされる



『アル、この二本にしておけ。一本は予備でも良いし二刀を使っても良いが、兎も角この二本が一番都合がいい』


「ん~じゃあこの二本にするよ」


「理由は?何か決め手が有ったのか?」


「勘?」


「そうか・・・いやそれも馬鹿に出来ん理由だな」



 目の前に並ぶ武器を目に【鑑定】していたマーリンがアルベルトにアドバイス・・・と言うかほぼ決定事項として伝える。 アルベルト本人も理由を聞きたかったのだが公衆の面前でもある訳だしそれは不可能だった。


 ドワーフ達の長としての質問では無く職人としての興味であろうテンゲンの問であったが、マーリンの事も有りアルベルトとしては曖昧に答えるしかなかった。


 だが、テンゲンの言葉からよくある理由だと知り、冒険者たちが装備を決める要素としては珍しい物でも無いという事を知ったのだった。 案外存在は気付いていなくともそういった理由を述べた者達は自身を守護する守護霊の囁きが勘と言った表現になっているかもしれないな、とアルベルトは不思議な気分になるのであった



「武器が決まれば防具も簡単に選べる筈だぞ」


「そうなの?」


「おう、使用者の相性といった他に武器との相性もあるからな。お前たちなら防具の声も聞こえるだろ?」


「あ!ホントだ・・・ってフルプレートじゃない!?」


「ん・・・順当」



 先程と同じように二人にはあっさりと防具の方も決まった様であった。 ヴィクトリアは拳闘士らしい軽量な革製、しかし所々金属で補強された物に乞われた様だ。 部分鎧と言ってもその皮は強力な魔物の物であり下位とはいえ竜種の物で、更に補強で入っている金属はミスリルを秘伝の製法で合金化した強固な防御力を誇る為、下手な金属鎧よりも性能の高い物であった


 逆に意外な組み合わせになったのがエリザベスで、本人も魔法使いだった時の感覚が残っているのか金属製のフルプレートという事に驚きを隠せていなかった。 金属は魔法使いにとって相性の悪い物の一つだ。 身に着けると魔力の流れが阻害される為で魔法の発動に支障が出る。 逆に魔力の流れを阻害しない金属では魔法を防御する能力が極端に落ちる為に性能に不満が残る。 その他にも単純に魔法使いの場合体力の問題が有るので重いフルプレートを身に着けることは殆ど無いと言っても良かった



「ほう、面白い鎧に選ばれたな。この鎧は内側に魔法伝導率の高い金属を、外側には逆の性能の金属を張り合わせたものだ。重さの問題はあるが魔法戦士と言った戦い方には向いているかもしれんぞ」


「ふ~ん、まぁいいわ。折角声を掛けてくれてるんだから相性がいいんでしょ」


『まぁ心配するな。儂がチョイチョイっと最終調整をするからの』



 カラカラと笑いながらマーリンが太鼓判を押した事でエリザベスも納得して防具を選んだのであった



「また沢山あるんだけど・・・」


『まぁどれも性能は大差ない。デザインで決めていいぞ』


「ん・・・これがお気に入り♡」



 またしても複数から声を掛けられたアルベルトだがマーリンの言葉も有り、ヴィクトリアがお気に入りのデザインにアッサリと決める



「あとは・・・アクセサリじゃな。こっちの魔法の腕輪、まぁ杖代わりに使えばいい。あとは素早さを上げるブーツと、そっちの嬢ちゃんは魔法の威力を高めるサークレットなんかがお勧めだ」


『ほう、こっちは中々じゃが・・・う~む何故アクセサリにこれが出来て武器や防具に出来んのか不思議じゃな』



 誰用と言うのではなく効果別に置いて有ったアクセサリをテンゲンが選んで手渡していく。 それをマーリンは不思議そうな表情で【鑑定】していくのだった


 彼が不満に思っていたのは武器や防具に魔法効果・・・つまりエンチャットの類が一切されていない事であった。 【鑑定】の結果を見ればエンチャットする為のスロットには十分な空きがありそれなり程度の実力の錬金術師であっても簡単な物であれば十分に成功させることが出来る物ばかりだった


 しかしドワーフ達の造ったアクセサリにはエンチャットが掛けられているものの武器や防具にはそれを試した様な痕跡すら残っていなかったのだ。 装備としての品質はマーリンが生きていた頃と比べても勝るとも劣らない品質を保っている。 しかしエンチャットが何もされていないのであれば、彼の生前に存在していた武器と比べると大幅に性能が落ちてしまうのだった




『まぁその辺りは追々調べるとして、先ずは・・・ムフフ楽しくなってきたぞ』


「マ、マーリン!?程々にね」


『判っておる。そう心配しなくても大丈夫じゃて・・・じゃが事は身の安全に繋がるからのちょこっと位は問題あるまいて』



 自らの頭上で不穏な空気を醸し出し始めた守護霊に小声で自重を促すアルベルト。


 だが、それで終わらないのがマーリン(伝説の賢者)がマーリン(やり過ぎ賢者)たる理由であろう。


 呆れとも諦めとも取れる溜息を漏らすアルベルトであった・・・


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