伝説の賢者マーリン~⑨
遅れてすいません・・・
エリザベスが予想外の適応を見せた事でアルベルトと二人の婚約者のパーティはかつて類を見ない程の圧倒的な攻撃力を手に入れることに成功した
マッドレンジャーたちとの模擬戦も一対一ではもはや修行にも成らず、五対三のハンデ戦でようやく・・・いや最早マッディ君達では彼等を倒す事などほぼ無理といった処までアルベルト達は成長していた。
通常、冒険者たちはバランスを重視したパーティ編成を目指し、殲滅力よりも確実性や安全性を重視する。 一般的な編成では、前衛に重武装の戦士を、後衛には回復役を必ず配置する。その上でアタッカーや魔法使いといったダメージディーラーを複数置く事が多い。
マッドレンジャー達も赤マッディ君を中心に防御を固め、桃マッディちゃんが回復を担っている。 その上で軽戦士の黄マッディ君、更には格闘家の黒マッディ君、魔法使いの青マッディ君とどちらかと言えば攻撃的な編成でパーティを組んでいる
これは戦術面での好みの問題で、回復役を増やした編成や重武装の戦士を複数配置するパーティもある。
「よ~し、今度は僕が中央だ。べスは右から、ヴィクは左から攪乱してみて」
「ま゛~」
アルベルトは自分たちのパーティの可能性を探る為、位置を入れ替えながら模擬戦を繰り返しており、付き合わされるマッドレンジャーの面々は流石に辟易してきたのか、悲鳴に近い声を上げていた
「ケースⅢ。正面戦闘!!」
「ん・・・突っ込む!」
アルベルトが宣言したのは連携の種類を複数作っておく事で様々な場面に対処するために三人の連携を頭に叩き込むための物だ。 こうしておけばいざと言う時に短い宣言だけで三人での連携が即座に展開できるのだ
『ほっほっほ。戦いは何があるか判らん物じゃ。様々な場面を想定しておくのは悪くない方法じゃな』
「「ま゛ーーー」」
模擬戦の様子をフヨフヨ漂いながら見つめるマーリンは満足そうであった。 いつもなら「こうした方が良い」とアドバイスするのだが、今回のアルベルトの行動は自分達で考え出した物だ。 その為弟子の成長を見ている様で非常に愉快な気分になっているのだ
尤もそれに付き合わされているマッド―レンジャーの面々は溜まった物では無く、先程からアルベルト達の攻撃力に圧倒される一方なのだ
「ま!」
「ま、ま゛!。まっまま゛」
「ま゛~!?」
通常通りの役割では、赤マッディ君が攻撃を受け止める筈だがアルベルト達の攻撃を一人で受け止めるのは非常に難しい。 その為、アタッカー役の黄マッディ君もハルバードにプレートメイルと装備を変更して戦士役を務めている
回復役の桃マッディちゃんを後方に下がらせて回復に専念させ、青マッディ君が補助魔法でタンクの二人の体力と防御力を底上げさせる。 黒マッディ君は素早い動きでアルベルト達の攻撃の隙を突く様にタンク役の影に隠れるようにしながら機会を覗う・・・完全な防御態勢を敷いたマッドレンジャー達の鉄壁の布陣であった
しかし・・・
「光の矢八連!!いっけぇ~!」
アルベルトが無詠唱で発動させた魔法の矢が赤マッデイ君へと凄まじい速度で迫る。時間差で迫るその魔法は軌道をそれぞれ変えて、赤マッデイ君の動きを完全に封じ込め防戦一方に追い込む。 更なる追撃を繰り出す・・・と見せかけたアルベルトは体を入れ替えるとそのまま、エリザベスの攻撃を受け止めようとしていた黄マッディ君へと長剣を突き出す
「ま゛!?」
エリザベスの強力な魔法攻撃に備えていた黄マッディ君は、横合いから突き出された剣を辛うじてハルバードで弾くが、更に反対側から忍び寄ったヴィクトリアの掌底に吹き飛ばされる。 ヴィクトリアは独自に工夫した闇魔法で自らの気配を消し去り更には幻影を以って攪乱する為その位置を把握するのが非常に難しい
「どっせぇい!!」
「ま~~~!」
王女らしからぬ気合の叫びと共に繰り出されるメイスが吹き飛ばされた黄マッディ君に止めを刺す。
「次!」
「了解よ!」
アルベルトの求めに応じてエリザベスが繰り出したのは氷雪の嵐。 複合魔法でもあるその魔法を易々と繰り出したエリザベスはそのまま氷雪の嵐の中に突っ込む。 通常ならば自ら作り出した魔法であろうともダメージを喰らう筈だが、同時に魔法に対する抵抗力の高いエリザベスは自分の抵抗力を考慮した威力の魔法に留めている
そう、エリザベスが氷雪の嵐を作り出したのは目晦ましの為の意味合いが強い。 圧倒的な攻撃力を、各個人でマッディ君一人を倒す力量を持ちながらも三人で確実に敵の数を減らす行動の為の布石なのだ。 その為だけに複合魔法を用いて完全に気配を消し去る三人だった
「ま~」
「え!?もうギブアップなの?」
マッドレンジャーのリーダー、赤マッディ君が大剣の先に着けた白い布を振りながらアルベルトに降参の意思を示す。 アルベルトは不満そうだが正直手も足も出ません!ってのがマッドレンジャー達の本音なのだ
この一週間で繰り返される魔法戦士三人との模擬戦。 初めの内はそれでも辛うじて互角の戦いを繰り広げれたのだが、アルベルト達が各個撃破の戦い方にシフトしてからは勝率は落ちる一方だった。 更に三人が三人とも自分達独自の工夫を仕掛けて来るのだから溜まった物では無い
「う~んしょうがない。ちょっと休憩しようか」
「ま・・・」
休憩では無く模擬戦自体を辞退したい赤マッディ君であったが、アルベルトに無邪気笑顔でそう言われては頷くしか出来ない。 仲間の元に戻った赤マッディ君は他のメンバーに責められる
『アルよ、午後からはテンゲン達との打ち合わせがあるぞ』
「えっ!?今日だったっけ?」
「ん・・・違うはず」
『いや予定では先の話じゃったのだが、何やらドワーフ達の気合が高過ぎての・・・』
マーリンが言った言葉に驚くアルベルト。 幾ら模擬戦が楽しくともドワーフ達との予定を忘れる程では無い。 しかし何やら複雑な表情のマーリンの言葉に酒がらみだな、と苦笑いを浮かべながら頷く
「ごめん、赤マッディ君。午後からの訓練はお休みにして貰えるかな?」
「ま゛♪」
「暫くはお休みになるかも知れないわね」
酒が絡んだドワーフ達をほっとく訳にはいかないと、謝罪を交えて予定の変更をお願いしたアルベルトだったが赤マッディ君・・・と言うよりマッドレンジャー達は渡りに船とばかりに喜んでその旨を了解するのであった
更にエリザベスの予想にマッドレンジャー達は誰が見ても判る位に歓喜の表情を浮かべる
「そっか。べスの言う通りかも・・・折角楽しくなってきたのにな」
「ま゛!ま~まま、ま゛!」
「そうだね、ごめんね」
「アル・・・そこまで意思疎通できるのっておかしいわよ?」
ドワーフ達がこの時期に打ち合わせと言うのならば、おそらくは最終調整の段階まで来ているのだろう。 予定ではあと一週間後の筈であったが、酒を目の前にぶら下げられたドワーフ達は人参をぶら下げられた馬など比較にならない程の情熱を注いだのだろう
『酒が絡まんでもドワーフ達の装備に掛ける情熱は高いじゃろうな。三日は拘束されるかもしれんぞ?』
「ん・・・お預け」
一応は三人の体格や戦い方の癖等は既にドワーフ達に伝えているのだが、伝えた時に比べて三人の戦い方も実力も既に変わってしまっている。 基本的な部分は変わらないので問題ないだろうが最終調整で弄る部分が増えているのは間違いない
おそらく文句も言われるだろうが装備に関する事だ、難しい仕事になった方が喜ぶのがドワーフと言う種族なので文句を言いつつも問題は無いだろう
「じゃあ装備が出来るまでは模擬戦はお預けだね」
「ま♪」
「でも!装備が出来たら慣らしも必要だからまたよろしくね」
「ま・・・」
新しい武器が出来れば使用感を試すのは当然の話だ。 人間同士ならば実際の武装での訓練は危険だが、マッディ君達はマッドゴーレムなのだから本来は問題ない。 しかし伝説の賢者が魔力を込めまくった彼等は意思や感情と言った物まで獲得している
今でさえ殆ど歯が立たないと言うのに、ドワーフ製の、しかも個別に調整された彼等に相応しいオーダーメイドの武器を持ったアルベルト達との模擬戦が約束されてしまったのだ
先程までの歓喜の表情も消え去りすっかり意思消沈してしまうマッドレンジャー達・・・
『フム・・・しょうがないの。マッディ君達も改造しておくかの。ほっほっほ』
その様子を見たマーリンは独り楽しそうに笑うのであった
会社の同僚の身内に不幸があってそのフォローの為執筆の時間が厳しいです
今週中は投稿の時間がずれたり、二日毎の投稿が出来なかったりする可能性が高いです
おそらく来週には通常通りに戻れると思います・・・
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします




