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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第三章 少年編
84/179

伝説の賢者マーリン~⑦

少し遅れましたが書きあがったので投稿します


時間が無く誤字脱字のチェックが甘い・・・のはいつもの事なのでスルーしてください(笑)

 食堂では疲れを残していたアルベルトも、若さなのか翌日にはスッカリ回復しており修行に支障は無かった。 寧ろ二人の婚約者の戦い方に変化が出た事で彼自身にも思う処が有ったのか積極的に魔法を使い攻勢に出ている



「ちょっと!二人が模擬戦をやってるのになんで私だけこんな地味なことしなきゃいけないのよ!」


『そうは言ってもお主は【並列思考】を持っとらんじゃろ。先ずはそこからじゃよ』



 婚約者二人の戦い方といってもエリザベスはまだ基礎訓練を開始したばかりで模擬戦に参加できる程にはなっておらず、マーリンの指導の元地味な訓練を繰り返している。



「ったく・・・せっかく魔法神様が夢に出てくれたのに・・・」


『ほれ!またリズムが狂っておるぞ!!!』



 魔法戦士として戦う事を決意したエリザベスの枕元に魔法神が降臨して更なる加護と教えを残してくれたらしいのだが、何故か【並列思考】のスキルは授けてくれなかったらしく基礎訓練の内容を聞いたエリザベスは大いに不満を漏らしたのであった


 因みに今、彼女が行っている訓練は右手で正方形、左手で正三角形を空中に描く訓練でイライラする事間違いなしの内容である。 流石にこれが魔法戦士への第一歩になるとは思っていなかったエリザベスは中々信じる事が出来なかった様だが、魔法神様のお蔭でマーリンの姿も見えるようになった事もあり渋々その指導に従っていた



「ヴィク!僕が隙を造るから突っ込んで行って!!」


「ん・・・了解」



 エリザベスの焦燥を他所に模擬戦で連携を深める二人は魔法を織り交ぜた戦い方を模索していた。 今迄は自らが動き回る事により相手を攪乱していた部分を何とかして魔法で補えないかと考えているようだ


 アルベルトが無詠唱で放ったライトニングアロー(光の矢)が赤マッディ君の大盾に向かって行くと同時に間合いを詰めたアルベルトが死角から長剣の一撃を見舞う。 アロー系の魔法は各属性の初級の魔法だが発動が早く速度もなかなかなので牽制には持って来いの魔法だ


 しかもアルベルトが放った魔法なので威力も申し分なく赤マッディ君も大盾で防ぐしかなかった。 しかしこれまでの模擬戦の経験から赤マッディ君がその方法を取る事を予想していたアルベルトは彼の視界が大盾で塞がった一瞬で間合いを詰めたのだ



「ま゛!」


「か~・・・流石に硬いか!」



 だが、アルベルトの動きに気が付いた赤マッディ君は無理に躱そうとせず自身の鎧の防御力を信じてその攻撃を鎧の一番厚い部分で受ける事を選択する・・・が、そこにヴィクトリアの渾身の一撃が背後から突き刺さり衝撃を吸収しきれなかった赤マッディ君は敢え無く崩れ落ちる



「ん・・・いい感じ♪」


「ヴィクの身体強化、随分滑らかになったね」



 そう、ヴィクトリアもエリザベスに負けじと魔法を併用する事にしたらしいのだが、如何せんヴィクトリアの得意とする闇属性の魔法には攻撃力の大きい魔法が少ない。 抑々闇魔法は攪乱や幻惑に特化しており攻撃力で圧倒する魔法は極端に少なく戦闘中に直接ダメージを与えるのには向いていない


 今迄のヴィクトリアの戦い方は拳に炎を纏ったりする程度であまり魔法で直接攻撃という選択を取った事が無い。 その為折角の高い魔力を活かす方法は無いのか黒マッデイ君に相談した答えが身体強化であった



「ん・・・スキルじゃない所がお気に入り」


「そうなんだよね。スキル【身体強化】とは別物なのが驚きだよ」



 前衛職ならば一般的な【身体強化】のスキルだがヴィクトリアが新たに覚えたのはあくまでも魔法の身体強化であった。スキル【身体強化】は、発動後に一定のボーナス分のステータス上昇の効果が有るスキルだ


 ヴィクトリアの使っている身体強化魔法は任意の魔力を消費する事で一瞬だけ身体能力を上昇させるもので戦っている相手にしてみると急に動きが変わるので意表を突ける。 その上魔力依存なので使用する魔力次第で上昇分を操作できるので【身体強化】のスキルよりも上昇分が大きいのが特徴だ


 しかしあくまでも魔法であり発動するまでのタイムラグが有る為、タイミングを間違うと動きがバラバラになってしまう取扱いの難しいものだった。 それをこの短期間で、というか指導を受けて一時間で使いこなすヴィクトリアは流石に始祖の一族であり、その魔力操作の能力は一級品であった



「キィー!なんで私だけ!!!」


『ほれほれ、左手も四角になっておるぞ。ほっほっほ、これでは何時まで経ってもスキルは身に着かんじゃろうな』


「ムッカー!見てなさいよ~パッパって覚えて、その顔を驚愕に染めてやるんだから」



 威勢だけは良いエリザベスであったが既に両手が歪な円を描くだけになっており、マーリンが言う通りスキルの取得にはまだまだ時間が掛かりそうだった



 ☆△☆△



「バイマト!この酒は本当に美味い!これで即席というのが信じられん!!」


「はっはっは!量が少ねぇんだから飲み過ぎんなよ!」



 グラスの中の琥珀色の液体を一気に飲み干したテンゲンを嗜めるセリフを吐いたバイマトであるが、同じくグイッとグラスに入った酒を飲み干しながらなので説得力は皆無であった。 彼等の目の前にある酒樽は倉庫から運び出したマーリンが熟成加速の魔法を掛けた蒸溜酒が入っており、待ちに待った即席ではあるが一応の完成品でありセイレケの街に訪れているドワーフ達の熱望していた物だった


 今日は解禁という事も有って十分な量を用意しているが、明日以降は限られた量しかない為一人当たりだとグラスに一杯あるかないかの量しか確保できていない。



「最初は泥炭(ピート)の匂いの付いた大麦から造った酒なんぞ、と思ったがオーク樽の香りと相まって複雑な香りを醸し出しておる」


「まぁそれでもまだまだらしいぜ?やはりきちんとした熟成には敵わないらしいからな。しかも今飲んでるのは単一の樽の物だ。これを複数の樽の酒とブレンドすると更に上手くなるって話だぜ!?」



 シングルモルトとヴァッテッドモルトはどちらが優れていると言う話では無く好みの問題だとマーリンは説明したのだが、良く理解していないバイマトの説明は誤解を招きかねない物であった。 しかしマーリンの生きていた時代には当たり前の物だった蒸溜酒であるが、今の世界には存在しない物であり酒好き達にしてみればそんな物は誤差の範囲内であり間違いなく美味い筈という期待値だけが上昇していく



「しかしこれほどの酒がグラス一杯だけでは、ちと物足りんのではないか?」


「確かに。どうにか分配を増やせんのか?バイマトよ」


「俺も掛け合ったんだがな・・・どうも三年後にできる酒はこれよりも上手いらしくてな、今ある酒を飲めば三年後の酒が少なくなっちまうみたいなんだよ」


「う~む、悩ましいのう・・・」



 テンゲンだけでなく他の長老ドワーフ達も渡された酒の量に不満を感じているようだが、三年後に更に上手い酒になると言われれば目先だけで行動する訳にはいかない。 なにせ三年後に流通量が減ってしまったのはお前らが飲んだからだ!と、他のドワーフ達に糾弾されかねず下手をしたら三年後の酒を他のドワーフ達に奪われてしまう可能性もあるのだ


 こと、鍛治仕事に関しては厳格な上下関係が存在しており弟子たちが親方衆や長老たちに逆らう事は決して無いが、問題が酒に関してと言うのであれば反乱や暴動すら招いてしまうのがドワーフという種族だ。 その為セイレケの街に来ている長老級のドワーフ達でも下手なことは出来ないのだった



「流通量が少ないのであれば飲む量を、いや正確には飲める人数を制限すれば済む話じゃ!」


「制限じゃと!?・・・しかしそれでは飲めん奴等から不満が出るに決まっておるぞ」


「ここは長老衆の年功序列で・・・」


「何を言ってやがる!」


「そうだそうだ!自分達だけで独占するつもりか!!!」



 テンゲンが長としての権限で言い掛けた言葉に長老衆でも下位の者達やお付きで来ていた若手のドワーフ達が不満を・・・と言うか殺気の籠った糾弾の声が上がる



「黙れ!長である儂の決定じゃぞ」


「長の決定が必ず正しいのか!これは鍛治の話じゃねぇぞ。自分が飲みたいだけだろ!!!」


「なんじゃと~!」



 険悪さだけが高まり一触即発の雰囲気が場を支配し始める。 長老衆の内部だけでもこれだけ過激になっていくのだからドワーフの集落にこの話が伝わったら内乱になりかねない



「ッンだよ!折角の酒が拙くなっちまうだろうが!!そこまで言うんだったら不満が出ねぇ方法を教えてやる!!」


「「「「「「なんじゃと!サッサと教えろ!!!」」」」」」


「っと、俺に殺気を向けるなっての!!いいかこの酒は対価なんだぜ、それを忘れてねぇか?ドワーフなら自らの腕で依頼者を納得させるんじゃなかったのか?」



 ドワーフ製の装備は兎に角高価になりがちだ。 依頼者が予算も含めてこの性能で、っと言っても自らの満足の為に高価な素材をふんだんに使い持てる技術の全て込めて最高の品物を造るのがドワーフの鍛冶職人だ


 そして話が違うと言う依頼者を無理やり品質で納得させるのも彼等の特徴であり、幾らの金が掛かるのか判らなくともそれを求める者達を満足させて来たと言う矜持と自負が彼等にはある


 約束では酒の提供の対価としてアルベルト達の装備、そして私兵隊の装備一式を渡さねばならず、ドワーフの矜持では自分たちが褒め称えた酒の味に見合った品質を提供しなければならないのだ



「ふむ。鍛治の腕で勝負しろって事か・・・」


「なら長老衆で独占・・・」


「違うだろ!?酒への情熱を掛けた逸品に長老も若手もねぇ筈だぜ?」


「フッ、フフハ、ハ~ハッハッハ!面白い。バイマトよ実に面白いぞ!!!」


「そ、そうか?気に入ってくれたか?ハハハハハ~ハァ」



 強気で言っているように見えて内心では目の前でドワーフ達の争いが過激になりそうでドキドキだったバイマト。 あまり思慮深い方では無い彼が見事にこの場を修める事に成功したのは理由がある・・・と言っても何の事は無いマーリンの考えだった


 酒を提供すればこうなる事を予想・・・と言うよりも確信していたマーリンは前もってバイマトにその時の対処法をしっかりと教えていた。 バイマトはそれに従っただけであったのだが事前に聞いていた話よりもドワーフ達の争うが過激になっていくのですっかりビビッていたのだった



「よし里にも伝えろ!!私兵隊の装備もという事なら個人だけでは手が足りん。工房毎に腕を競うのだ!!」


「採用された装備を造った工房に酒を優先的に分配する!これならどうじゃ!?」


「よっしゃぁ!流石長だぜ!!」


「こうしちゃいられねぇ。早速素材を集めるぞ」


「あっ!待ちやがれ!!里の素材を独占するつもりか?」



 試飲会の会場となった部屋から大急ぎで飛び出していく下位の長老や若手のドワーフ達。 しかし上位の長老衆たちはのんびりと残された酒を味わっている



「テンゲン達は行かなくていいのか?」


「なに、儂らの工房には十分な素材が積んであるわい。それに此処に残った連中の考えも読めておるからの」



 バイマトの問い掛けに答えたテンゲンの言葉に残った長老たちは揃ってニヤッという凄みのある笑いを浮かべる。 歴戦の強者であるバイマトですら背中に冷たい物が流れる程の静かな、しかし凄まじい迫力であった



「儂らが狙うのは領主たちの装備、一品物の品質を競うつもりじゃ。これなら若手たちと競合もせんだろうし、高い功績を狙えるからな」


「成程な、若手にチャンスを与えつつ自分の腕を誇示するって事か・・・」



 この後、一か月にわたって繰り広げられるドワーフ達の腕比べ・・・それは里のドワーフだけでは無く各地に点在する工房を巻き込むほどの規模になっていくのであった


 その影響で全ての依頼品の製作が滞る事になり、かなりの数の商人と冒険者たちが頭を抱える事になるのだが、発案者のマーリン(やり過ぎ賢者)は気にもしていないのであった・・・


読んで頂いて有難う御座います

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