伝説の賢者マーリン~④
『泥人形のマッディ君ぢゃ!』
「ぅま゛!!」
マーリンの紹介に合わせて敬礼をしながら何とも形容し難い声で返事をするマッドゴーレムのマッディ君。 泥という何処にでもある素材で作られた筈のそのゴーレムは、しかし鮮やかな光沢の赤い身体をしておりとゴーレムらしくないスッとした姿でとても最弱の初歩的なマッドゴーレムとは思えない姿だった
大体、赤い泥で出来たゴーレムなど聞いた事は無い。 しかし何故か妙に赤い機体・・・失礼、身体に拘るマーリンなのでいつもの事だとアルベルト達は納得した
「マッディ君って言われても・・・」
『何を言う!儂が創り上げたゴーレムじゃぞ。そんじょぞそこらのゴーレムと一緒にするでない。魔力回路を格子状に張り巡らせ、更に素材の彼方此方に重金属を混ぜ込む事で柔らかい動きと防御力の高さを両立させておる。更に自立型の思考と学習能力を持ち合わせ敵の攻撃パターンを学ぶ事によって効率的な戦いが出来るのじゃ。例え足をもがれ様とも戦える身体、万全の身体なのじゃ。偉い人にはそれが判らんのですよ!!・・・』
「判った!悪かったよ。僕が悪かった」
『むう。まだまだマッディ君の魅力を伝えきれておらんのだが・・・仕方あるまい概要を説明しよう』
能力的な事では無くそのネーミングセンスに物を申したかったアルベルトだったのだが、性能的な面と勘違いしたマーリンの怒涛の説明に両手を上げて降参した。
その態度に話している途中で気が乗って来たマーリンは物足りなさそうな様子ではあったが、話が進まなくなる事に気付き説明を優先する
ウマルが見つけた建物の改造を終わらせ訓練場として使える様になった建物の中にアルベルトとヴィクトリア、エリザベスの三人はマッディ君を囲う様にしてマーリンの説明を聞いて行く。
『三人にはマッディ君との模擬戦を通じて、より実践的な訓練を積んで貰うつもりじゃ。既にマッディ君には儂の知る最高の戦士の戦闘データを入力しておるから嘗めて掛かると大けがを負うから注意するのじゃぞ』
「ん・・・余裕」
『ふっふっふ。そう言っていられるのも今の内じゃぞ?戦闘データの元になった奴はバイマトなんぞ目じゃない男じゃったからな。今のアル達なら三人でも勝てないと思うぞ』
「そんな訳あるわけないわ。所詮マッドゴーレム、私達の敵じゃないわ」
婚約者二人はマーリンのいう事を信じていない様だが、マーリンの性格を良く知るアルベルトは警戒を強めていた。 マーリンが創りだしたマッドゴーレムの製作過程を知る彼はこのやり過ぎ賢者が有り得ない量の魔力を込めた事、更にタップリと時間をかけて創り上げた事を知っており、マッディ君が普通のマッドゴーレムでは無いと思っていた
しかも伝説の賢者が知る最高の戦士の戦闘データというのだから通常の戦士では有り得ない実力の筈だ。 凝性のマーリンが持っている戦闘データも可能な限り正確かつ緻密なものであるに違いない
一応は上級剣術のスキルの持ち主であるアルベルトだがバイマトとの模擬戦では純粋な剣術だけでは適わない。 マーリンが知る伝説級の戦士の戦闘データが入力された特別性のマッドゴーレムとなればその実力は計り知れないと思っていた
「模擬戦だからっていって油断しないで!二人とも真剣にやらないと怪我するよ」
「そんなに気にしなくてもいいと思うんだけど・・・」
「べス!真剣にやろうよ」
「はいはい、判ったわよ」
『では始めるぞ。武器を構えるのじゃ』
アルベルトの訴えにしょうがないって感じのエリザベスではあったが、マーリンの合図で表情を引き締め詠唱の準備に入る。 ヴィクトリアも手甲の具合を確かめるように拳をぶつけ合い気合を高めていく
『それでは・・・はじめ!』
「ま゛!」
「なっ!早い!!」
『ほっほっほ♪マッディ君は通常のザク・・・ゴホンゴホン!通常のゴーレムの三倍の速度が出せるのじゃ』
マーリンの合図でマッディ君がゴーレムとは思えない滑らかな動きで突進してくる 。そのスピードはアルベルトの動きと比べても遜色ない早さでマーリンも自慢げに勝ち誇っていた
巨大なカイトシールドを前面に出しその身体をスッポリと隠しながらタックルするように突撃してきたマッデイ君は前衛に布陣したアルベルトとヴィクトリアを吹き飛ばすと詠唱を始めていたエリザベスに向かって行く
「チッ!嘗めないでよね、っと!!」
その突進で詠唱自体は諦めたが、軽く横に飛ぶとマッディ君の側面を狙ってスタッフを横殴りに振るうエリザベス。 それを刃挽きした大剣で易々と受け止めると速度を落とさず駆け抜けるマッディ君は振り向きざまにもう一度シルードを前面に出して突進してくる
「べス、下がって!ヴィクは横から牽制して!」
「ん・・・了解」
突進してくるマッディ君の前面に構えたアルベルトはそう二人に指示を出すと長剣をシールドに思いっきり叩きつけるようにしてその突進を止めようと試みた。
「ガキン」
金属同士のぶつかり合う音が響くが、アルベルトの大振りの一撃をカイトシールドで巧みに受け流したマッディ君はアルベルトのがら空きの胴体にショルダータックルを喰らわせ吹き飛ばす。
「ん・・・アルの敵!」
タックルの衝撃で一瞬動きを止めたマッディ君にヴィクトリアの勢いの乗った拳が突き刺さる・・・因みに吹き飛ばされただけでアルベルトは死んだわけでは無いのでヴィクトリアの言葉は聊か不謹慎だ
「チッ・・・効いてない」
「ま゛!」
ヴィクトリア渾身のその拳は深々とマッディ君の脇腹に突き刺さるがその感触は柔らかいクッションを殴ったように手応えを感じさせない物だった。
『ほっほっほ♪マッディ君は身体の硬さを操れるからの。単純な攻撃では効果が無いぞ~』
「性格悪いわね!でも魔法なら硬さは関係ないわ!!」
アルベルトとヴィクトリアが稼いだ僅かな時間ではあったがエリザベスが魔法を発動するには十分な時間であった。 初級とはいえ普通の魔法使いが放つよりも巨大な火の玉がマッディ君へと「轟!」という音を残して迫る
マッドゴーレムはその名の通り泥で出来たゴーレムなので、身体を乾燥させる火系の魔法が弱点だ。 エリザベスの選択はそこを突いたものであり威力の劣る初級の魔法とはいえ弱点を狙った十分効果的な魔法だった
「やったわ!」
「ま゛!!」
勝ち誇るエリザベスであったが、爆炎が晴れる前にマッディ君が変わらぬ姿で飛び出してくると大剣を振利上げエリザベスに迫る。
「クッ!この・・・」
『儂が創ったゴーレムがそんな単純な魔法で倒れる訳なかろう』
「べス!下がって!!」
間一髪、吹き飛ばされていたアルベルトがその大剣の一撃を受け止めエリザベスの危機を救う。 そのまま力比べの体勢に入った二人。 しかし体格に劣るアルベルトが徐々に押し込まれる
「ん・・・爆炎拳」
「風よ!我が敵を斬り裂け!!ウインドカッター」
そこに体勢を整えた二人が未来の夫を助ける為に攻撃を繰り出す。 ヴィクトリアが拳に炎を纏い必殺の一撃を繰り出す。 そしてエリザベスはヴィクトリアの攻撃を身体を柔らかくして防いだ場合を考え斬り裂く攻撃を放つ
何も言わなくても連携が出来る二人。 普段は競い合う様にしている二人だが互いの考える事くらい理解できている。
「ガンッ!」
「グッ・・・今度は硬い」
硬い物を殴りつけた音が部屋の中に響き渡る。 マッディ君は身体を硬化させることでヴィクトリアの攻撃に耐えきり、当然エリザベスの魔法もその身体を斬り裂くことは出来ない。 しかしその衝撃はマッデイ君の身体をずらす事には成功したため上からの圧力が消えたアルベルトはマッディ君の前から逃げ出す
『ほれほれ、さっきの勢いはどうした、まるで良いトコなしじゃな。少しは頑張ってくれんとマッディ君達の出番が無いぞ』
「達?・・・って、まだいるの!?」
離れた所で寛ぐようにフヨフヨ浮いていたマーリンの傍らにはマッディ君と同じマッドゴーレムが四体控えていた。 しかも判り易い様に身体の色まで違う彼等はその体型も仕草も様々で、筋骨隆々な黒マッディ、横に貫録のある黄マッディ、何処かクールな青マッディ、そして女性型の桃マッディとまるで三人を観察するように様々な表情で見つめていた
「ま゛!!」
黒マッディ君が一声叫ぶと、武器を構えていた赤マッディ君が四人の元へ下がる。
「「「「「ま゛!!!」」」」」
ドカーンって感じで彼等の後ろで爆発が巻き起こり、それを背景に各々がポーズを決める
『ほっほっほ♪名付けて【ゴーレム戦隊マッドレンジャー】じゃ』
「ん・・・やり過ぎ」
楽しそうなマーリンの表情とは別にウンザリする三人。 代表するように呟いたヴィクトリアの言葉通り歯止めのきかない伝説の賢者であった・・・
ガンダムネタと思わせておいて、そこからの~戦隊もの!
新たな挑戦です・・・て、何が?って感じです。楽しんでいただけたでしょうか?
読んで頂いて有難う御座います




