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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第三章 少年編
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顛末と新たな火種~③

「父上!お久しぶりです」


「アルベルト、ひさ「殿下!お久しぶりです!!!やっとお会いできましたこのカルルク一日千秋の想いで、クゥ~」


「ウォホン!カルルクよそなたの気持ちも判るが、まずは落ち着け!」



 辺境伯でありこのサウスバーグ領を治めるメネドールがセイレケの街を訪れるのは三年ぶりであった。 その為アルベルトと直接顔を合わせるのも同じく年月が経っており久しぶりの親子の対面となる筈が、アルベルトのファンを公言して憚らない熱い老将カルルクがその感動の対面をぶち壊す


 確かに何かと擦れ違いでアルベルトと行動を共にできない事が重なったが、セイレケの街でアルベルトの留守を守っていた訳でメネドールを迎えに行く前にはしっかりと顔を合わせているのだから聊か大袈裟な表現である



「ははは、カルルクも久しぶり。父上の護衛ありがとうね」


「なんの殿下の為ならこのカルルク、例え火の中水の中厭わず行動してみせますぞ」


「・・・カモーラはそんなに危なくないでしょ?」


「おっさん・・・迎えに行くの散々渋ってたじゃねぇか」



 今回、式典の準備のアルベルト達とは別にカモーラへとメネドールを迎えに行ったカルルク。 会えなかったと言うより別行動が重なった事によるストレスが大きかったのだろうが、大きなお子ちゃま状態のカルルクにカイヤとバイマトが呆れながら突っ込みを入れる



「さぁ殿下!これで雑事も済みました。あとは共に行動できますぞ~!」


「はいはい。お爺ちゃんこっちですよ~」


「ぬぅ!カイヤ何をする!!ええい離さんか・・・で、殿下~!」



 カイヤに後ろから首根っこを摘ままれ引き摺られていくカルルク。 もはや老害と言っても良いほどの孫馬鹿っぷりを発揮しており、これから他の貴族の出迎えも控えているアルベルトの傍に置いて行くわけにはいかないのだ



「あ奴もあれが無ければの・・・」


「はい。優秀ではあるんですけどね・・・」


「まぁ良い。陛下はまだ到着為されてないな?」


「はい。夕刻までに此方へ着く予定だそうです」



 メネドールの他にも要職に付いている貴族達が続々と到着しているが、基本的には身分の低い者が先に着いていなければならず、国王は気を使ってゆっくりと来るつもりらしい



「ふむ、面倒な事よな。」



 メネドールも時間調整をした口だ。 他の貴族達、今回は大臣などの要職についている者達ばかりなので移動は王都からという事になる。 カモーラの街にいるメネドールは位置的には一番近くにいるのだが辺境伯は上位貴族に分類されるので、他の貴族達に気を使ってセイレケの近くで時間潰しをしていたようだ


 普段の式典は王都で催される事が多く距離的には一番遠い為に気を使うことは無いが、今回はかなりのイレギュラーな事態であって国王や他の上級貴族達の顔をつぶさない様に色々面倒な事にまで気を使ったようだった


 因みに、上級貴族の中でも上位にいる者達はあまり大臣などの要職に就くことは無い。 実際大臣など激務な上に問題が起きれば深夜だろうと登城せねばならず、常に王城近くの屋敷に控えていなければならない。 その為公爵や侯爵などは面倒事を嫌って名誉職に就いている事が多く、今回も外務大臣を務める侯爵家だけのが唯一の上位の貴族であった。 尤も彼の場合は先代の跡を継いだばかりで年若いという理由で大臣職に就いているのであり顔つなぎの意味が強いのであった



「後は侯爵様だけです。父上も休んでは如何ですか?」


「そうさせて貰うか。最近馬車での移動がきつくてな」



 そう笑いながらアルベルトの案内で館の奥へと入っていくメネドール。 侯爵家の先触れは既に届いており時間も余裕が有ったため久しぶりの親子の時間を過ごす事が出来たのであった



 ☆△☆△



 翌日無事に勢ぞろいした賓客たちが見守る中、国王であるジオブリント・フォン・アデルが城壁の上に立ち何かを待っているようにその視線を空に向けている。 傍らには宰相のアクセル・オクセンシェルナとアルベルトが控えていた


 何かの正体はみな判っているのだが、その姿を見た事の有るものはおらず辺りは静寂に包まれている。 打ち合わせを済ましているアルベルトは気にしていないが他の人間は本当にそれがこの場に現れるのか不安とそして恐怖を感じているのだが、各国の大使や王国の要職についている者達はそれをおくびにも出さないでいる



「おお!あ、あれか・・・」


「で、デカいぞ」



 しかし、転生竜・・・聖竜王であるベルクワトが飛来するとそんな小さな矜持は吹き飛んでしまったのか式典の最中であると言うのに椅子から腰を浮かべて驚愕の声を上げてしまう



≪我は転生竜なり。小さき者よ・・・汝が要望を告げるが良い≫


「暗黒竜王よ、神聖アデル王国国王ジオブリント・フォン・アデルある。盟約によりこの街の守護を願いたい」


≪小さき者よ。その願いしかと聞いた。この地は暗黒竜王が守護せし地である事を此処に約束しよう≫



 式典に参加している者だけでなく、街の住民にまで頭に直接届く思念に国王が答える。 それに応じる思念が再び響き渡ると転生竜は身を翻し彼方へと飛んでいく。


 式典に参加している者達は声を発する事も出来ず、ただその様子を見つめるだけ。 ウマル達内政官が必死で準備し、長い道のりを移動してきた参加者達はこの短いやり取りの為だけに此処までやって来たのだ


 しかしベルクワトの迫力に我を忘れている者達は気が付いていないが、事情を知っている者達はこの茶番劇に吹き出しそうなのを必死でこらえていた


 転生竜のルール上虚偽の言葉を吐く訳にはいかないらしく、ベルクワトは自身を暗黒竜王と名乗る訳にはいかない。 しかし国王がその名を呼び盟約を持ち出しても問題ない訳で彼女はそれを否定も肯定もしていない。 更に自身が守護するとは言っておらず暗黒竜王であるジョゼルがこの地を護る事はアルベルトとの盟約であり、その事実を約束しただけなので虚偽には当たらないのでルール的にも問題ないらしい


 しかも言葉を交わすのを最小限にしたのも下手に長居をして色々襤褸を出すのを防ぐ為だとは参加者は思いもしておらず、城壁上のアルベルトなどは頭を下げて平伏しているふりをしながら吹き出すのを必死にこらえていた



「我らの願いは確かに届いた。王国を守護する聖竜王の他に暗黒竜王がこの地の守護を約束して下さったのだ!」



 城壁上で振り向き式典の参加者に向かって高らかに国王が宣言すると、これも打ち合わせ通り街の住民や警備の兵士たちが率先して歓声を上げる。 それに巻き込まれる形で式典の参加者達も立ち上がり惜しみない拍手を国王に捧げるのであった



「この後、この慶事を祝す晩餐会が在る。みなも新たな国の慶事を共に祝って欲しい」


「国王様万歳!」


「アデル王国万歳!」



 鳴り止まぬ歓声の元、国王が城壁上から移動すると、控えていた案内役たちが参加者を案内して領主館へと向かっていく。



「あ~もう駄目・・・ベルクワトさん、頬をピクピクさせてるんだもん」


「そう言うな。彼女も久しぶりの竜の姿に戻って緊張したのだろう」


「いやいや、陛下。あれは絶対笑い堪えてましたよ」



 城壁から内部の人目に着かない場所に移動してからこらえきれなくなったアルベルトが噴き出すように笑い出す。 国王が必死にフォローするが同じく近くで見ていた宰相がアルベルトに同意する


 式典の参加者たちはベルクワトの姿に圧倒されていた上に距離も有ったので気付いてはいないが、ベルクワトも笑いを堪えていた事が伝染し二人も笑いを堪えるのに苦労していたのだ



「まぁ後で色々と突っ込んでおくとしようか」


「「はい、陛下」」



 取敢えず問題なく式典が終わった事で笑みを浮かべながら馬車へと移動する三人の表情は明るかった。 これで晩餐会を無事に終わらせればこの問題は終わり、王国にとってもセイレケにとっても万々歳の筈だ。 流石に帝国も転生竜が守護する街を直接攻める事は無いだろうと気楽に考えていたのであった



 ☆△☆△



「お集まりの皆さん、僭越ながら若輩の私が開会の挨拶をさせて頂く事をお許しください。それでは守護竜の加護を受けたセイレケの街と神聖アデル王国の未来に・・・乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」



 国王では無くホスト役のアルベルトの宣言で晩餐会は始まった。 通常は国王の宣言で始まる晩餐会ではあるが今回の食事や飲み物等はセイレケ側が用意したものであり、国王の了承を得てアルベルトが挨拶をしている。 閉会の挨拶は国王が締めるので特に問題とされない



「いやはや・・・転生竜の迫力は凄かったですな」


「ええ、いい土産話が出来ました」


「いや、でも帝国の貴方は色々大変ではありませんか?」


「なんの。やはり平和が一番ですよ」



 各国の大使達も酒を片手に盛り上がっていた。 王国ともめている帝国の大使も出席しているのだが気楽な晩餐会の場でもあり冗談交じりで盛り上がっていた。 残念ながら王都の晩餐会の様に着飾った貴婦人たちの姿は少ないが、それでも大使や貴族達の奥方たちも出席している為ある程度は華やかさもあった



「皆の者!ここでもう一つめでたい話が有る」



 先程アルベルトが挨拶した舞台に上がった国王が盛り上がる会場に良く通る声で注目を集める



「この地を治める辺境伯メネドールの嫡男にしてセイレケの街を治めるアルベルト。彼と儂の娘であるエリザベスとの婚約をこの場で発表する!」


「「「「おおおお!」」」」



 国王の宣言と共に先程の挨拶の時とは違った装いに着替えたアルベルトが両手に二人の恋人と腕を組んで現れる



「アルベルトにはもう一人ヴィクトリア嬢という婚約者もおる。どちらが正妻などと言った無粋な話は無しじゃ!若い三人を盛大に祝ってやろうではないか!」



 通常複数の妻を娶る場合、国王の娘つまり王族が嫁ぐのならば正妻になるのが当たり前の話だ。 しかし国王はその事を明言せずに婚約だけを発表したのだ。 ヴィクトリアはどちらが正妻などと言った事には拘っていないのだが、その事が余計にエリザベスのプライドを刺激しており譲られた感が強い正妻の座に着く事を拒否していた


 そんな娘の心情と板挟みになるであろうアルベルトを気遣っての発表であったのだが前代未聞の事であった。 しかし転生竜との邂逅で盛り上がった参加者はそんな事を気にせずに三人の美男美女に祝福の言葉を掛けてくる


 会場は更なる熱狂に包まれ参加者たちは喜びの表情で盛り上がった。



「た、大変です!!」


「控えよ!陛下の御前であるぞ!!」



「バァン」と突然開いた扉から甲冑を身に着け泥にまみれた兵士が飛び込んできた。 殆ど無礼講になっていた会場であったが、流石に武装した兵士の乱入に陛下の御前という事も有って宰相が鋭く制止する



「よい!伝令であろう。何が有った?」


「ハッ。お、恐れながら報告します。て、帝国が・・・」


「落ち着け。誰ぞ水を持ってこい」



 メネドールが一旦報告を止めると水を飲ませて伝令兵を落ち着かせようとする



「失礼しました。帝国が・・・帝国が滅びました!!」


「なんじゃと・・・」



 国王が絶句し次の言葉を継げない状態の中、皆の視線が帝国の大使に集中する



「ば、馬鹿な。幾ら疲弊したとはいえ我が国が・・・そんな馬鹿な」



 その手に握られたグラスが床に落ち砕け散る


 その音が静寂に包まれた室内に響き渡るのであった・・・


まさかの帝国滅亡・・・



こんな引きで申し訳ないのですが、実は墓参りで遠出の為次の更新は17日になるかも知れません。すいませんがご了承ください



読んで頂いて有難う御座います

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