戦いが終わって平穏へ
短めです
「はっはっは!アル~やらかしたんだって!?」
「うん・・・ベスに思いっきり引っ叩かれた」
痕などは残っていないがエリザベスに平手打ちを喰らった頬を押えながらアルベルトは苦笑いしながら帰って来たバイマトに答える
「報告書は見ましたぞ。領主として、また指揮官としては落第ですな。しかし老骨としては殿下の無双っぷりを見たかった・・・」
メネドールが親バカならばカルルク将軍は爺バカであろう。 一応は諌めているもののその瞳は心底アルベルトの戦いぶりが見れなくて残念だったと語っている
「そうやって甘やかすから駄目なのよ!いいアルベルト私の居ない所で危ない事をしちゃ駄目よ!」
「殿下すいません。私がこんな時期に訓練の予定を入れたばっかりに・・・」
どっちが甘やかしているのか疑問なセリフを言うカイヤ。 年齢的には婆バカになるのだろうが、一度それを言ったバイマトが三日間起き上がれなくなった事を知っている周りは黙って口を噤む。 そんな中側近の最古参達の中で唯一まともなウマルが申し訳なさそうに謝るのを見たアルベルトは慌てて手を振りながら否定する
「そんな事無いよ!許可したのは僕だし皆がいない間に迎え撃つ決断をしたのも僕なんだから」
先だっての戦闘でいなかった四人はセイレケの街に駐留する軍を率いての大規模な演習を指揮していたのであった。 帝国が攻めてくる兆候は掴んでいたのだが膨れ上がった駐留軍の訓練も疎かにする事は出来ず、農地の刈り入れを終えたこの時期は大規模な演習を行うのに丁度いい季節でもあったのだ
兵農分離が出来ているサウスバーグ領では農繁期であろうと十分な兵を動員できるが、やはり大軍での演習となれば場所を取る。 街道を塞いだり作業を邪魔する可能性を考慮してこの時期での演習をウマルが提案したのだった
ウマルの提案が在った時点ではアルベルトも例年通りの籠城策で帝国軍を適当にあしらうつもりであったし許可を出したのであった。 まぁサームやハサン等の元帝国兵達が指揮する私兵が居るのでそれで十分と考えていたのであった
「まぁ指揮官特攻なんてやらかしたら兵達にとってはたまらんさ。ましてやサーム達は特に忠誠心に満ち溢れてるからな」
「お主が用兵を語るのはまだ早い!大体なんじゃあの指揮は、あの場面であんな動きをさせておる様ではオチオチ引退も出来んでは無いか!」
「そんなこと言ったって現場の判断だろうが!」
「将がそんな事を言い訳にしてどうする!」
アルベルトの事など何処へやら、口げんかを始める二人にウマルとカイヤは呆れたように肩を竦める。おそらく演習中もこんな様子だったのだろう。 相性が悪いという訳では無いのだが決定的な性格の違いという物が出てしまっているのだ
今、バイマトはカルルクの跡を継ぐべく将軍としての訓練を受けている。 諸外国にまで響き渡るカルルクの将軍としての名声を考えれば、名誉な事なのだがバイマトにとっては煩い爺と言った感じの捉え方である
元々、守勢で敵の勢いを殺してからの用兵を旨としているカルルクに対して、攻勢をかける事で敵を揺さぶる事を得意とするバイマトでは用兵の仕方や考え方に大きな隔たりが有るのは確かだ
バイマトも名の通った冒険者であり、また優秀な指揮官ではあるものの流石に万単位の兵を動かした経験は無いのと、生来の性格のせいでどうしても強引な攻勢に出て全体を危機に晒してしまう傾向が有るようで、カルルクとしてはソコが不安でたまらない様だ
まぁ喧々諤々とやり合っている師弟ではあるが、冒険者の引退を考えていたバイマトと流石に後継者の育成も考えなければいけないカルルク。 両人の思惑を叶える人事であったのは間違いないだろう
「二人とも・・・いい加減にしなさいよ」
「おっと、やばいやばい。我らが姫がお冠だ。俺はお先に失礼するぜ」
「こら待たんか!まだ話は終わっとらんぞ!」
「将軍・・・そこまでにしておいた方が・・・」
カイヤの怒りを隣で感じ取っているウマルがカルルクに消え入りそうな声で忠告するがバイマトが出て行った扉に向かってまだ何事かを叫んでいるカルルクには届かない
「将軍・・・ちょっとO・HA・NA・SIしましょうか・・・」
「殺気!?・・・あっ!いやそのカイヤ・・・穏便に、その冷静になるのじゃ。って殿下!お助け下され~」
そのまま襟首を掴まれたカルルク将軍はカイヤに引き摺られる様に部屋から出て行ってしまった・・・
「その・・・ウマル。苦労を掛けちゃったね」
「まぁ道中ずっとこんな感じでしたので慣れました。こちらが演習の報告書です」
慣れた手付きで差し出された書類の束に、それを処理しなければいけないアルベルトは露骨に嫌な顔をする
「そうそう、演習の最中にカイヤが面白い物を見つけていましたよ。なんでも魔力の淀みが出来てるそうで新しい迷宮かも?と言ってましたよ」
「迷宮!?何それ行きたい!」
「書類の決裁が終わったら場所をお教えしますので早めにお願いしますね」
アルベルトが喜色をその顔に浮かべるのを見たウマルは意地悪な笑みを浮かべて部屋を出て行く。 セイレケの街の首脳陣の動かし方までしっかり把握しているウマルであった・・・
ちょっと時間が無くて短くなってしまってごめんさい
その分は明日も投稿しますのでご勘弁を・・・
読んで頂いて有難う御座います




