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97話

 取引場所は見晴らしの良いところがいいという話で落ち着いて、この砦とタイトウの街とを結ぶ中間にある、アサクサ平原に決定した。


 日程は移動時間も考えて十日後だ。それだけあればとりあえずこっちも色々考えられる。


 勿論向こうさんも条件は一緒とも思えるけどね。


「しかし本気で取引を行うつもりですかマリヤ様? 向こうが素直に人質を返すとは、とても思えないのですが……」


「あぁ。取引はやるよ。でもまともにとは誰もいってないだろ?」


 大体犬のいうことぐらいあたしも考えてる。だからこの犬にも、しっかり働いて貰わないとね。


 あたしはとりあえず考えてる術を犬に話す。なるほど、と犬は意外とあっさり納得を示したね。


「でも可能ですかね?」

「だから今それを確認しに行くんだよ」


 で、犬と一緒にゴブリンの長の下へ行く。すっかり鍛冶専用と化した炉のある部屋では、楽しそうにゴブリンが装備を作ったりしている。

 こいつら働いてる時は本当幸せそうだな。こっちは楽でいいけど。


「あ、マリヤおねぇ様~ふふ~ん。どうされましたか? ゴブリン達は滞り無く作業を進めてますよ~ふふ~ん」

 

 マセコには、普段はゴブリンの通訳をやらせる事にした。

 ゴブリンと会話できるのはあたしとマセコ、後は火の玉も可能だけどね。

 あいつは布教とかで忙しそうだし、マセコはユニコーンの世話以外では、手が空いてるので丁度良かったんだよね。


 因みにユリコーンに関しては、ダークエルフが面倒見てる。


「ちょっとゴブリン長に用事があってね」


 あたしがそう告げると、判りました~呼んできます~、と言ってマセコが走っていった。


 まぁあたしはゴブリンと会話できるから、別にこっから呼んでもいいんだけど……少しでも役に立ちたいと思ってるのかね。

 だからとりあえず待つことにした。


「これは神様! 私をお呼びいただけるとは光栄至極!」


 やってきた長が深く頭を下げて、感謝の言葉を述べてくる。こいつはまぁ常にこんな感じだけどね。


「ちょっと頼みたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」


「勿論でございます! 神様のお願いとあれば、他の仕事を投げ打ってでも優先させて頂きます」


 何故か揉み手をしながらそう返してくる。一体どこで覚えたんだそれ?

 まぁいっか。とりあえず出来るかどうかが問題だしね。あたしはとりあえずソレを見せて、同じのを作れるか聞いてみる。


「これでしたら少しお時間頂ければ、そっくりそのままお作り致しましょう」


「少しってどのくらい?」


「はい! 二、三日頂ければ十分かと――」


 上等だね。


「オッケー。それで頼むよ。あと聞いてるとは思うけど。タイトウ側との取引の際は――」


「判っております。弓の使い手を厳選して揃えてみせますよ!」


 そう言って長は鼻息を荒くさせた。


 うん、とりあえずこれでゴブリンは大丈夫と。オークに関してもエロイーヨが呼びに戻ってるしね。


 流石に砦も城も空にするわけには行かないから、ある程度は残して置くけど、流石に向こうも本腰いれてくるだろうからね。


 さて、後は武器を揃えて、犬にも動いてもらって、取引の日を待つだけだね――





◇◆◇


「よく逃げずに来たものだな」


 約束の日。アサクサ平原には予想通りというかね。まぁ敵さんは変髪を筆頭に、ずらりと大軍を引き連れてやってきたよ。


「全くいくらなんでも警戒しすぎじゃないのかい? そんなにぞろぞろと引き連れちゃってさ」


 あたしは数歩前に出て、変髪に向かって声を張り上げる。

 今あたし側と変髪側の距離は、五百メートルぐらい離れてる形だ。平原だけに地形も平坦で緑の絨毯が一面に広がっている。


「ふん! そちらとて人の事は言えないであろう!」


 声を張り上げながら、あたし達の方を見回してくるけどね。

 でも表情には余裕が見えるね。


 まぁそれもそうか。こっちは集めたといっても、人数的にはオーク、ゴブリン、ダークエルフ、そして元マッドビーストの兵と合わせて五〇〇。


 で、向こうさんは聖騎士とマッドビーストみたいな賊っぽいのと魔導師ての? ローブを着た怪しい奴らとで合わせて五〇〇〇程はいるみたいだ。

 で、その上で巨人も三体控えてるからね。


「しかし巨神の姿が見えませんな?」


 やっぱそれを指摘してきたね。


「念のため、砦を守らせてるんだよ」


「はっは! これはまた随分と慎重ですなぁ」


 人を小馬鹿にするような笑いが癇に障るね。


「なぁ一応確認だけど、今回はお互いの大事なものを交換するのがメインって事でいいんだよな?」


「えぇ勿論でございます。あくまで後ろに控えているのは念の為ですので」


「そうかい。だったら預かってるのを見せて貰いたいんだけどね」


「……まぁそうですな。ただそちらも見せてくださらないと」


「わ~てるよ。じゃあ同時だ」


 で、変髪が判りました、と言って後ろの部下に合図を送った。

 で、あたしも控えていたゴブリンに持ってくるよう頼む。


「貴方! マリヤ様!」

「パパなの! マリヤ様なの!」

「お、父様、マ、リヤ、様」


 おっと三人共縄みたいので縛られてるけど、思ったより元気そうだね。


「アリス! ロリン! クラウン!」


 馬鹿が前に出てきて叫んだよ。まぁこの辺はやっぱ父親だよな。


「ほらこっちもこれだよ」


 あたしはそう言って、神宝を掲げてみせる。


「ふむ。確かに間違いは無さそうですな」


 変髪があたしの持ってるソレを眺めて納得を示す。


「皆! 酷いことはされてないか? 大丈夫か?」


 全く馬鹿もよっぽど心配なんだろうね。状況も気にせず勝手に言葉を投げかけてるよ。


「パパもマリヤ様も心配しなくて大丈夫なの! ロリンの処女は無事なの!」


「…………」


 ……お前はいきなりそれか。


「勿論前も後ろも無事なの!」


 まだ言うか。


「ロリンちゃん。あまり人前でそういう事を言うものじゃありませんよ。せめてお膣とお菊門ぐらいには――」


 問題点そこじゃねぇよ! てかそれはそれでおかしいだろ!


「僕も、ど、ど――」


 いや恥ずかしいなら無理して言うなよモジオ。


「お、女の娘の格好は、さ、させられたけど、ど、童貞は、ぶ、ぶじ……」


 一体何をしてたんだよお前ら!


「わたしも真っ黒いフリルの付いた、お人形さんみたいな格好はさせられたなの! でも性的悪戯は特にされてないなの!」


「大変だメルセルク様が倒れられたぞ!」


 馬鹿の思考も色々臨界点を突破したみたいだね。てか――


「小さい子に何してくれてんだ! この変態!」


 あたしは変髪に指を突きつけて、声を大にして言い放つ。

 すると周りの、特に聖騎士の連中の冷たい視線が、変髪に送られた。


「ち、違う! それは領主さ、いや……とにかくそれは勘違いだ!」


 勘違いって、思いっきり二人が暴露してんじゃん。

 ……てか。


「そういえば領主って来てないのかい?」


 それっぽいのがいないんだよな。どう見ても。


「ふ、ふん! タイトウ侯爵殿下は、わざわざこのようなところまで出向くほど暇ではないわ!」


 ふ~ん。まぁ別にいいけどね。


「とにかく! お互い確認は終わった! これ以上時間を無駄にしたくはない! 準備は良いな!」


 変髪が怒鳴るようにあたしに向かって確認してきた。

 何キレてんのこいつ?

 まぁいっかとりあえず。


「あぁこっちは大丈夫だ」


 あたしは神宝を右手に持ったまま、目の前の相手に言葉を返し同意する。


 さてっと、いよいよこっからだね――

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