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92話

 岩をどかしてもらった後、あたしと犬は神殿の奥に移動したんだけどね。

 そしたらそんなに苦労する事無く、疾風の神足とやらが見つかったよ。


 なんかコレと同じような白金の台座に祭られるように乗ってた。


 で、見た目には只の具足……ただ脚の先の部分が五本に分かれてて、指の辺りが鉤爪ぽくなってるとこが違うかな? うん、それ以外は普通。


「これを大切に守っていたのかい?」


「おで! こでまもっでだ! こで、だいじ、いわでた!」


 うん! うん! て激しく顎を上下させて言ってくる。勢いがありすぎて、突風が顔に当たる。髪乱れんじゃん! まあ今更だけどね。


「それでは、どう致しましょうか?」

 

 ……う~ん。

 あたしは少しだけ悩んでみて。


「履いてみる」


 そう言って、犬から具足を受け取った。

 で、カチャカチャと脚に装着する。けど、なんかあんまりシックリこない。


 立ってみるけど、なんかこの鉤爪みたいのが逆に邪魔っぽいんだけど――


「どうですか?」

 

 と、聞かれてもねぇ……まぁ一応ちょっと走ってみる事にした。


 ガチャガチャガチャ――ガッチャン、ガッチャン、ガッチャン……。


「ふぅ……」


 とりあえず往復で軽く走り終えた。


「どうですか?」

「走りづれぇよ!」


 あたしは率直な意見を言う。てか見てれば判るだろ。明らかに遅くなってるし。何これ! 使えねぇ!


「んだよこれぇ! 意味わかんないし!」


 あたしはムカついたから、具足を脱いで地面に投げつけた。

 犬があわわ! て、慌てて拾いにいく。


「マリヤ様。大事な神宝ですし、もう少し丁重に……」


「うるさいなぁ。こんなの使えないんじゃ意味ないじゃ~~~~ん! 不良品なんじゃねぇの?」


 犬に向かって叫び上げる。巨チンが少しオロオロしてるね。

 まぁ犬にあたっても仕方ねぇけど。


「……マリヤ様。この具足。この犬めが試してみてもよろしいですか?」


 犬が唐突に畏まりながら聞いてきた。こういうのに興味があるみたいだね。

 

「別に好きにすればいいんじゃね?」


 正直あたしにとっては、もうどうでもいいものだから、適当に言う。


 すると、では! て、なんか嬉しそうに犬がソレを装備しだした。

 

 で、ガチャガチャと音を立てながら立ち上がる。

 う~ん、客観的に見ると正直ダサいね……。


「……何か、不思議な感じです――」


 ……はい? なんだいそれ? て、あたしが目をパチクリさせてると、いきます! とか犬が声を上げて――え? 消えた?


「ぬぉおおおお!」


 て、え? なんか声が上から――て、顔をあげたら、嘘! 犬が超上空にいんじゃん! え? 何これ? 十メートル、二十メートル? とにかくすげぇ高さだよ。


 で、そっから一気に急降下して――ふんっ! とか言いながら地面に着地した。 

 衝撃で土煙が舞い上がってなんかすげぇし。


「ずごい。おで、だがらのぢがら、はぢめで、みだ」


 巨チンの奴が目を丸くさせて言う。……成る程、確かにこれを見る分には凄く感じるね。


「いやはや! これは驚きです! 身体もなんか軽くなった気がしますし。これだと多分……みていて下さい!」


 言うが早いか、風が弾けたような圧があたしの身体を駆け抜けて、犬の姿が消えた。今度は上じゃなくて正面。

 本人はちょっと力を込めて、走ってみたつもりらしいけどね。


 なんか瞬きしてる間にすげぇ距離を離してて、更に土煙を上げながら、やっぱすげぇ速さで戻ってきた。人間モノレールかてめぇは。


 で、瞬時にあたしの横を通りすぎて、キキキィィイ! って音が聞こえてきそうな勢いで動きを止める。

 てかいちいち煙い。


「ゴホッ、ゴホッ」


 あたしが手で土埃を払いながら、咳き込んでると、いやぁすみません、て謝ってきたけど、顔はニヤけてるぞテメェは。


「いや、しかしこれや凄い! もう少しなれる必要はあると思いますが、使いこなせばかなりの武器になりますぞ!」


「……いや、まだあんたに使わせるって決めてないけど」


 ええええぇえ! って犬が驚き出す。そしてその後、すげぇ悲しい顔を見せてきた。

 たく、しゃあねぇなぁ。


「判ったよ。それはあんたが使いな」


「ワン! ありがとうワン! 嬉しいワン!」


 調子がいいね本当……まぁあたしが使えなかったのはなんか腹たつけど、犬が使えるならいっか。


『マリヤ様、マリヤ様聞こえますか?』


 うん? この声……あ、指輪からか。


「はいはい。聞こえてるよ。何かあった?」


『いえ、こちらはまだ少し時間がかかりますので。ただそちらはどんな感じかなと――』


 あぁ成る程ね。じゃあっと、あたしは火の玉に現状を説明する。


『なんと! 神宝を見つけ巨神まで仲間にしてしまわれるとは!』


『流石マリヤおねぇ様です~ふふ~ん、マリヤおねぇ様は無敵です~ふふ~ん』


 しっかりマセコの鼻歌も聞こえてきたね。


「で、これから戻ろうかと思ったんだけどね」


『なんと! それでしたら是非マリヤ様も砦まで! 巨神とマリヤ様、それに神宝の力があれば、ただ二人をお助けするだけでなく、砦を落とすことだって可能です!』


 ……砦を落とす? そういえばその考えはなかったね。


「なるほど。ここで砦を落としておけば、我々の行動範囲も広がりますな。ロリン様とクラウン様のこともありますし」


 犬も火の玉の意見に同意を示してきたね。そういえば地図でいったら、カジノのある主要な街ってのからも近くなるしね。


「判ったよ。じゃあ、こっちも砦に向かうわ。巨神の力もあれば早いだろうし」


「おで! おで! がんばる! マジヤのだめ!」


 巨チンも張り切ってるね。


『素晴らしい! こちらの指揮もきっと上がります! それではマリヤ様の武勇を皆に伝えておきますので!』


 なんか嬉しそうに言い残して通信が切れたね。


 まぁいいか。とりあえずこれで――


「むぅ! この音は!」


 ふと、犬が緊張感のある声で叫んで振り返る。

 確かにズシーンズシーンって足音が複数近づいてくるね。


 で、やってきたのは――あの巨人三体だね……。


「……巨神様、タイトウ、うらぎるか?」


 うん? 一体が巨チンに向かって話しかけたね。てか片言なのは一緒だけど、こっちはあまり濁ってない。


「おで、マジヤと、やぐぞくした。おで、マジヤのもの」


 巨チンの返しに三体が顔を見合わせて、何かを話し合ってるよ。


「マリヤ様――」

「ちょっと様子を見るよ」


 犬が心配そうに囁いてきたけど、悪い雰囲気も感じない。


「おまえだじも、マジヤ、いっじょに、いがないが? マジヤ! いだいごとじない! ぎもじよいごどじでぐれる!」


 おいおい、マジかよって。いや、一体ずつなら百歩譲って出来ないこともないけどね。


「俺たち、むり。タイトウの力、逆らえない。でも、巨神様の決めたこと。俺たち、応援する」


 そう言って三体の巨人が急にそっぽを向きだしたね。


「俺たち、なにもみてない。だから――」


「なんとこれは……」


 犬も驚いてるね。で、巨チンも目をウルウルさせて。


「ありがどう。ありがとう」


 そう御礼を言って、あたしに向けて手を差し出してくる。


「マジヤのごど。おれがのぜであるぐ」


「あぁ。頼むよ」


 言ってあたしは巨チンの手のひらに乗り、そのまま肩に運ばれた。

 犬は、具足の力があるから、巨チンに頼らなくても大丈夫そうだと言っているね。


 で、三体の巨人の間を抜けて、巨チンに乗って移動する。

 途中、ユリコーンの回収もした。

 本来なら、雄は嫌うユリコーンだけど、流石に巨チンを目の当たりにしたら、逆らう気なんて起きなくなったみたいだね。

 

 ガクガク震えだしてちょっと可哀想な感じもするけど、巨チンの上に乗せて、一緒に砦に向けて、巨チンが走る。


 さてっと! それじゃあひと暴れと行こうかなっと――

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