60話
「度重なるご無礼、本当に申し訳ありませんでしたぁあぁ~~~~~~~~!」
で、うん。何だろうねコレ。
とりあえず全員相手し終えて、さぁどうしよっかなぁとか考えてたら、こいつら起き上がり始めてね。
かと思えば長の周りに集まりだして、なにかコソコソ話しあってんなぁと思ったら――
突然あたしの前に一斉に並びだして、まぁ、この有り様ってわけだけど。
てか、ゴブリンの奴らも土下座ってするのな。なんか地面に頭を擦り付けそうな勢いだよ。
ちなみにペチャに関しては目を丸くさせて呆気にとられている感じだね。
「う~ん。いや、まぁ別にいいよ。そんな真似しなくて」
とは言え、ずっとそんな頭下げられっぱなしもね。
「なんと!」
うぉ! 長が気持ち悪いぐらい目を見開いて頭を上げてきたね!
「我々をお許し頂けると?」
「え? あぁ、うん。まぁね」
正直試練の事はあるけど、まぁこんだけやってくれてるなら、後は話で何とかなりそうだしね。ソレに――
「流石は神様だ! いや! やはり貴方様は我々が思った通りの御方です!」
……はぁ? 神様? て、またソレかよ。
「え~と、神様って?」
まぁ一応聞いておく。前みたいに股を光らせたわけじゃないしね。一体何がどうなったらそういう話になるんだか。
「またまたご謙遜を~。判っておりますよ。貴方様は我々の崇拝する大地母神の生まれ変わりなのでしょう?」
いや違います。
「何せ神様は、我々の恵みを引き出した上、あのような至福の瞬間を与えてくれたのですからな! これはもう大地母神様のお生まれ変わりとしか思えません!」
「そうだ!」
「神様が降臨してくれたのだ!」
「大地母神様バンザ~~~~イ!」
うん。なんか凄い盛り上がりようだね。流石にここで違いますと口にしづらいし、まぁそう思ってるならそれでもいっか。
まぁ肯定も否定もしないでおくけど。
「ところで、その恵みって一体何を言っているのかなぁ?」
とは言え、ここだけは気になるんだよねぇ~。
「またまた~神様ときたら~」
どうでもいいけどこのゴブボン、口調が妙に碎けてきてね? まぁ別にいいけど。
「先程我々から搾りだしてくれたではないですか! 本来あれは大地への恵みとするものですが、それをあのような形で、しかも……これほどまでに気持ちがいいとは――正しく神だからこそ出来たこと!」
…………うん。とりあえず話を整理すると、こいつらのいう恵みってのは出すもので、しかもあたしがさっき搾りだしたものらしいね。
て、事はだ――
「もしかして……これの事かい?」
そう言ってあたしは、自分の身体にこびり付いたネットリしたものを指さす。
「そうです! それこそが正しく恵み!」
「……いや、てかコレ只の精液だろ?」
「なんと!」
うぉ! またなんか目を見開いて、血走ってるし、ちょっと怖いんだよなこの目。
で、勢い良く他のゴブリンに身体を向けてっと。
「皆のもの聞いたか! 我らが恵みと呼んでいたこれは【聖液】というらしいぞ!」
「聖液……聖液!」
「なんと神々しい響きだ!」
「さすが神様だ! 聖液とはすばらしい!」
「聖液!」
「聖液!」
「聖液!」
「聖液!」
「聖液!」
…………なんか一斉に精液コールが沸き起こってるね。てか微妙にどこか間違ってる気がするし、ペチャは顔を真っ赤にさせて俯いてる。て、ウブすぎだろ!
「いやぁ流石神様です。まさかこのような名称があったとは、考えにも及びませんでした」
なんか両目が倒れた三日月みたいになって嬉しそうだねぇ。すっげぇ勘違いされてるっぽいけど。
「なぁ? ところでまぁこの精液なんだけど、あんたらもこれで子供作ったりするんじゃないのかい?」
「……? はて? それがいまいち私どもにも理解できないのですが、これは神様も知っての通りあくまで大地への恵みですからな」
……うん、なんだろうこの感じ。言ってることがわかるような、でも知りたくないような……。
「何せ我々は神様の与えてくれたこの聖液があるからこそ! よりよい田畑が作れるわけですからな!」
「……ねぇ、ちょっとその精液ってのどうつかってるのか教えてもらっていいかな?」
もうここまでくると完全に怖いもの見たさだけどね。
「はて? 神様であればそれぐらい知っておるかと思いましたが?」
この対応はちょっと腹立つね。
「いや、あたしだって全て覚えてるわけじゃないよ。転生だからね」
「ああ成る程! そういうことでしたか! 失礼致しました。ただ、今は田も畑もないので、フリになりますが宜しいですかな?」
意外とあっさり納得してくれた。もう完全に信用されてる感じだね。
「うん。それでいいよ」
判りました! と妙に張り切って長が何体かのゴブリンを呼びつける。
「まずはこうやって田畑を耕します」
「ふむふむ」
しっかりジェスチャー交えてやってくれるのな。
「そして耕し終えたら我々でその場所を囲みます」
「成る程ね」
「そして作物の恵みを願い、神様にお祈りいたします」
意外とそういうのしっかりしてんだな。
「そして祈りが終わった後、田畑に向かって一斉に聖液を――ブッカケるのです!」
そこだけ表現がド直球だなオイッ!
てかなんだよブッカケって! 顔射ならず畑射や田射ってか! いや田射に関しては言い方がちょっとちけぇけど!
しかし参ったね。まさかあたしに注ぎ込まれたコレが田や畑の肥やしみたいになってるなんてね。
まぁ大丈夫なんだろうけど。
「――めだ……っと――れは、悪……夢――んだ……」
なんかペチャが体育座りみたいな格好でブツブツ言ってるね……。なんだろう? やたらどんよりとしてるよ。
……まぁ大人しいからいいか。
「ところであんたらゴブリンは、そうなるともう増える事はないのかい?」
精液が子を生むためのものじゃないとなると、その辺が謎なんだよねぇ。
「いえいえ。それでしたらご心配には、いやそこまで安心出来る話でもないのは確かですが、我々の死した肉体は畑に埋める事で新しい命として生まれ変わるのです」
……それは流石に判りようがないねぇ。
「畑ならどこでもいいのかい?」
「いえ! それは勿論我々が耕した畑でなければいけません!」
「……という事は?」
「はい! 我々が聖液をブッカケた田畑のみで、ゴブリンは生まれ変われるのです!」
握り拳を作って力強く言ってるけどね。
うん、あたしゃゴブリンに生まれてなくて良かったと心から思うよ。
「でも、そうなるとやっぱ数は増えないよね?」
「あ、いや、一つの死体から複数現れる場合もあるので一応は増える事は増えるのですが……ただ神様も知っての通り、人間ども、あ、勿論神様以外の下衆な人間の事ですよ?」
うん。まぁいちいちこっちの顔色窺わなくてもいいっての。
「大丈夫だから続けて」
「はい! その人間によって我らの育てた田畑が奪われてしまい、それで現状は数は確かに減るばかりであります」
あぁ成る程ね。ちょっと顔も伏せて哀しいです! て感じかな。
……さてっと。大体話しは聞いたけどねぇ。うん、後はこれからの話ではあるんだけどねぇ……。
「おい」
一応試練って事になってるしね。まぁそうなると――
「おい! 聞いてるのか!」
て、うん? あぁなんだペチャか。いつの間にか隣に来てたんだね。
てか立ち直ったんだ。なんかブツブツ言ってたけど。
「それで一体貴様はどうするつもりなのだ?」
うん?
「神様」
て、なんだこっちもかよ。
「何?」
「こいつは一体なんなのですか? 見ていると随分生意気な素振りを神様に振るってるようにも見えますが?」
「誰が生意気だ! ふざけるな! 下等なゴブリンにそんないわれをうける覚えはない!」
おいおい、なんでこいつはこうなのかねぇ?
「下等、だと? クッ! 神様! いくら神の奴隷とはいえこの者は少々口が悪すぎます!」
「な、だ、だれが奴隷だ誰が!」
う~ん、なんかゴブリンの中で勝手な設定が出来上がったみたいだけど……まぁいっか。悪い気しないし。
「こいつとはまだ日が浅いからねぇ。まぁ許してやってよ」
「クッ! 貴様! 調子に乗るな!」
はいはいっと。
「で? あんたは何?」
薄目でぶっきらぼうに聞く。あ、なんかちょっと悔しそう。
「だから! 貴様はどうする気なのだ! まさか目的を忘れたわけではないだろうな? こんなゴブリンと和気藹々としている場合では無いだろう!」
右手を横に振るいながら怒鳴りつけてきたね。全くイライラし過ぎだっての。カルシウム足りてねぇんじゃないの?
まぁとはいえね。解決策はもう決めててね。
「それなら大丈夫だよ」
大丈夫? と怪訝な顔で聞いてくるね。
でもまぁとりあえず。
「なあ。あんたらここら辺だともう住むところないんだろ?」
長に向かって問いかける。さっきまでの話だと、住むところが無いどころかヘタしたら絶滅の危機って感じだしね。
「……確かに人間どものせいで我々は住処を次々に奪われております……」
うん。だよね。だからあたしの中ではすでにすることは決まってたわけで。
で、頭を垂れてどこかショボンとしてる長に向かって言ってやる。
「だったらさ、この際だから引っ越す気はないかい?」




