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第二話 弱小上等 後編

魔法学校工業科

第二話 弱小上等後編


 昔から父の鍛冶場を覗くのが好きだった。

 右腕に持つハンマーは、伝説を生み出す槌。左手で支える刀身は未来の武士へと送る伝説の剣。


 そう伝えられてきた。


 そんなロマン溢れる工業に俺は憧れを持った。


「……フェア、魔法学校に受かったそうじゃねーか。」


 パチパチと燃える火を背景に、俺にそう一言。

 正直、誇らしいことではあった。だが魔法学校ヂーリムは蹴落としが美学を謳っている。


 競争なんていままでしてこなかった俺には、闇深く聳え立つ敵の城のようだった。


「ま、まあな。」


 そんな一言しかでなかった。


「……お前の部屋に、入学祝いを置いておいた。それはきっと、これからのお前を成長させてくだろう。」


 カン、カンとまた沈黙の作業が始まった。


 そうだ、俺には競う相手がいなかった。


 ーーーーそんな夢もすぐに覚める。


「……っと、ここは。」


 少しの頭痛に頭を抑え、少しずつ目を開ける。

 

「起きたか、フェアくん。」


 聞き覚えのある声。どことなく父さんと似ている。

 体を起こし、周りを見渡してみる。


「……なんだこの機械の数は!!」


 目が飛び出しそうになった。古い織り機から最新のミシン。

 旋盤に電鋸の数々。製作途中のような大きな武器もあった。


「鍛冶場もある。」


「君の父親に譲ってもらった道具もある。」


 顎髭を触り、そんなことを言った。

 記憶が正しければ、この人は俺の叔父で工業科の担任。


「……なんで、清掃員の振りなんかしてたんですか?」


 一つの疑問を打ち明ける。


「……ご存知の通りだと思うが、工業科の扱い方はあんな感じだ。職員間での俺の立場も危うくてな……」


「つまりー、魔法科の奴らにこき使われてるってこと!候〜」


 刀の手入れをする美少女。派手な金髪に開けすぎかというくらいの胸のボタン。


「ギャルが刀。それも適当な武士言葉。」


「私、東部出身の織田おだ鎧奈がいな!よろ〜。候〜」


 元気な様子。見るに、おそらく刀鍛冶の家系だろうか。


「よろしく頼む!!」


「ま、そう言うわけで俺もかなり大変でな。とりあえずよろしく!!」


 魔法科の生徒は工業科の教師の使い道まで左右させてしまうのか。 

 とにかく、今は行動しなければならない。グレンデレラに会って聞きたいことがある。


「……と魔法科に話したい奴がいるんです。ボルト……先生、魔法科の教室はどこですか?」


「まあまあ、休んどけよ。学校の説明だってあるんだからよ。」


「今じゃなきゃ、ダメなんです。」


 工具箱を持ち、教室を出る。

 

「お、おいちょっと待てよ!!」


「おもしれー男で候〜。」


 俺の目標は、この学校を卒業すること。 

 

 ーー気になることはそのままにするな。


 そんな父の言葉が頭の中に引っかかってる。 

 授業中なのだろうか、あたりに生徒はいない。

 

 走っている瞬間、右方向から無数のナイフが俺を襲う。

 動きを止め、前方を向く。

 剣を引きずる音、そして顔面を包帯でぐるぐる巻きにした男が立っている。


「てめぇ。やっと見つけたぜ!!」


「その声は、リアル・ゴー○ド先輩!?」


「リアル・シルバーだっ!!」


 紫の光が五つ。そこから順に剣、ナイフ、斧、槍、弓と続々と出現する。

 なぜ、授業中にこの人は廊下に出ているのだろうか。


 息を荒げる彼の右手を見てみると、一枚の紙。

 そこには保健室利用証明書と記されている。


「……あの、安静にしていた方がいいのでは……」


 風を切る音と共に、五つの武器が俺を捉える。

 すぐさま銃を構え、右に歯車を回す。

 迫る武器たちに狙い、引き金を引く。


「……先輩と俺は相性が悪い。」


 こっちは何度も武器を作ってきた。鉄に関しては常人より詳しい。

 放った弾丸が特殊な音波を放つ。


「……なっ!武器が……こちらに!?」


「ごめんなさい、この先を行かせてもらいます。」


 全ての武器が先輩の方に跳ね返っていく。

 目に映る魔法科一年生の教室。


 一度規律正しく立ち止まる。


「失礼します!!」


 いない。教室には誰一人いなかった。


「一年なら早速実力検査に行ったよ。」


 後ろからまた剣が風を斬る音が聞こえた。

 まだ生きていたのか。血だらけになった先輩。


「もう逃げるところは一つか……。」


「貴様ぁぁぁ!!待やがれぇぇ!!!!」


 窓から身を乗り出す。下はちょうど実力検査をしている一年生たちがいる。


 空中の中、シルバー先輩は無数の剣を生成し発射する。


「なんか、空から降ってきてね?」


「シルバー先輩じゃない?」


「……工業科?」


 今度の攻撃は広範囲によるもの。

 少し侮っていた、鉄を生成する魔法。


「この量じゃ、そんなピストルで対処できるはずがないなぁ!!」


 引き金を二度引く。

 下の生徒たちは驚く。

  

 数百本の剣が周りを包み、針串刺しの状況になっている。


 弾丸は剣の間をすり抜け、先輩の方へと向かい続ける。

 だがその弾丸にはもちろん相手は気づいている。


「こんな弾丸、僕の一太刀でぶっ壊してやるっ!!!」


「それはどうかな。」


 弾丸の先が開き、また小さな弾丸がさらに発射される。


 父が言っていた、すべて奇想天外を貫けと。


 その先にあるのは、シルバー先輩……ではなく、学校の貯水槽。


「はっ?」


 水が溢れる。

 学校の壁に小型ピッケルを刺す。


「うぁぁぁぁぁぁぉぉぁっ!!」


 先輩は、そのまま落ちていった。


「シルバー先輩が落ちてきたぞ!!」


「ぐっちゃ、ぐちゃじゃん!!」


 その場の生徒は驚く。


「工業科!!」


 声が下から聞こえた。

 壁に張り付く男という奇妙な光景。

 下を見ると、グレンデレラがこちらを見ていた。


「お前、卒業するのは私と言っていたが、お前をライバルとして見ていいのか?」


「……はぁ?なんで、私があなたのライバルになんかに……」


 また嫌そうな顔をした。


「お前は強い。工業科は弱小上等。俺は魔法科を超えてみせる!!」


「……ふっ、じゃあ、夢みがちなあなたに魔法科の実力をとくと見せてあげますわ。」


 その一言が出た。彼女はもっと呆れた表情へと変わった。

 だが、先ほどとは違う。ライバルとしての俺を見てくれている。


「一ヶ月後に、一年生全体で一番を競う行事があります。またお会いできることを楽しみしていますわ。」


 彼女はまたそっぽを向く。


「魔法なかんかよりも、ずっとすごいもの見せてやるからなぁ!!」


「もうすごいじゃない。貯水槽からの水が虹に変わっていますわ。」

 

 なにか喋っていたようだが、何も聞こえなかった。

 それよりも、新たな目標ができた。来月の行事とやらで彼女を超える。


「グレンデレラ、あの人彼氏?」


「結構かっこよない?」


「違いますわ!!」


 そんなこんなで波瀾万丈な一日は終わりを告げた。

 

 今回の被害ー貯水槽

      ー魔法科二年生重症


 もちろんだが、この報告書は職員室に提出されることになった。


 フェア・クローズ。早くも退学の危機である。


つづく

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