初めましてのご挨拶
2025年、明けましておめでとうございます。
今年、新たにお目見えする新作のキャラクターたちの、一足早いお目見えを、どうぞご覧くださいませ。
◇あてんしょんプリーズ◇
◯涼風作品読者様にはお馴染みの、何でもありな謎空間タイムです。
◯今回が「初めまして」なキャラクターがそれぞれの作品より二名ずつ、計四名おりますが、本編開始前からこちらでキャラ崩壊しておりますので、これが作品内での姿とは、あまり思わないでやってください。
◯いちおうは進行役として呼んだディアナ&カイ(言わずもがな、『悪役令嬢後宮物語』より)ですが、本人たちもまぁまぁ我が強いため、進行役(笑)くらいに思っておいてください。
◯キャラの記憶が消えるのを良いことに、メタ発言を自重しておりません。新作の説明はしてもネタバレはありませんが、逆に言えば、物語の進行と全く関係ない裏事情は出てくる可能性が大です。
◯三作品クロスオーバーなので仲良くお喋りしておりますが、全く別の世界線同士で生きる彼らは、もちろんこの先、本編で出会うことはありません。
◯ネタバレはもちろんありませんが、新作二つの簡単な概要とあらすじ、ざっくりしたテーマは語られています。そういったものを一切抜きにして、純粋に新作を楽しまれたい方は、三ヶ月後の本編開始まで、このお話を読むことはお控えください。
以上の注意書きを読んで、「どうやらいつも以上に地雷らしいぞ?」「これはちょっと受け付けないかも……」と思われた方は、このまま静かにページを閉じ、読まない自由を行使しましょう。
注意書きをご覧になった上で、「いつもの涼風の悪ふざけだな、付き合ってやるよ」「むしろ謎空間ネタ好きなんだよね~」と思ってくださる、海より広い心をお持ちの読者様。久しぶりのなろうがこんなネタで恐縮ですが、お楽しみ頂ければ幸いです。
それでは、どうぞ。
***************
そこそこ広い空間が、華やかに飾り付けられている。目立つのは正面(入り口がないから分かりづらいが、たぶんきっとおそらく正面)に掲げられた、『WELCOME to Ryofu Family!!』のガーランド。
毎度お馴染み丸テーブルには、パーティ仕様の軽食が華やかに盛り付けられている。一部がやたら雅やかな〝和〟テイストなのは、とある作品世界からの参加者への配慮だろうか。
そのテーブルの前にて、二人の男女が、物馴れた様子で一礼する。
ディアナ(以下ディ):2025年、明けましておめでとうございます!
カイ(以下カイ):今年も……というか、今年こそよろしくお願いします、だね。そして、これまでの数年、待っててくれてありがとう。
ディ:ホントにね……作者の事情も知ってるけれど、知ってるからこそ、今回は本当にダメかと思ったわ。
カイ:さすがに、あんな中途半端なところで終わったら、読者さんも俺たちも納得できないもん。作者もそこは分かってるから、何とか立て直そうと必死ではあったけど。
ディ:それでも、散々ヤキモキさせられた側からすると、素直に「頑張ったね」とは褒めてあげられないのよね~。
カイ:ね。しんどかった時期が長かったのも確かだけど、途中あちこち浮気してたのも知ってるし。
ディ:らっぷ? で戦う世界の人たちとか、ある日突然、人間が石になっちゃった世界のお話とか?
カイ:あったね~。インプットが大事なのは知ってるけど、それが創作に生かされるのも分かるけど、もうイイ大人なんだから、さすがに程度は弁えてほしいっていうか。
ディ:ホントそれ。
毎度恒例、作者disタイムを経て、ディアナとカイはテーブルに座る。
カイ:で、今日の謎空間座談会? の趣旨なんだけど。ディー、作者から何か聞いてる?
ディ:今回は珍しく、注釈と進行スケジュールが貰えたわ。あの作者も、ちょっとは学んだのかしらね。
カイ:あ~……最後の座談会、父さんたちのか。そりゃあ、アレで学ばないのはただのバカだよ。
カイが手元で操るのは、これまたお馴染み、リンゴのマークのiPad。謎空間のご都合主義満載な、作者のiPadと内容がリンクしている、とっても便利なツールである。もちろん、一人一台、支給済み。
カイ:で? 進行スケジュールによると?
ディ:開会の挨拶の後は、各作品ごとに自己紹介、ですって。でも――皆さん、どの程度の説明をもらって、ここへ連れて来られました?
ここでディアナは、華やかで楽しげな謎空間とは一ミリもそぐわない、カチコチに固まった表情で椅子に座っている(約一名のみ、支給されたiPadを弄くり回しているが)、自分たち以外の参加者四名へ話を振った。
振られた人々は、それぞれ互いに知っている相手と、恐る恐る視線を交わして。
葵(以下、あお):……眠っていたら、いきなり「これからお二人を、別作品の登場人物とお話しできるお部屋へご招待します。存分に語らってきてください」と声がして、気付いたら、ここに。
光(以下、ひか):私も、そんな感じだった。あれは夢ではなかったということかな?
ディ:あー……やっぱりいつもの、雑な丸投げ仕様だった……。
カイ:これが夢か夢じゃないかは、正直なところ、俺たちにもよく分かってないんだけど。ここでの記憶は〝本編〟での俺たちには残んないから、まぁ、夢扱いで問題ないと思うよ。
あお:は、はぁ……。
ひか:そういうもの、か。
ディアナとカイは知りようもない、小袿姿の少女と、直衣姿の少年が、場の空気に押される形で頷けば、残りの二人のうち一人も、同じように頷く。銀色の長い髪が印象的な、スッとした顔立ちの美しい少女だ。よくあるブレザーの制服を着用している。
つむぎ(以下、つむ):私も似たような文言で呼ばれた。察するにこの空間は現実のものではなく、あなた方が〝作者〟と呼ぶ者の都合によって作られた、何でもありの時空ということか?
カイ:あ、うん。だいたい合ってる。
ディ:この空間で死んでも生き返るし、この空間での記憶は本編に戻ったら残らないし、この空間にいる間は、作者の中で見聞きしたことも覚えてるし。iPadの使い方も説明される前に知ってたし、改めて考えると、ご都合主義に満ちてるわよね、この空間。
カイ:その全部を〝謎〟の一言でまとめて押し通す、作者の図太さにびっくりだよ。
ディ:それは心底、私も同感。
亘矢(以下、コウ):……すまないが、ちょっと良いか?
ディアナとカイが謎空間の謎について話しているところを、最後に一人残った――この座談会が始まってからずっとiPadを弄っていた人物が遮った。
カイ:ああうん、ごめんね、話の腰を折って。何?
コウ:自己紹介も、座談会も、結構なのだが。――一つだけ、どうしても気になることがある。
ディ:はい、何でしょう?
堅物風のメガネをかけ、つむぎと同じブレザーの制服をきっちり着ていたその人物は、メガネを外して前髪をくしゃりと崩してから、弄っていたiPadの画面を、集まった全員へ見せて。
コウ:このページに、〝作者〟の作品更新履歴があるが。――一番新しい『悪役令嬢後宮物語』とやらの最終更新日が2021年4月26日って、もう四年前だぞ。大丈夫なのか、俺たちの〝作者〟は。
鋭い指摘に、当事者のディアナ&カイだけでなく、集まった全員に沈黙が落ちた。
誰かが何かを言わねばならない、という使命感のもと、ディアナがそろそろと右手を挙げる。
ディ:えぇっと、ですね。その『悪役令嬢後宮物語』というのが、我々の世界なのですが。あ、申し遅れました。わたくし、その世界でいちおう主人公という立場を頂いております、ディアナ・クレスターと申します。どうぞ、ディアナとお呼びくださいませ。
カイ:俺もその世界の住人で、名前はカイ。立場はまぁ……読むなりして察して?
ひか:読まずとも分かるよ。そちらのディアナ嬢の婿だろう?
カイ:む……!? 新しいね、その単語。
ディ:私たちの世界にもなくはないけど、結構な特殊用語だもんね……。
ひか:違うのか?
カイ:まぁ……広義的には、間違ってない、のかな?
あお:光。もしかしたら、お二人はまだ、ご結婚されてないんじゃない?
ひか:あぁ。だとしたら、恋人になるのか。
カイ:……広義では間違ってないから、それでいいよ、もう。
ディ:世界観が違う方に、関係性をご説明申し上げるのって、こんなにも難しいのね。
カイ:どうせここでの記憶は無くなるんだから、恋人でいいや。ここでくらい欲張っても、バチは当たんないでしょ。
ディ:まぁ……あなたが良いなら、私も構わないけれど。
少し頬を染めて視線をずらすディアナと、役目を放ってイチャイチャしたくなったカイだが、それをすると座談会が永久に終わらず、謎空間から帰れない。自分たちの本編状況がさほど悠長に構えてられないことを理解している彼は、どうせなら一日も早く本編でイチャイチャしようと、与えられた役目へ戻ることにした。
カイ:えっと、で、何だっけ。俺たちの作者が大丈夫かどうか? んー、基本は大丈夫じゃないんだけど、何だかんだ、大丈夫なんだよねぇ。
コウ:……不安しかない返しだな?
ディ:基本的に計画性は皆無ですし、思いつきのまま突っ走りますし、それで自分の首を絞めてのたうち回ること数知れずですし、我々(キャラクター)を追いかけて執筆するタイプの創作者なので「思ってたのと違った!」ばかりで調整に追われてて、あんまり大丈夫要素が見当たらない作者なんですけども。
カイ:それでも、何だかんだ、こうやって俺たちの話をちゃんと聞いて、物語を追いかけることを諦めない作者でもあるからね~。時間は確かにめちゃくちゃかかるんだけど、今のところ俺たちもこうして書いてもらえてるから、大丈夫かなと思ってる。
コウ:……今の話だけで、苦労させられそうな作者に生み出されたことは分かった。
つむ:その話からすると、自己主張は強めに行った方が良さそうだな?
ディ:それは、えぇ、間違いありません。
カイ:むしろ作者の体乗っ取って書かせるくらい主張しないと、すーぐ浮気するからねぇ。
ディ:最近じゃ、ドラマとかアイドルとか、三次元に趣味の幅を広げ出してますので、主張は絶対必要です。
つむ:なるほど。参考にしよう。――それとディアナ嬢、私たちに気を遣ってなのだろうけれど、そこまで丁寧な話し方をされる必要はないぞ? 少なくとも、我々には。なぁ、コウ?
コウ:あぁ。こんな茶番に付き合わされてる時点で、俺たちも最初から取り繕ってないからな。
ひか:ディアナ嬢はおそらく、その立ち居振る舞いから、異国の高貴な姫君でいらっしゃるのだろうけれど。カイ殿とお話ししているときの口調も決して無礼なものではないし、話しやすいようにしてもらって構わないよ。ねぇ、葵?
あお:光が良いなら、もちろんわたしも。……というか、ディアナ様は主に、あなたを気遣って丁寧に話されていたのではないの?
そうよね? と穏やかに問う黒髪美女の瞳には、理知の光が宿っている。
これまでの会話に参加していなかったのも、一人静かにiPadを操作し、情報収集に努めていたから、らしい。
平安装束&iPadという組み合わせにミスマッチを覚える現代高校生組が何とも言えない表情を浮かべる中、彼女は淑やかに礼を執った。
あお:皆さま、初めまして。こちらのiPadによりますと、『源氏物語の葵の上に転生してしまったので、どうにかして呪殺ルートを回避しようと思います!』という作品世界から参った――ことになるのでしょうか。藤原左大臣が娘、葵と申します。
カイ:うわぁ……いかにも〝なろう〟な作品名……。『双子の姉が異世界で逆ハー築いて帰ってきたんだが』より長くない?
ディ:あ、注釈あった。作者も長いのが嫌で、略しに略して『あおてん』って呼んでるって。
カイ:そこに注釈ついてんの? 相変わらず感性ズレてんね、作者。
カイとディアナが呑気にタイトルへの感想を述べている横では、葵の〝自己紹介〟を聞いた現代高校生組が一気に顔を強張らせている。
つむ:源氏物語って、あの〝源氏物語〟か?
コウ:左大臣の娘の〝葵〟って……〝呪殺ルート〟って……要するに、葵の上?
あお:あ、ご存じでした?
つむ:我々の世界設定はいちおう、現代日本なのでな。〝源氏物語〟は中学古文の必須単元だ。
コウ:俺たちのバックボーン的にも、日本が世界へ誇る名作古典文学を知らないのは、いささか都合が悪い。有名部分の原典と、大まかなあらすじは頭に入ってる。
つむ:待て、コウ。さっき葵嬢は、そちらの少年のことを〝光〟と呼んでいなかったか?
恐ろしいことに気がついた、という表情で直衣姿の少年を凝視する現代日本の高校生組と、何をそんなに深刻なことがあるのか分からない異世界組とで、温度差が凄まじい。双方の感覚を理解できる葵に至っては、もはや諦め気味の苦笑顔である。
果たして、高校生たちから視線を向けられた直衣姿の彼は、よく分からない状況に首を傾げつつ、自身の名を告げる。
ひか:……私の名前は、何か特別な意味があるのかな? 確かに、帝の子でありながら源姓を与えられて臣下へ降ったというのは、珍しいかもしれないが。光なんて幼名、ありふれてるだろう。
つむ:やっぱり〝光源氏〟……! え、待ってくれ。どういう話なんだ、そっち?
コウ:ここに来てるってことは、この二人がその『あおてん』? の主要キャラなんだろ? 光源氏と葵の上が主要キャラとか、バッドエンドまっしぐらなんじゃ……。
ひか:聞き捨てならないね? 私と葵が主軸だと、何故悪い終わり方になると?
あお:あ、えっとね、光。そこは色々、説明の複雑な事情があって……。
何故かは知らないが、突然、場が騒然となった。光と同じく〝源氏物語〟とやらを知らないディアナとカイは顔を見合わせ、ひとまず割って入ることにする。
ディ:すみません。『あおてん』の筋書きについてのお話は、また後ほど。今はあくまで、自己紹介の時間ですので。
カイ:そっちの二人の名前と、あと作品名も教えて欲しいな~。
ディ:葵さんと光さんもそうだけど、お二人も見たことない衣服だから、気になってるの。
カイ:ね。動き易そうで羨ましい。
進行役に振られた二人は、それぞれのiPadに視線を落とし、操作して。
つむ:えぇと……私たちの作品は、どれだ?
コウ:あ、たぶんコレじゃないか?
つむ:これか。えぇと、初めまして。――『継母と、白雪姫と、ときどきサポートキャラ』の世界から来た、飯母田つむぎと申します。……何だこの題名。サポートキャラ?
コウ:同じく、狩野亘矢だ。好きに呼んでくれ。……本当に意味が分からないな。継母と白雪姫はともかく、サポートキャラ?
つむ:待て、コウ。私はそっちも分からないぞ。継母と白雪姫って、童話のアレか?
あお:七人の小人が出てくる、〝白雪姫〟ですか?
つむ:そうそう。でも、あの話にサポートキャラなんていたか?
あお:……わたしの記憶にある限り、居ないですね。
つむ:だよなぁ。〝シンデレラ〟ならギリ、魔法使いがサポートキャラと言えなくもないが。
カイ:……なんで作品の、たぶん主要キャラな人たちが、自作品の題名の意味分かってないの?
ディ:えぇと、こっちの題名にも注釈がついてる。まず略称があって、こっちは『ママしら』。で、副題もあるっぽくて……『~販路開拓のため金持ち学園の生徒になったら、見知らぬ美少女から「お継母様!」と呼ばれて懐かれたのですが~』らしいわ。
カイ:うわー、その副題の長さも〝なろう〟っぽいね~。
うんうん頷くカイの前では、首を捻っていたつむぎと亘矢がぴたりと動きを止めていた。
つむ:……副題の方には、めちゃくちゃ覚えがある。確かに、私はこの作品の主人公らしいな。
コウ:副題に覚えがあっても、正タイトルの意味が分からん現実は変わんねぇけど。嫌な予感しかしないぞ、コレ?
そう呟くやいなや、亘矢は素早くiPadを操作し、おそらくは自分たちの作品を読み始める。なかなかの速読ぶりにディアナが感心していると、つむぎが心配そうにこちらを見つめてきた。
つむ:……コウがネタバレまっしぐらなことをやらかしているが、大丈夫なのか?
ディ:ここで話した内容は読者様の目に留まってしまいますので、感想やストーリー展開についての発言はお控え頂きたいですが、読むだけなら構いません。先ほども言いましたが、ここでの記憶は本編へ戻されると同時に消えてなくなるので。
つむ:ライトノベルもびっくりなご都合主義だな……。
カイ:謎空間ではいくらでも好き勝手して良い、っていうのが作者のマイルールみたいになってるからね~。
つむ:付き合わされる方の身にもなってほしい。
ディ:それは、そう。
ディアナが深々と頷いたところで、とあるページまで読み進めたらしい亘矢が、盛大なため息をついて突っ伏した。よく見ると、その肩はワナワナと震えている。
つむ:コ、コウ?
コウ:マジで作者許さねぇ……!
つむ:ええぇ!? 何を読んでそうなったんだ!?
コウ:取り敢えず、つむは読まんでいい。どうせ忘れるんだ、ここでは適当に楽しんどけ。
つむ:そう言われても、さすがの私も気になるぞ……?
再び場が混沌としてきたところで、ディアナは進行役の使命を思い出し、スケジュールを開く。
ディ:――はい! それでは、皆様の顔と名前が一致しましたところで、次のトピックへ移りたいと思います!
カイ:だいぶ強引に進めたね?
ディ:どっちのお話も、強引に進めないとどうしようもない気がしてきた。
カイ:それは確かに。……で、次の話題は何?
ディ:ズバリ――『それぞれのお話のあらすじと、執筆テーマ』!!
カイ:あらすじはともかく、普通こういう場で執筆テーマ出す?
ディ:出さなきゃ場が保たないと思ったんじゃない?
カイ:いや、保つでしょ。だって、自己紹介だけで、既に七千字越えだよ?
ディ:あの作者はそろそろ、自分の書くキャラの濃さを理解すべきよね。
カイ:ね。新作の方々なんか、俺たちが霞む勢いで濃いもん。
カイのコメントには、四者一様の「格好からして濃い人がなんか言ってる」の視線が向けられるが、そんな視線に怯む男が、『悪役令嬢後宮物語』でメインを担えるわけもない。敢えてスルーし、カイは視線を葵と光の方へ向ける。
カイ:じゃあ、まずはそっちの……『あおてん』組さんからお願いしようかな。正直、見たことない服すぎて、めちゃくちゃ気になってるんだよね。
ディ:私も。あと、『ママしら』組さんの反応も気になるわ。〝源氏物語〟だっけ? 私は知らないけれど、どうやらそちらの世界では、すごく有名なお話みたいだし。
進行役に振られた葵は頷いて、手元から一枚の紙を取り出す。
隣の光が驚いて、その紙を覗き込んだ。
ひか:葵、それ、何だい?
あお:わたしも知らない。気付いたら持ってたの。
ひか:なになに……『あおてん』あらすじ?
あお:あぁ、さすがにこれは登場人物本人から発表しなさい、ってことかしら?
ひか:そういうことか。読めるかい?
あお:えぇ、大丈夫。――じゃあ、読みますね。
葵の発表を、ディアナたちは楽しみに、『ママしら』組は固唾を飲んで見守る中、彼女はゆっくりと口を開く。
あお:――超有名な古典文学〝源氏物語〟の登場人物、〝葵の上〟をご存知ですか?
左大臣家の姫として生まれ、主人公である光源氏の正妻に選ばれながらも二人の間に愛はなく、子どもが宿ったことで少しずつ打ち解けるも、浮気性な夫が手をつけていた女性の一人に恨まれて呪われ、出産と引き換えに命を落とす――って冗談じゃない!!
昨日まで気ままに生きてたアラサーオタクが、何をどう間違えば〝葵の上〟なんかに転生するの!? このままだと私、二十代半ばで呪殺ルートまっしぐらなんですが。自キャラの行動どうにかするだけじゃ回避不能な呪殺ルート、既に詰み感ハンパない!
それでも、三十前にあの世行きが決定しているのは流石に辛いし、可愛い我が子を遺して死ぬのも嫌なんで、ここは一つ腹を括って、呪殺ルート回避に邁進しようと思います!
中身アラサーオタクな〝葵の上〟が生き残りをかけて超有名古典に挑む、愉快痛快原作ブレイクストーリー!!
実に流麗で聞きやすい〝あらすじ〟の読み聞かせを終えて、最初に声を上げたのは。
ひか:何だい、それ!? 私、全然知らないよ!!?
カイ:またしても自作品のことを何も知らない主要登場人物さん……。
ディ:カイ、そのネタ、たぶんギリギリアウトよ?
カイ:これくらいは言わせてよ。あの作者、そろそろ連れてくるキャラ考えるべきだって。前の座談会にジュークさんがいたときも思ったけど。
ディ:あれはリクエストだったから仕方ない……って、それは置いといて。
ディアナは、混乱して頭を抱える光を見つつ、何とか場を回すべく葵を見る。
ディ:えぇとつまり、あらすじによると、葵さんには前世の記憶がおありになると?
あお:そうなりますね。
カイ:わ~、〝なろう〟では鉄板だけど作者的には珍しい設定来たね。
ディ:で、その前世世界に〝源氏物語〟という名作古典文学があって、葵さんはその世界のメインキャラクターとして転生した、と。
あお:メイン……かどうかは微妙なところですが。〝主人公の正妻〟という立場であることは間違いなくても、全五十四帖あるお話のうち、九帖目で死亡するキャラクターのことは、普通〝メイン〟に数えないでしょう?
カイ:〝主人公の正妻〟なのに九番目の話で死ぬの……? 何その話、どっかの修羅の国が舞台?
あお:舞台は、平安王朝期……と言っても分からないわよね……
つむ:――葵さんの転生前の世界は、〝日本〟と呼ばれる島国でな。島国だからか歴史が長く、〝源氏物語〟が書かれたのも千年以上前の話だ。当時の日本は〝平安時代〟と呼ばれていて、葵さんと光さんもその時代の服装をしている。〝源氏物語〟は、平安時代の貴族社会が舞台なんだ。
コウ:要するに、俺たちからすれば平安文学だが、〝源氏物語〟自体はその時代に生きた作家が、自分たちの時代を舞台に描いた現代小説ってことになるな。
『ママしら』組の説明は、さすがエンタメに慣れた現代日本人だけあって、とても分かり易かった。ふむふむ頷いたディアナは、カイと視線を交差させる。
ディ:とある小説に、序盤で死ぬキャラとして転生した主人公が、運命を変えるべく奮闘する……ざっくりとした筋だけ抜き出せば、まさしく〝なろう〟小説のテンプレと言えるわね。
カイ:問題はさぁ……この作者がテンプレを書いても、まず間違いなくテンプレにはならないところじゃない?
ディ:ならないでしょうね……だって。
ディアナがそっと目線を送った先には。
ひか:どういうこと? 葵との間に愛がないとか、私が浮気性だとか、……私の浮気相手に葵が呪い殺されるとか! 聞いていないよ!?
ディ:呪殺の原因らしい〝浮気性の夫〟がこの有様な時点で、たぶんテンプレからは外れてるのよねー……。
ひか:ねぇ、葵!?
あお:光、落ち着いて。それ全部、〝原作〟の話だから。〝源氏物語〟っていうお話の中の〝光源氏〟がやらかしたことで、光とは今のところ無関係だから、ね?
ひか:さっきから出てくる、その〝源氏物語〟とは一体……?
あお:あー……光、ちょっとその板貸して?
光に支給された葵は、ついついと慣れた様子でiPadを操作する。
その様子を見ていた『ママしら』組の二人が、呆れとも感嘆ともつかないため息を漏らした。
つむ:さっきも思ったけど……平安装束の姫君がiPadを使い慣れてるの、違和感が凄いな。
コウ:葵さんは現代日本からの転生者だから、慣れてて当たり前なんだろうけど。絵面がめちゃくちゃシュールだ。
ディ:あ、別に現代日本がどうとか関係なく、この謎空間であればiPadは使えますよ。
カイ:俺らも普通に使うもんねー。
コウ:……そういや冒頭で、カイが触ってたか。あまりに自然で見逃してた。
つむ:カイさんの格好は独特で、時代性とかも特にないから、iPadとも馴染むんだろう。――ところで。
つむぎが、iPadの画面を凝視し、プルプル震えている光を示す。
つむ:光くん、大丈夫だろうか?
ディ:葵さん、光さんはどうされました?
あお:えぇと……手っ取り早く〝源氏物語〟を知ってもらおうと、まとめサイトを見せたんですけど。
カイ:めっちゃショック受けてない?
ひか:う、嘘だ……こんな顔しか取り柄のないような最低男が〝私〟だなんて……!
コウ:……仮にも〝自分〟をすげぇディスるなぁ。
つむ:ま、まぁ、原作の〝光源氏〟は、お世辞にも良い奴とは言えないからな。仕方ない、仕方ない。
コウ:逆に、何がどうなってここに居る〝光くん〟が爆誕したのか、普通に気になるぞ。
ディ:それはまぁ、普通に本編を読んでもらって。
苦笑してネタバレを防止しつつ、ディアナはカンペをチラリと開く。
ディ:ちなみに、作者によると、『あおてん』の執筆テーマは〝目指せ光のヤンデレな光源氏と世話焼きお節介な葵の上による、本筋そのままな原作ブレイク〟みたいよ。
カイ:〝本筋そのまま〟と〝原作ブレイク〟が盛大に矛盾してない?
ディ:あの作者が一文で矛盾するのは、今に始まった話じゃないし。
カイ:まぁそうなんだけど。
コウ:……いや、それより冒頭の〝目指せ光のヤンデレ〟に突っ込むべきじゃないか?
つむ:病んでいるのに〝光〟とは……?
カイ:えー。そこは、だって。ねぇ?
カイが視線を向けた先では。
ひか:葵。私はこんな、女性を身勝手に扱うような最低男には決してならないと誓う。だからどうか、私を見捨てないで……。
あお:光……。
ひか:もしもこの先、私のせいであなたが呪われるような事態になったら、私自ら呪いの元を断つよ。――あなたを苦しめるものは、私がこの世に、残しておかない。
あお:そんな。光のことを心から愛している方かもしれないのに?
ひか:あなた以上の女性なんて、この世どころか、世界を渡ったって、私には見出せないからね。
歳下の甘えスキルを遺憾なく発揮しながら、葵が万一にも逃げ出さないよう、甘い言葉で自身の元へ留めようとする光の瞳には、天元突破した執着心しかない。病的なまでの執心を愛情というベールで美化して、相手が逃げる気を起こさないよう優しく囲むその様は、既に〝光のヤンデレ〟を体現している。
カイ:本編の何がどうなって二人の関係性がイマココなのか知らないけど、少なくとも光くんがテーマに沿ったキャラなのは間違いないかなって。
つむ:光のヤンデレと世話焼きお節介のカップルか……。
コウ:つーか、〝光源氏〟が〝葵の上〟にメロメロな時点で、既に本筋成り立ってなくないか? ここから何をどう展開させる気か、地味に気になるんだが。
ディ:まぁ、そこも本編を読んでもらいましょう。
視線の先では、ようやく落ち着いたらしい光が椅子に座り直し、一部始終を見られていたと自覚した葵が、頬を赤らめつつ頭を下げたところだった。
こういう場合、二人の世界へツッコミを入れるのは野暮だと理解しているディアナは、賢く進行役へと戻る。
ディ:では、続きましてそちらの……『ママしら』さんのあらすじをご紹介いただきましょう。
つむ:あぁ、分かった。――あらすじの紙はコレだな。
頷いたつむぎが、立ち上がる。
つむ:商売大好き飯母田つむぎは、花の高校2年生。夢は実家の和菓子屋の味を、世界中どこでも食べられるようにすること。次なる販路を開拓するため、金持ちの子女ばかりが集う全寮制高校『宝来学園』にて、日々精力的に販促活動に邁進中。学園の王子や、特別寮の有名人たちともいつの間にか知り合い以上になっているけれど、そんなことよりお菓子を売りたい。
と思ったら、入学式の朝、校門前で顔を合わせた美少女新入生から、出会い頭に「お継母様!」と呼ばれて纏わりつかれることに!? 子どもを産んだことも、養子を取った覚えもないですよ! おまけに、これまた見知らぬ新入生から、「最強の悪役令嬢とヒロインがなんで!?」なんて叫ばれるし……アクヤクレイジョウ何それ美味しいの? あ、ウチのお菓子は美味しいですお一つどうぞ。
――これは、前世の記憶なし無自覚チート女子高生が、前世の記憶まみれな人々に囲まれて、乙女ゲーム世界のフラグをばったばったと薙ぎ倒していく、お話。
読み終わったつむぎは、こてんとそのまま、首を傾げて。
つむ:……乙女、ゲーム?
あお:そちらはゲーム世界への転生でしたか。お互い大変ですね。
つむ:いや……あらすじにある通り、私は前世の記憶など、持ち合わせてはいないのだが。あぁ、あらすじの前半部分はその通りだな。
あお:ご実家が和菓子屋さんなんですね。お家の商売をお手伝いしているなんて、良い娘さんです。
つむ:ありがとう。しかし――乙女ゲームか。
つむぎが頷く横では、亘矢が苦虫を噛み潰したような渋面でディアナとカイに抗議の視線を向けている。……そんな顔で見られても、この座談会を企画したのは作者で、進行も作者が決めたのだから、ディアナとカイにはどうしようもないのだ。文句なら作者へ言ってほしい。
コウ:気にすんな、つむ。どっかの世界から見りゃ俺たちの世界はゲームなのかもしれんが、そこで生きてる以上、あれが俺たちの現実なのは変わらん。
つむ:いや、まぁ、それは『あおてん』組さんもそうだし、私もさして引っかかっては居ないのだが。――乙女ゲームって、あれだよな? 主人公キャラをプレイヤーが操作して、イケメンたちと恋愛する的な……。
あお:そうですね。その認識で間違いないです。
つむ:あれって、〝悪役令嬢〟とか、いたか?
あお:よくある、「実際の乙女ゲームには悪役令嬢なんて存在しない」問題ですね。そもそも真面目な話、〝令嬢〟と呼ばれるような女性キャラクターが出てくる乙女ゲームって、全体的に見ても少数派な気がします。
つむ:そうなんだよなぁ。ウチの学園はまぁ、あらすじにもある通り上流階級御用達みたいな側面があるから、女子生徒が〝令嬢〟呼びされるのも、ギリ不自然ではないんだが。しかし、〝悪役令嬢〟……。
少し考えて、つむぎは亘矢の方を見る。
つむ:配役とかビジュアルを考えるに、白雪さんが〝主人公キャラクター〟で、私がたぶん〝悪役令嬢〟なのだろうけれど。その場合私は、白雪さんの恋が上手くいくように、悪役ムーブ的なのをすべきなのか?
コウ:……なんでお前は悪役を許容してるんだ。要らんだろ、そんな気遣いは。
つむ:いや。私も、全校生徒から嫌われてしまうと販路拡大どころじゃないから、その辺は困ると思ってるぞ? だが、物語のセオリーとして、噛ませ役的恋敵がいないと恋愛がドラマチックに進まないのも確かだからな。
コウ:誰かを当て馬にしなきゃくっつけねぇ連中のことなんか、つむが気にかけてやる必要ねぇよ。
ディ:……耳が痛いわね。
カイ:ディーの場合はさ? ホラ、色々と事情もあったわけだし。
流れ弾に『悪役後宮』組がダメージを受けている中、こちらは部外者な『あおてん』組がのんびり会話する。
あお:乙女ゲームに〝悪役令嬢〟として転生し、断罪回避に奔走する……これもまた、テンプレの一種ではありますね。
ひか:乙女ゲーム……あぁ、あった、これか。『女性向け恋愛ゲームのうち、主人公が女性のゲームの総称である』『男性キャラクターとの恋愛要素がある』『プレイヤーはゲームの中で、男性キャラクターとの疑似恋愛を楽しめるのが魅力』……ふぅん。〝現代日本〟とやらには面白いものがあるんだねぇ。
あお:光、もうiPadの使い方を覚えたの?
ひか:葵がやってみせてくれたもの。もちろん、すぐに覚えるさ。――ところで葵、〝悪役令嬢〟の項目には、『ゲームの世界へ転生した悪役として主人公が、ゲーム知識を活かして断罪を回避する』とあるけど。
あお:え? えぇ、そうね。それがテンプレね。
ひか:……先ほど、つむぎ嬢は、「前世の記憶など持ち合わせていない」と仰っていなかった?
あお:……仰って、いたわね?
顔を見合わせた葵と光は、やや合って、「どういうことなの」的視線をディアナとカイに向けてくる。……だから、文句や疑問は作者にぶつけてほしい。
ディ:えぇっと、ですねー……作者からもらった執筆テーマには、〝現世パートと前世パートの温度差で、読者様方に風邪をひいてもらおう!〟とあります、ね?
コウ:マジで作者表出ろ!!
カイ:うっわぁ殺気混じりのマジ怒り……作者殺しちゃったら俺たちの話も終わんないから、やるなら半殺しでね?
ひか:というか、その執筆テーマに即反応できたところを見るに、亘矢殿は前世を憶えておいでなのでは?
コウ:……ノーコメントだ。
カイ:ここでの記憶は消えるから、ぶっちゃけても大丈夫だよ?
コウ:ノーコメントだ。無くなるとしても、一瞬だって〝前〟の話はしたくない。
あお:あらすじと執筆テーマから察するに、記憶がないのはつむぎさんだけで、つむぎさん以外の主要キャラクターは概ね、前世の記憶持ち……という感じでしょうか? 悪役令嬢だけゲーム知識がなくて、他はゲーム知識有りの〝悪役令嬢モノ〟は、確かに新しいですね。
コウ:全てノーコメントで通させてもらう。
カイ:まぁ、それも本編読めば分かる話だから、別にノーコメントで構わないんだけども。
相方が頑なに「ノーコメント」を押し通す中、つむぎはゆったりお茶を飲み、お菓子を優雅に食している。会話に入るタイミングを見失ったディアナは、そっとつむぎに声をかけてみた。
ディ:亘矢さんの様子がおかしいですが、大丈夫ですか?
つむ:ああなったコウは何を言っても無駄だからな。……にしても美味しい。平安時代のお菓子まで用意されているとは、実に気が利いている。父の和菓子の参考にもなりそうだが、記憶すらも持ち帰れないとは、残念な限りだ。
ディ:……つむぎさんは、ご自身の世界やお話がどうなるのか、気にならない?
つむ:作者がどういう考えで話を書いているのか知らないが、私が学園ですべきことは、実家の販路開拓と決まっている。やるべきことが決まっている以上、物語の筋書きだとか前世だとか、そのようなものを気にかけても仕方がない。
ディ:うわぁ、根っからの商人ですね。レティやジン叔父様と話しているときみたいだわ。
つむ:おぉ、あなたの知り合いにも商人がいらっしゃるのか。――まぁ、全く気にならないと言えば嘘にはなるがな。特に、自世界のベースが〝乙女ゲーム〟だと分かった以上、白雪さんの恋愛を当て馬方面からプッシュするのが私の役目になるのだろうが、やり方を考えないと販路開拓に差し障ってしまうとか、そういうことは気になっている。ひょっとしたら『ママしら』は、販路拡大と悪役令嬢業務をどう両立させるべきか、みたいな話なのかもしれないな?
ディ:……自作品の筋を他人事みたく想像するのね?
つむ:そもそも、正タイトルとあらすじ半分の意味すら分かっていない私が、自作に対して何を言えるわけもないからなぁ。
ディ:カイの台詞じゃないけれど、本当に作者は呼ぶ人間を考えるべきね。
つむ:いやいや、充分に楽しんでいるとも。呼ばれたことに不満はないよ。
ディ:つむぎさんめっちゃいい人……え、悪役令嬢配役なのよね?
つむ:それを言うなら、私よりディアナ嬢じゃないか? タイトルがド直球なところからして、あなたが『悪役令嬢』なのだろう?
つむぎのフリに、カイを除いた残りの三人が深々と頷いた。……いつの間にか問答を終え、ディアナとつむぎの会話に耳を傾けていたらしい。
あお:それ、最初から思ってました。ディアナ様みたいに気配りできるお優しいご令嬢が〝悪役〟とは?
ひか:ついでに、いい加減カイ殿の素性も気になるかな。明らかに一人だけ、雰囲気が違うよね。
コウ:さっき、ディアナ嬢の婿だとか恋人だとか、言ってたけどな。どう見ても良家のお嬢様の恋人って風体じゃねぇよ、お前。
振られたディアナとカイは、おもむろに顔を見合わせて。
ディ:この座談会の趣旨はあくまでも、新作についての紹介なので、我々の話は完全な蛇足になるのですけれど……。
カイ:こんだけ色々聞いといて、俺らの話が全くゼロっていうのも、確かにフェアじゃないよね。
コウ:そういうことだ。
ひか:お聞かせ頂けるかな?
あお:知りたいですね。
つむ:楽しみだ。
ディ:それでは……僭越ながら、まずはあらすじから。
こほん、とひとつ、咳払いをしたディアナは、iPadにて〝自分たち〟のあらすじを開く。
ディ:エルグランド王国には、とある有名な伯爵令嬢がいた。
その麗しい美貌で老若男女を虜にし、意のままに動かす。逆らう者には容赦せず、完膚なきまでに叩き潰し、己が楽しみたいがために多くの人間を不幸にしてきた。
美しくも冷酷、鋭い刺を持つ『氷の薔薇』――。
「えぇと、それ、誰の話?」
これは、やることなすことあさって解釈される伯爵令嬢が、後宮という女の戦場で、四苦八苦のちなんとか幸せになろうとする、お話。
あお・ひか・つむ・コウ:待って????
おしまい。
ディアナ と カイ が 薄まった !!
いやコレ、書いてて結構な衝撃でしたね。長年書いてた先輩たちに圧倒されるどころか張り合ってる……この感じですと、『あおてん』も『ママしら』も作者の懸念なんか吹き飛ばして暴れ回る問題児になってくれることでしょう(動いてくれないことが一番困るからなぁ……)
そんなわけで、2025年4月より連載開始の
『源氏物語の葵の上に転生してしまったので、どうにかして呪殺ルートを回避したいと思います!』
及び、
『継母と、白雪姫と、ときどきサポートキャラ』
そして、同じく4月より連載再開の
『悪役令嬢後宮物語』
を、どうぞよろしくお願いいたします。