目覚め
「…死んだ…な。」
艦長は静かに声を出す。
「総員、これより本部へと帰還する。ステルス機能とハイパーエンジンを起動せよ!」
「「「「はっ!」」」
艦長の指示と共に、『三日月』は方向を変え、動き出す。
…この戦艦に乗ってから、ほぼ全てが乗組員達に任され、そしてアレもあっけなく終わった。
俺があまり活躍できなかったのは癪だが、今はこいつが目覚めるのを待つ必要がある…。
「ところで、少佐。今回のあの黒い人間…そうですね。ブラックと呼ばせていただきましょうか。
ブラックの異常な力はあの再生能力にあります。彼は飛翔の魔法も使っていました。」
「ああ…飛翔に関してはあの動きは拘束魔法だろうな。後、あいつは水魔法も使っていたが…あの応用力は自在魔法だ。まぁ、再生能力もあのスピードじゃ自在魔法か…?」
俺は自分の知っている情報を艦長に伝えた。
すると、艦長は少し顔をしかめ。
「そこについてですが、この戦艦初搭載の対魔法結界、AMBを我々はブラックに使っていました。
あれは範囲内の人間の体内に流れているマナの循環を一時的に止め、魔法を発動できなくする結界です。また、遠くから攻撃を受けた場合でも攻撃に使われるマナを分解し打ち消す能力も搭載しています。
ですが、ブラックはトドメを刺す前、範囲内にいる間も銃で撃ち抜かれた身体を再生し続けていました。」
「!!つまり…」
俺の表情が一気に強張る。
「ええ。死んでいません。」
「じゃあなんで!!死んだと言った!あそこから離れた!」
俺は艦長の肩を掴み、問いただす。
「あれは正体を知る必要があります。あそこで戦い続けたとして、負けることも無ければ勝つこともなかったでしょう。戦略的撤退です。この件は上層部に伝えておきましょう。それが一番です。」
「…チッ」
ブラック…今度こそ打ちのめしてやる…!
相棒とな!____
____俺は長い間眠っていたかのような、ぼうっとした感覚から意識を取り戻す。
「…?ここは…」
車もない。あの少女も…
「悪意だけで動くにはこれが限界ですか…。」
そこに、あの金髪の少女が現れた。先程は服装は気にしていなかったが、全体的にダボっとした黒い服を身につけていた。
「お前!俺に何をしたんだ!?気付いたら見知らぬ場所にいたんだぞ!?」
「あなたは意識を失って敵の拠点に突撃していたんですよ。しかし…実験は失敗でしたか…。」
「実験?実験ってなんだよ!?悪意ってなんだよ!?」
俺の体に何が起きたんだ!?まるでわからない!
「私はそれを言える立場ではないので。フリム・ディフェティアと申します。あなたの上司なら分かるのでは無いですか?」
上司?上司って誰だ?…そう言えば、リブロが俺のことを部下って呼んでいたが…
「さて、私はあなたの回収を命令されています。こちらのヘリコプターに乗って下さい。」
「俺を気絶させるような奴のヘリに乗れって言うのか?」
「ひとまず帰還しない限りはどうにもならないのではないでしょうか?あなたは、早く会いたい人がいないのですか?」
確かに状況を知る必要はあるが、何も帰る手段が一つというだけでは無い。
「俺は飛んで帰る。そんな危険なものに乗りたくは無い。」
「あなた、飛べるのですか?」
フリムは訝しげに聞いて来る。
「見てろよ…ふんっ!あ、あれ?」
な、なんだ?飛べないぞ?
「ふんっ!ふんっ!効力が切れ、た…」
飛べないことを理解した瞬間、俺の体にまた痺れが走る。
「5分くらい倒れていてもらいますよ。さあ、行きましょう。」
半ば呆れた顔をされながら、俺は担がれていく。____
____「到着しましたよ。ここが軍本部です。」
目の前には、非常に大きい建物があった。建物は金属で作られているように見え、すでに夜になっていたので、
まるで城のように見えた。
…いや、待って欲しい。
「なんで俺はここに連れてこられているんだ?リブロに会って聞き出さなきゃいけないことが山ほどあるんだ。」
「そこは心配する必要は有りません。リブロ中佐はここにおりますから。」
「…それは本当か?」
「はい、さあ、行きますよ。」
若干適当にあしらわれた気分だが、ついていくしか無いだろう。
俺たちが歩いていると入り口前に警備員らしき人がいた。
「申し訳ありませんがIDカードをご提示ください。」
フリムは首からカードをぶら下げていたらしく、それを出し、見せた。
「本人でございますね。結構です。そちらの方は?」
「リブロ中佐の担当の子です。」
「ああ、中佐の…了解しました。お二人とも、中へどうぞ。」
こいつ今俺を子呼ばわりしたのか?俺の方が年上のはずだぞ…。
入り口を通ると俺に振り返り。
「まずはリブロ中佐に会いに行きますか?7階の専用の部屋にいますので。」
と言った。
言われなくてもいくさ…。
俺はツカツカ廊下を歩いていく。
そしてエレベーターに乗り、7階を押した。
…あいつの正体は何なんだ?確かにバカで、頭が良い一面もあったが、とても悪い人間には見えなかった。
知るためにも、会って、聞かなければならない。
そして俺はリブロ・ライデン様と書かれた部屋の前に立つ。
爆発が起きないか、ドアが吹き飛んで来ないか警戒しながら剣を構える。
「リブロ!」
俺はドアをバンと開け、名を呼ぶ。
その声を聞き、こちらに顔を向けた人間は、きょとんとした顔でこちらを見ていた。
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