第一章 二話 ポテンシャル
「ところで君の名前は? この辺じゃ見かけない顔だけど。」
「ああ、 俺は怜......レータ! レータって呼んでくれ!」日本人っぽい名前を名乗っても反応が微妙な気がしたので、 異世界っぽくそう名乗ってみた。
「そう、 レータね。 いい名前ね。」
なんだこの可愛い生き物は。 初対面の変な格好している得体の知れない人間が名前を名乗っただけで褒めるのか。
異世界ヒロイン属性抜群のアリスにドギマギしながら彼女の後を着いていくと、 「街が見えてきたわね。 そういえば君はどこから来たの? マグノリアに住んでるワケではなさそうだけど。」
ついにこの質問が来てしまった。 この世界に戸籍や出身があるはずもないレータには答えづらい質問だ。
「えーと、 東の国から来たんだけどここがどこだかもよく分からなくて。」
苦し紛れにそんな返しをすると、 「東......ってことはカルヴァン帝国の生まれ? あそこは大変だものね......」
「そうそう、 カルヴァン帝国! ちなみにここは?」「ここはエリステン王国のカルーセル平原。 あそこに見えるのがマグノリア。 この辺じゃ一番大きな街よ。」
どうやら乗り切れたみたいだが、 あそこは大変とはどういう意味だろうか。
そんな会話をしているうちにマグノリアという街の門の前までたどり着いていた。
門をくぐると、 そこは活気に溢れた冒険者が集まる街という景観だった。 噴水に囲まれた広場には様々な甲冑や鎧を身に纏った冒険者達でごった返している。
「とりあえずその服装をどうにかしないとね。 目立ってしょうがないわ。 お金はある?」「............いや」
「そうよね。 とりあえずは貸しておいてあげるから、 まずはそこの店に入りましょう。」
言われるがまま店の中に入ると、 鎧やらローブやらまさに異世界!というような衣装がズラリと並んでいる。
「あっ、 これなんかいいんじゃない?」
そう言われて手渡されたのは、 白を基調とした勇者風のコートに、 ズボンだ。 なかなかにかっこいい。
こいつ、 いいセンスをしてるな。
「次は武器ね。やりたい 職業とかある?」
この世界はジョブ制なのか。 ならやはり剣士だろう。 「剣がいいかな。 剣士。」
「おっけい! じゃあ次は武器屋ね。」そうして、 黒っぽい魔剣のような見た目に惚れて職業が決まった。
「最後に冒険者登録しておきましょ。 冒険者ギルドに行くわよ。」
そう言われて着いていった冒険者ギルドは壮観だった。 豪華な装飾に彩られたまるで金持ちの屋敷のような内装。
そこで冒険者登録を済ませると、 「とりあえずご飯にしましょう。 使ったお金はちゃんと返してもらうからね。 明日から頑張りましょ!」
いつのまにかパーティーになっているようだ。ラッキー。
と、食事をしながら一息ついていると、 ガラの悪い髭面の冒険者がこちらを睨んでいる事に気づいた。 元ヤンの性だ。 睨み返してしまう。
「おうおう、 なに見てんだ兄ちゃん? べっぴんな女連れてるからって粋がってんじゃねえぞ?」「はあ?見てきたのはそっちだろ」言い返してしまった。 「ちょ、ちょっと!」心配そうなアリスを横目に席を立ち上がる。
「その姉ちゃんを置いて消えろ。そしたら許してやる。」プチンと何かが弾けた音がして気がつくと髭面の大男が倒れていた。 殴り飛ばしてしまったらしい。 しかし、 190センチはあろうかという巨漢をいとも簡単にノックアウトしてしまうとは。
そこで気づいた。 圧倒的に現実世界にいた時とは筋力が上がっている。 異世界アドバンテージというやつか。
「で、出るわよ!早く!」巨漢の仲間が集まってきているのを尻目にアリスに手を引かれてギルドを後にする。
「もう! なにしてんのよ!」「いやぁ、 気づいたら手がでてて」
「まあいいわ。 それにしてもレータ強いのね。別にアタシ一人でもなんとかなったけど、 ギルドの中で魔法を使うわけにもいかなかったし......」
素直じゃない奴め。 だがしかし可愛い女の子を守るのは男の義務である。 当然の行いだ。 と心の中で呟いていると、 「じゃあ今日はもう遅いし、 宿を探しましょうか。」
「......ッ!」期待に胸を膨らませて、 俺たちは宿探しを始めた__。




