雨と花火
アメブロ掲載作品です。
夕方から降り出した雨が
夜になってもざあざあと
雨音を立てていた。
「うわあ・・降ってるよ・・」
仕事が終わって外に出て
傘を開きながらぼやいたら
あいつが隣に立ってクスリと笑った。
「雨、嫌いなの?」
そういうわけじゃないけどさーとブツブツ言いながら
濡れた世界へ一歩踏み出す。
「スーツとか、濡れると気持ち悪いじゃん」
「うーん、まあ、確かにねえ」
クスクスと笑いながら
歩調を合わせて地下鉄駅へと向かう。
「でも、おれはさ、結構いいなと思うよ」
ふいにあいつが呟いた。
「傘にあたる雨の音って、なんか花火の音に似てるよね?」
「・・・・花火?」
耳を澄ませば
確かに似てるってば似てるけど。
「うん、花火。
____おれたちが
初めて夜を過ごしたときにした、花火」
言われて思い出す。
想いが伝わって
初めて過ごしたあの夜に。
2人でした、花火。
パチパチと弾ける火花に照らされて
すごくキレイだって・・・
あいつを抱きしめた。
こっそりと指が伸びてきて、
おれの指先を包み込む。
「その時に聞いた音に似てるなあ~って。
だから、おれは雨の日もけっこう好き」
「・・・・・そうか」
今、傘があってよかった。
きっと今のおれの顔は
だらしなく緩んでる。
熱を持ったかのように火照る頬を
誰にも見られなくてよかった。
「ね」
掴まれた指先に力がこもって
あいつの声が届いた。
「今度は雨の音も・・・いいよね」
言われてもっと赤くなる。
「ん」
そう返すのが精一杯だったけど。
おれもその手を握り返した。
fin




