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どくろと転生少女の異世界ポンコツ事件簿  作者: みぃ
第三部 御殿の見習い
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幕間 拾い物

 御殿へ戻ったカタリーナは、居室の椅子へ腰を下ろした。


 膝に弓を渡し、握りについた土を布で拭う。


 森でのことを聞き終えたヨーゼフが、戸のそばで一礼した。


「場所は承りました。人を出す手配をいたします」


「一頭は逃げた。近づく前によく見ろ」


「かしこまりました」


 布に細かな砂が残った。


 カタリーナは布を折り返し、汚れていない面を弓へ当てる。


「それで、テレサの働きはいかがでございましたか」


 顔を上げると、ヨーゼフはまだ戸へ向かずにいた。


「よかった」


 器の仕事は、もう手元につかずとも任せられる。


 グレーテから、そう聞いていた。


 ヨーゼフも、夕方の用口の灯りをあれに任せたと話している。


 用を頼めば返事をして、手を動かす。庭の的場を借りたいと言ってきたときも、邪魔になる袋を直し、引き直してから一本を射った。


 あの一矢には、慌てたところがなかった。


 今日は、獣もこちらも動いていた。


 カタリーナは弓の向きを変えた。


「前へ出やすかったな」


 右を止めている、と声が届いたときのことを思い出す。


 正面の一頭を射つ間にも、残る獣は脇へ回ろうとする。単独なら、その足に合わせてこちらも位置を変える。


 だが、あのときは道の一頭へ踏み込めた。


 右の藪を見返す必要がなかった。そこを受け持つと言った者が、まだ見ている。


 近くへ来いとも、離れろとも言わずに済んだ。


 こちらが前へ出ても、テレサは追いかけてこなかった。


 カタリーナは布を止めたまま、弓の握りへ指を添える。


 右からクロエを呼ぶ声もした。


 呼び戻す声のあとに、弦が鳴った。


 幹に隠れたクロエの足元までは見えなかったが、離れるときには、黒い体がきちんとテレサのそばにいた。


 働かせて、戻す。


 あれはクロエの速さだけでできることではない。


「クロエのほうも、よく動きましたか」


「ああ。先に見つけたのはクロエだそうだ」


 それは帰りに、テレサから聞いた。


 射った相手のことより先に、クロエの働きを口にした。


 その話を聞く前にも、クロエの足を確かめる間、カタリーナは木立を見て待っていた。


 少し間があって、水を注ぐ音が聞こえた。


 目を戻したときには、テレサが飛んできたしぶきを避けていた。袖には、水の粒が光っている。


 思い出すと、口元が緩んだ。


「終わってからも、まずクロエなんだな」


「仕事の前後には、いつも犬舎へ回っております」


 それも、以前に聞いたことだった。


 あれだけ手をかけたクロエが、呼ばれれば帰ってくる。その傍らから、次の矢が飛ぶ。


 クロエだけ借りても、同じにはなるまい。


 カタリーナは弓へ目を落とし、残っていた土を拭き取った。


 手元で拭いている弓は、今朝持って出たものと変わらない。


 それでも、今日は前へ出る足が軽かった。


「いい拾い物をしたな」


「お役に立ちましたようで」


 ヨーゼフはいつもの調子で答えた。


 カタリーナは布を畳み、手入れを終えた弓を膝から上げた。


 強く引いた指には、まだ張りが残っている。


 その感触も、今日は悪くなかった。

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