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幕間 値踏み
角の影から、往来の露店が見えた。
テレサが、離れていく。
使い魔——いや、あの奇妙な浮遊物が、肩の横についている。
さっきまで、あそこにいた。
シリルの露店に。
マティアスは、自分の指が冷たいことに気づく。
今朝は、トーマの執務室へ入るところを見た。
エマがいる部屋だ。
書類を触る場所だ。
残っているかもしれない場所だ。
そして今は、リュミナ触媒の話をする男のところへ行っている。
「……なんで」
声にならない。
子供のはずが、狩りでも遊びにでもなく、その二つを辿っている。
偶然、ではもう済まない。
自分の研究を。
止まってしまった供給を。
それ以上を。
近づいている。
そう見えてしまう。
いや。
見守りだ。
危険な商人へ近づく子供を、放っておけないだけだ。
牽制だ。
変な動きをしていないか、確認しているだけだ。
そう言い聞かせる。
テレサは往来の人波へ溶けていく。
振り返らない。
気づいていない。
そう信じたい。
マティアスは影から一歩だけ出て、また戻る。
距離を取る。
見失わない程度に。
胸の奥の違和感は、もう「考えすぎ」では消えなかった。




