それぞれの戦い 朝倉環1
タイムリミットまで残り四日
朝倉が立ち上げた解毒薬開発チームは、
昨日からほとんど休みなく動き続けていた。
今朝の研究室は騒がしかった。
解毒薬開発は想定以上に進んでいる。
それでも誰一人として、間に合うとは言わない。
残された時間は、あと四日。
統括と昨日、解毒薬について直接打ち合わせができてよかった。
真意は予想していた。
だが予想と現実は違う。
まったく。
うちの天才は全員が自分と同じように寝ずに働けると思っている。
無理無理。
凡人には睡眠が必要なんだぞ。
本当に。
朝倉は小さくため息をついた。
「ふぅ……やるか」
その時だった。
「統括代理、少しいいですか?」
医療技術課の女性社員が慌てた様子で駆け寄ってくる。
「だから、その統括代理って呼ぶのやめてよ」
朝倉は顔をしかめた。
「ほんと嫌なんだから」
「呼ばれるたびに胃が痛くなる」
「すみません」
「はいはい。謝らなくていいから」
「それで?」
女性社員は目を輝かせた。
「朝からおっしゃっていた外部協力者の方々が到着されました!」
「すごいメンバーです!」
「学会の論文とか賞とか、本とかで見る人ばかりなんですよ!」
「わたし、あとでサインもらおうかなって!」
そう言うなり、彼女は楽しそうに駆けていった。
朝倉はその背中を見送りながら苦笑する。
「若いって元気ってことだね」
その後、外部チームへの挨拶を済ませる。
使用可能な設備
実験室
分析機材
進捗状況
必要な情報を共有していく。
そして
集まった研究者たちは同じ結論にたどり着いた。
驚くほど完成度が高い。
実は
解毒薬そのものは、すでに八割方完成していた。
真壁レオが残した構造式。
症状データ。
進行予測。
どれも異常なほど正確だったからだ。
誰かが感嘆したように呟く。
「これを発症初日に作ったのか……?」
朝倉は肩をすくめた。
「うちの統括ですから」
誇らしいわけではない。
ただ事実を述べただけだ。
そして
だからこそ問題だった。
完成している八割は誰でも辿り着ける。
だが。
残り二割が辿り着けない。
その最後の二割こそが、人を救うための答えだった。
朝倉は資料を閉じる。
残り四日。
まだ、間に合う。
そう信じるしかなかった。
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X「真壁レオは今日も重い」
@reo_yui_archive




