それぞれの戦い 白石 唯衣0
真夜中。
隣から苦しそうな唸り声が聞こえた。
飛び起きる。
レオだった。
額には汗が滲み、全身が小刻みに震えている。
まるで悪夢と戦っているようだった。
「レオ……!」
すぐに景さんが置いていった鎮痛剤へ手を伸ばす。
けれど
レオは苦しそうに顔を歪めるばかりで、薬を飲もうとしない。
理性が薄れているのかもしれない。
わたしは震える指で錠剤を取り
そして
自分の口へ含む。
「お願い……」
そっと唇を重ねる。
錠剤を舌で押し込み、水を飲ませる。
数秒後。
ごくり、と喉が動いた。
飲んだ。
その瞬間
張り詰めていた息が少しだけ漏れる。
「よかった……」
わたしはそのままレオを抱きしめた。
苦しそうな呼吸。
熱い身体。
震える指先。
背中をゆっくり撫でながら、何度も声をかける。
「レオ、大丈夫だよ」
「レオ、大好きだよ」
「レオは負けない」
苦しみの中で。
レオの腕が時々わたしを拒絶する。
爪が腕を掠める。
強く掴まれて痛みが走る。
それでも。
離れたいとは思わなかった。
だって
レオはもっと苦しい。
もっと怖い。
それでも戦っている。
だから
今度はわたしががんばる番だと思った。
両手でレオの頬を包む。
汗で濡れた白銀の髪を撫でる。
「レオ、大好き」
返事はない。
それでも続ける。
「わたしは貴方が大好きよ」
「側にいさせてくれてありがとう」
「安心して寝ていいよ」
「どこにも行かない」
「だからレオも、どこにも行かないで」
「一緒に笑おう」
「これからもずっと」
不思議だった。
あれほど泣いたのに。
もう涙は出なかった。
怖くないわけじゃない。
不安が消えたわけでもない。
それでも
逃げたいとは思わなかった。
戦うんだ。
わたしも。
レオだけに戦わせない。
絶対に離れない。
何があっても。
この人の隣にいる。
それが今のわたしの戦いだった。




