一人じゃない 4
リビングに沈黙が落ちた。
誰もすぐには言葉を発しない。
レオの話は、それほど重かった。
唯衣はレオの手をそっと握った。
レオの手は温かい。
けれど
その指先はわずかに震えていた。
怒りなのか。
恐怖なのか。
それとも後悔なのか。
きっと、その全部だ。
そんな空気の中で。
景は静かに目を閉じた。
数秒
考えるように沈黙してから、
ゆっくりと口を開く。
「本家へ協力を要請いたします」
レオが顔を上げた。
景も真っ直ぐ見返す。
「若の計算に誤差があったことは、
今まで一度もありません」
その言葉には絶対の信頼があった。
主従として。
家族として。
長い年月を
共に歩いてきた者だけが持つ信頼だった。
「であれば」
景は静かに続ける。
「解毒薬を一日でも早く完成させる」
「それと同時に、最低一回は治験を行う」
「治験に必要な時間は二十四時間」
空気が張り詰める。
景の目が鋭くなる。
「あと三日で形にしましょう」
「本家から技術者を派遣いたします」
唯衣は思わず息を呑んだ。
本家が動く。
それがどれほど大きなことなのか、
まだよく分からない。
けれど
景の表情を見れば分かった。
これは本気だ。
「若は若の会社に、
うちの技術者が出入り出来るよう
外部協力者の登録を」
「わたくしは本家へ戻り、
適任者を選出します」
「明日には第五へ向かわせましょう」
レオは黙って聞いていた。
やがて小さく息を吐く。
景はそこで少しだけ表情を和らげた。
「それでよろしいですね」
「これがわたくしの最大の譲歩です」
沈黙。
数秒後。
レオはゆっくり頷いた。
「……ありがとう」
景が目を瞬く。
唯衣も目を瞬く。
「若」
「なんだ」
「本日二回目です」
「何がだ」
「謝罪と感謝」
景は胸へ手を当てた。
「やはり唯衣様は偉大です」
「殺すぞ」
「病に犯されている若には無理でしょう」
「やっぱりお前嫌いだ」
そのやり取りに、
張り詰めていた空気が少しだけ緩む。
唯衣も思わず笑った。
景も笑った。
そして
その笑顔を見ながら景は小さく安堵する。
若はまだ戦える。
そして
若はもう一人ではない。
本編の裏側や、レオと唯衣の甘い日常をXで更新中です。
小説の合間の息抜きにどうぞ。
X「真壁レオは今日も重い」
@reo_yui_archive




