Interlude 真壁レオからの通達
件名:第五統合生活支援事業部 全体通達
各位
諸事情により、しばらくの間休職する。
その間の統括代理として、空間演出課リーダー 朝倉環を任命する。
各課においては、現在進行中の案件およびプロジェクトについて予定通り進行すること。
進捗については随時更新し、統括代理へ報告するように。
なお、医療技術課には最優先特別任務を付与する。
概要については別添資料を確認すること。
医療技術課は速やかに各課との連携を開始し、本任務遂行のための最適なチームを選出すること。
期限は一週間。
本任務を最優先事項として扱うよう指示する。
以上。
真壁レオ
第五統合生活支援事業部 統括
◇◇◇
送信時刻 9:32
第五統合生活支援事業部 全社員端末へ一斉配信
◇◇◇
「……は?」
最初に声を上げたのは誰だったのか。
もはや誰にも分からない。
「統括が休職!?」
「病気!?」
「いや待て待て待て」
フロア中がざわつく。
「真壁統括だぞ!?」
「休むって概念あったの!?」
「熱出して会議してた人だぞ!?」
「点滴打ちながら予算会議してたよな!?」
「してた」
「してた」
全員が頷く。
そこへ別の声が上がる。
「待て」
「統括代理」
「朝倉リーダー?」
空気が止まる。
「朝倉さん?」
「朝倉さんだ」
「朝倉さんだな」
ざわざわ。
ざわざわ。
少し離れた席でメールを読んでいた朝倉環が頭を抱えた。
「……胃が痛い」
「代理おめでとうございます!」
「めでたくない」
即答だった。
「いやでも統括が指名したってことですよね?」
「信頼されてるじゃないですか」
「やめろ」
「プレッシャーを増やすな」
環は机へ突っ伏した。
その時だった。
別の部署から悲鳴が上がる。
「おい!!」
「医療技術課見ろ!!」
全員が一斉に振り返る。
医療技術課。
そこだけ空気がおかしい。
全員が添付資料を見て固まっていた。
「どうした?」
「何の案件?」
「なんだ?」
医療技術課の一人がゆっくり顔を上げる。
「……無茶だ」
「うん」
「······」
沈黙。
「は?」
「え?」
「何て?」
もう一度資料を見る。
プロジェクト名。
【番薬解毒及び抑制薬開発計画】
番薬の解毒及び専用抑制剤の確立。
期限。
七日間。
七日。
七日。
七日。
「無理だろ!!」
医療技術課の悲鳴がフロアへ響いた。
「統括は正気か!?」
「一週間で薬作れって言ってるぞ!?」
「研究開発を1週間!?」
「やるしかない?!」
「?!」
さらに別の社員が資料を見ながら首を傾げる。
「待て」
「統括が休職」
「統括代理が朝倉さん」
「医療技術課へ最優先任務」
「……」
「……」
「これ」
フロアが静まり返った。
数秒。
「まさか」
「いや」
「でも」
「何かあった?」
「だよな」
「統括からの特任だよ、何かあったんだよ」
「統括のお願いって今まであった?」
「「ない!」」
「私たちに助けてくれって言ってるんじゃない?」
全員が頷いた。
その頃。
当の真壁レオは。
第五専用医務室で唯衣を抱きしめながら、
「頼むから急にいなくなるな」
と真剣な顔で言っていた。
第五事業部の社員たちはまだ知らない。
自分たちの統括が、
人生で一番大きな案件を抱えていることを。
そしてレオは知らない。
医療技術課が、そして第五統合が、総力をあげて信頼に応えようとしていることを。




