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【完結】真壁レオは今日も重い 〜独占欲強めな白銀狼に溺愛されています〜  作者: ほしよみ
第一章

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番薬10

翌朝。

会社へ向かうためリビングへ行くと、キッチンからいい香りが漂ってきた。

「おや」

振り向いたのは景だった。

エプロン姿のままフライパンを握っている。

「おはようございます」

「おはようございます、唯衣様」

景は穏やかに微笑んだ。

「昨夜はゆっくりお休みになられましたか?」

「はい。おかげさまで」

唯衣は小さく答える。

嘘だった。

身体は疲れているのに、ほとんど眠れなかった。

いつものセミダブルのベッド。

いつも隣で眠っているはずのレオがいない。

それだけで胸の奥がずっと寂しかった。

まるで心だけが泣いているみたいに。

でも不思議と涙は出なかった。

「レオは……」

思わず尋ねる。

「まだ寝ているんですか?」

本当は朝が来るのを待っていた。

リビングへ行けば会えると思っていたから。

景は少しだけ表情を和らげた。

「若様は昨夜、強い発作が起きまして」

「それを抑えるため、かなり強い鎮痛剤を服用されました」

「その後、睡眠導入剤も使用しておりますので、今はお休みになられています」

唯衣は少し肩を落とした。

会いたかった。

ただ顔を見たかっただけなのに。

その様子を見ていた景が、不意に口を開く。

「唯衣様」

「はい?」

景はミルクを温めながら続けた。

「感謝しております」

唯衣は目を瞬く。

「え?」

景は少しだけ笑った。

「若様が人らしくなられました」

「以前は今以上に無茶をなさっておりましたので」

カップへコーヒーが注がれる。

優しい香りとともに湯気が立ち上る。

「お砂糖はおいくつ?」

「あっ、一つお願いします」

景は頷きながら続けた。

「感情を表に出すことも少ない」

「苦しいとも言わない」

「助けてほしいとも言わない」

穏やかな声だった。

だからこそ重かった。

「誰にも頼らない方でした」

唯衣は黙って耳を傾ける。

景は小さく息を吐いた。

「昨夜、抱きしめてほしい、と仰ったのでしょう?」

唯衣の目が大きくなる。

景はわずかに微笑んだ。

「私には一度も言ったことがありません」

そして真顔で付け加える。

「当然ですね。気持ち悪いので」

思わず唯衣が吹き出した。

景も小さく肩を揺らす。

そして。

ほんの少しだけ優しい顔になった。

「ありがとうございます」

「若様を見つけてくださって」

静かな朝だった。

唯衣は差し出されたカフェラテを両手で包む。

一口飲む。

温かい。

胸の奥までじんわりと染みていく。

「おいしい……」

ぽつりと零れた言葉に、景は何も言わず微笑んだ。

しばらくして。

唯衣はカップを見つめたまま口を開く。

「わたし」

「レオさんの側にいたいと思います」

景は何も言わない。

ただ静かに聞いている。

「求められているからじゃなくて」

「わたしがそうしたいからです」

カフェラテの湯気がゆっくりと揺れる。

「わたし、レオさんのお立場も」

「ご家族のことも」

「何も知りません」

「御影綾乃さんとも、昨日初めてお会いしました」

景は黙ったまま頷く。

急がさない。

否定もしない。

ただ聞いてくれている。

だから唯衣も続けられた。

「何も知らなかったことを言い訳にするつもりはありません」

「これから知りたいんです」

「もっとレオさんのことを」

「だから、ちゃんとご本人から聞こうと思います」

少しだけ顔を上げる。

「ふたりの未来のために」

静かな沈黙が落ちた。

景は何も言わなかった。

ただ空になったカップを手に取ると、もう一杯分のカフェラテを注いだ。

ふわりと立ち上る湯気。

それがまるで返事のようだった。

挿絵(By みてみん)

本編の裏側や、

レオと唯衣の甘い日常をXで更新中です。

小説の合間の息抜きにどうぞ。

X「真壁レオは今日も重い」

@reo_yui_archive

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