番薬8
着替えてリビングに戻ったすぐ
「いいタイミングの帰宅でしたね」
開いていた窓から、景がひらりと部屋へ降り立った。
黒い翼から雨粒が落ちる。
「お前の家はここじゃない!」
即座にレオが言う。
「自分の家に帰れ!」
景は濡れたスーツを軽く払った。
「おやおや」
口元が緩む。
「若は相変わらずですね」
「何がだ」
「幼子の頃から何も変わっておられない」
景は肩を竦める。
「成長が見られず、私も少々心配しております」
「景」
「はい」
「殺す」
「本日二十六回目です」
景は平然と答えた。
唯衣が思わず吹き出す。
「数増えてる……」
「はい」
景は真顔で頷いた。
「本日は特に多めでございます」
「お前が原因だろ」
「光栄です」
全く反省していない。
景はそのまま廊下へ視線を向けた。
「あちらの客室を使わせていただきます」
「荷物も多く、どうしようかと思っておりましたので」
レオがぴたりと止まる。
「……どうしてお前が間取りを知ってる?」
景も止まった。
数秒。
そして不思議そうな顔をする。
「おや?」
「不思議なことをおっしゃる」
「私の得意は情報ですよ」
当然のように言った。
「そんなこともお忘れに」
景は胸元へ手を当てる。
「嘆かわしい」
「泣いてねぇだろ」
「心で泣いております」
「見えねぇ」
「若にはまだ早かったようですね」
「景」
「はい」
「やっぱり殺す」
「二十七回目です」
景は満足そうに頷いた。
そして客室へ向かいながら振り返る。
「では、また明日」
「若」
「なんだ」
景はにこりと微笑んだ。
「必ずお一人でお休みください」
沈黙。
「若から唯衣様の香りがしております」
「……」
「言いつけを守れないところも、幼子の頃から変わりませんね」
レオの額に青筋が浮かぶ。
景は満足そうだった。
「おやすみなさい」
そう言って扉を閉める。
静寂。
数秒後。
客室の向こうまで響く声でレオが叫んだ。
「唯衣の匂いが減るから、お前は息をするな!!」
客室の向こうから。
「それは難しい相談ですね」
景の穏やかな声が返ってきた。
唯衣はとうとう声を上げて笑ってしまった。
本編の裏側や、
レオと唯衣の甘い日常をXで更新中です。
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X「真壁レオは今日も重い」
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