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真壁レオ4
落ち着け。
落ち着け、オレ。
何度も脳内で呪文を唱える。
頬が緩むな。
耳を出すな。
いつもの仕事モードに戻れ。
統括室のガラスに映る自分へ、無言で圧をかける。
深呼吸。
よし。
……全然落ち着かない。
脳内の獣は床を転がっていた。
それでも指は止まらない。
キーボードを叩く。
社員データベースへアクセス。
検索。
白石唯衣。
表示まで三秒。
「……遅い」
思わず舌打ちが漏れた。
三秒もかかった。
早く知りたい。
もっと情報が欲しい。
頭の奥が騒ぐ。
白石唯衣。
二十二歳。
一ヶ月前、新卒入社。
現住所、都内マンション。
所属、空間演出課。
連絡先。
緊急連絡先。
通勤ルート。
――。
「……いや待て」
自分で自分にツッコミを入れる。
何をしてる。
完全に職権乱用だろ。
だが理性とは裏腹に、脳は異常なほど冴えていた。
彼女を落とす方法。
距離の詰め方。
警戒されない接触頻度。
好きな食事の傾向。
休日行動予測。
気付けば、頭の中で攻略ルートが百通りほど組み上がっていた。
それでも足りない。
不安だ。
早く欲しい。
自分のものにしたい。
「……重症だな、オレ」
深く息を吐き、椅子にもたれかかる。
天井を見上げても。
頭の中に浮かぶのは、あの黒髪だけだった。




