夏 リゾート地へ14 唯衣の答え
「レオ」
唯衣は、 涙で少し滲む視界のまま、 まっすぐレオを見つめた。
「わたしの答えは、もうずっと一緒だよ」
朝の海風が、 静かに髪を揺らしていく。
「わたし、お付き合いした時から」
「貴方を幸せにしたいって思ってる」
レオの瞳が、 少しだけ揺れた。
「この旅行でもね」
「どうしたらレオに返せるかなって、ずっと考えてたの」
唯衣は小さく笑う。
「でも、全然追いつけなくて」
「レオ、いっぱい愛情くれるから」
少し困ったみたいな、 でも幸せそうな笑顔。
その顔を見て、 レオは苦しそうに息を飲んだ。
「狼族とか、人族とか」
唯衣はゆっくり首を振る。
「そんなのより」
「わたしは、“真壁レオ”っていう人に惹かれてるの」
静かな声。
でも、 ひとつひとつ大事に届けるみたいな言葉だった。
「一緒に笑って」
「時々ケンカして」
「毎日ご飯食べて」
「夜は抱きしめて寝て」
「そんな当たり前を、ずっと一緒に過ごしたい」
レオの喉が、 小さく震える。
唯衣はそんなレオを見つめながら、 そっと笑った。
「真壁レオさん」
「わたしは、貴方を愛しています」
波の音だけが、 静かに響く。
そして唯衣は、 少し照れたみたいに笑って、 小さく首を傾げた。
「……この言葉で」
「レオの言葉の答えになりますか?」
その瞬間。
レオはもう、 耐えられなかった。
指輪の箱ごと唯衣を抱きしめる。
強く。
でも、 壊れ物みたいに優しく。
「……っ」
声にならない息。
「……レオ?」
抱きしめられたまま、 唯衣はそっと顔を覗き込む。
すると。
レオの肩が、 わずかに震えていた。
「……レオ、泣いてる?」
静かな問いかけ。
レオはしばらく答えなかった。
ただ、 唯衣を抱きしめる腕だけが、 少し強い。
「……大丈夫?」
唯衣は心配そうに、 レオの背中をゆっくり撫でる。
よしよし、 と宥めるみたいに。
その瞬間。
レオが苦しそうに笑った。
「……ダメだろ、それ」
掠れた声。
「今の流れで、俺をあやすな」
でも、 声が少し震えている。
唯衣は優しく背中を撫で続けた。
「だって……」
「レオ、いっぱい頑張ってたから」
その言葉に、 レオはとうとう額を唯衣の肩へ押しつける。
白銀の髪が、 朝日に揺れた。
「……こんなの」
小さく落ちる声。
「幸せすぎて、泣くだろ」
唯衣の胸が、 ぎゅうっと熱くなる。
完璧で。
強くて。
なんでも出来る人なのに。
今、 こんな顔をしてくれるのは、 自分の前だけなんだと思った。
唯衣はレオの頭を、 そっと抱きしめ返す。
「レオ」
「うん」
「これからもいっぱい幸せなろうね」
その言葉に、 レオは小さく頷いた。




