夏 リゾート地へ12 甘い夜
部屋へ戻っても、 レオは唯衣を下ろさなかった。
そのまま、 大切なものを運ぶみたいに、 ゆっくりベッドまで歩いていく。
柔らかな照明。
遠くで聞こえる波の音。
静かな部屋の中、 唯衣はずっとレオの首へ腕を回していた。
レオがそっとベッドへ腰を下ろす。
でも距離は離れない。
近いまま。
額が触れそうな距離で、 レオは唯衣を見つめた。
その瞳は、 優しい金色。
次の瞬間、 甘いキスが落ちてくる。
ひとつ。
またひとつ。
大切に触れるみたいなキス。
唯衣が少し笑うと、 レオもつられるみたいに笑った。
「……幸せだなぁ」
ぽつりと零れた言葉。
するとレオは、 唯衣の頬へそっと触れる。
「俺も幸せだよ」
低く、 穏やかな声。
そのままレオは、 唯衣の額へ自分の額を重ねた。
「これからも大切にする」
「もっと幸せを作っていこう」
レオの指が、 唯衣の髪を優しく撫でる。
「……俺の側にいてくれ」
その言葉が、 胸の奥へじんわり広がる。
唯衣は小さく頷いて、 もう一度レオへキスをした。
夜の海は静かで。
2人だけの時間が、 ゆっくり流れていた。
朝、 目を覚ますと、
隣でレオがまだ眠っていた。
柔らかな朝日が、 白銀の髪へ静かに落ちている。
昨夜の熱が嘘みたいに穏やかな寝顔だった。
身体は綺麗に整えられていて、 シーツまできちんと掛け直されている。
唯衣が眠ったあと、 レオが全部してくれたのだろう。
「……もう」
思わず小さく笑ってしまう。
ふと見ると、 耳としっぽが出ていた。
完全に安心している時の姿。
しかも、
レオは眠ったまま唯衣を抱きしめていた。
大きな腕。
さらにしっぽまで唯衣を守るみたいに巻きついている。
逃がさないみたいに。
でも、 驚くほど優しい力だった。
「……嬉しい」
唯衣はそっと、 レオの頬へ触れる。
「ありがとう」
小さく呟く。
胸の奥が、 じんわり温かい。
こんなにも満たされた朝を、 昔の自分は知らなかった。
幸せで。
安心できて。
愛されているって、 ちゃんと分かる朝。
これも全部レオがくれたものだ。
唯衣は眠るレオを見つめながら、 そっと考える。
どうしたら、 この人へ返せるだろう。
どうしたら、 同じくらい幸せにできるんだろう。
レオのために、 自分は何ができるんだろう。
唯衣はレオを大切に想っていた。




