夏 リゾート地へ10 ディナー
夕食は、 ホテル最上階にある展望レストランだった。
軽くドレスアップした2人は、 オーシャンビューを一望できるテラス席へ案内される。
夜の海。
遠くで揺れる灯り。
波の音。
昼間とは違う、 静かで大人っぽい空気が広がっていた。
コース料理はどれも美味しくて、 唯衣はずっと幸せそうだった。
「おいしい……!」
「これも好き!」
「レオ、これ食べた?」
ころころ変わる表情を見ながら、 レオは静かに笑う。
たぶん料理より、 唯衣を見てる方が楽しい。
「ゆっくり食べろ」
そう言いながら、 さりげなく取り分けたり、 飲み物を渡したり。
甘やかしが自然すぎる。
食事のあと。
テラス席の隣に用意されたソファスペースで、 2人はそのまま軽くお酒を飲むことにした。
唯衣は甘いカクテル。
淡い色の、 南国らしいフルーティなお酒だ。
レオは、 いつものウィスキー。
氷の音が静かに鳴る。
ただ、 唯衣がお酒を飲みすぎないよう、 レオはずっと様子を見ていた。
ペース。 表情。 酔い方。
全部確認してる。
「……もうちょっと飲みたい」
唯衣が名残惜しそうにグラスを見る。
するとレオは、 少しだけ目を細めた。
「ダメ」
「えー……」
不満そうな顔。
でも次の瞬間。
レオは自分のグラスを傾け、 少しだけウィスキーを口に含む。
そのまま、 唯衣を引き寄せた。
「んっ……」
一瞬だけ触れる唇。
ほんのり熱いウィスキーの香り。
唯衣は目を丸くしたあと、 すぐに顔を真っ赤にした。
「レ、レオ……!」
するとレオは、 満足そうにグラスを揺らす。
「これやると、唯衣それ以上飲まなくなる」
どうやら、 レオが発見した“必殺技”らしい。
「ずるい……!」
唯衣は真っ赤なまま抗議する。
でもレオは、 まったく悪びれない。
むしろ少し楽しそうだった。




