夏 リゾート地へ6 ホテル到着
順調なフライトで、 飛行機は定刻通り到着した。
空港を出ると、 すでに手配されたハイヤーが待機している。
レオは当然みたいにドアを開け、 私をエスコートした。
車窓から見える景色は、 どこまでも青くて、 空気まで開放的だ。
「……旅行来たんだね」
ぽつりと呟くと、 隣に座るレオが小さく笑った。
「まだ実感なかったのか?」
「うん、ちょっと」
だって、 ここまで全部が完璧すぎる。
移動も。 空間も。 時間も。
全部、 レオが“私を疲れさせないため”に整えてくれている。
ホテルは、 このリゾートでも最高級と言われる場所だった。
しかも、 最上階スイート。
さらに、 フロアごと貸切。
スイート専用のプールまで、 完全プライベートらしい。
「……貸切?」
思わず聞き返すと、 レオは平然としている。
「唯衣の水着、他のやつに見せたくない」
真顔。
この人、 本当にブレない。
ホテルへ到着すると、 スタッフがすぐに案内してくれた。
チェックインは、 一般ロビーではなく、 専用ラウンジで行われる。
荷物はすでに部屋へ運び込まれていて、 ウェルカムドリンクまで準備済みらしい。
「すごい……」
私が圧倒されている横で、 レオは慣れた様子でサインをしている。
その姿が、 妙に絵になっていて、 少し見惚れてしまった。
「唯衣」
「ん?」
「行くぞ」
レオが手を差し出す。
そのまま、 スイート専用エレベーターへ。
静かな箱の中。
上昇する感覚と一緒に、 少しずつ実感が湧いてくる。
これから数日間、 ずっとレオと2人きり。
部屋へ入った瞬間。
目の前いっぱいに、 コバルトブルーの海が広がっていた。
「……っ!」
思わず駆け寄る。
大きな窓の向こう、 太陽の光を受けた海が、 きらきらと輝いている。
どこまでも青い。
空と海の境界が、 溶けるみたいに繋がっていた。
「レオ!見て!海!」
振り返って言うと、 レオが静かにこちらを見る。
「……きれい」
そう言いながら、 後ろから優しく抱きしめてきた。
大きな腕に包まれる。
耳元で、 レオが小さく笑った。
「その笑顔が見たかった」
その言葉が、 胸にじんわり広がる。
唯衣は振り返って、 そのままレオへキスをした。
「レオ、ありがとう!」
「すごく嬉しい!」
するとレオは、 少し目を細める。
たぶん今、 かなり満たされてる。
「ねぇ!」
唯衣は嬉しそうに窓の外を指差した。
「バルコニー出てみよう!」
「いいよ」
レオは自然に手を繋ぐ。
そのまま2人で、 広いバルコニーへ出た。
ふわりと風が吹く。
潮の香り。
柔らかい熱。
優しい風が、 髪を揺らしていく。
眼下には、 太陽を反射して輝く海。
まるで宝石を敷き詰めたみたいだった。
「……本当にきれい」
唯衣が呟く。
するとレオは、 繋いだ手を少しだけ強く握った。
「うん」
低い声。
でもその視線は、 海じゃなく、 唯衣を見ていた。




