第五統合生活支援事業部1
二人の交際は、とても順調だった。
……いや。
正確に言うなら。
レオの凄まじい独占欲と執着心を、唯衣が“愛情”として自然に受け取っていることが、奇跡的なバランスを生んでいた。
「えっ? これって溺愛なんですか?」
昼.食堂で千景と休憩中。
千景の言葉に、唯衣は本気で驚いた顔をした。
その瞬間。
食堂利用者の一部の人たち。
(あの独占欲に何もストレスを感じない?!
あ、もう、唯衣ちゃんが幸せならもういいか。
2人を温かく見守ろう。)
そう決意した瞬間だった。
ちなみに真壁レオの溺愛は、日に日に加速している。
特別重要案件がない限り、送り迎えは当然。
昼休憩を取っているか確認。
食事内容の把握。
残業回避。
室内の気温変化共有。
極力唯衣へ負担をかけないよう、統括権限が恐ろしい方向へ使われていた。
しかも本人は無自覚である。
だが驚くべきことに、
唯衣と付き合うようになってから、第五統合全体の空気が変わった。
「最近、統括ちょっと優しくない?」
「修正指示まともになった」
「前より寝れてる」
「え、空間演出課、定時帰宅増えてない?」
さらには、
第五統合生活支援事業部。
通称“ごった煮部署”。
かつてブラック課の代表格だったそこが、
少しずつホワイト化し始めた。
業績も上がっている。
離職率も下がった。
理由。
真壁レオが、恋人と過ごす時間を確保するために、業務効率を極限まで改善し始めたからである。
もはや恋愛が福利厚生だった。
結果。
唯衣を“救世の女神”と崇める社員まで現れ始めた。
ただし、
全員が祝福しているわけではない。
当然。
レオへ好意を抱いていた女子社員たちは、面白くなかった。
「なんで白石さんなの?」
「普通だよね?」
「統括に気に入られただけじゃん」
陰口。
書類隠し。
データ改ざん未遂。
ロッカーへの嫌味メモ。
悪意は日に日に露骨になっていく。
唯衣は気付いていないものも多かった。
だが、
レオは全部、把握していた。
誰が、
いつ、
どこで、
何をしたか。
統括管理官の情報網を、甘く見ない方がいい。




